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夜霧の騎士と聖なる銀月  作者: 羽鳥くらら
第2章
127/335

【2-109】もっと親しくなるために

 ◇



「──ですから、キリエ様の素晴らしさは満天の星空の中にいても存在感を失わず、人々を優しく照らし癒してくれる銀月そのものなのです! 嗚呼、聖なる銀月の君、その美しい瞳に私を映して、そして、」

「ま、待って……、ちょ、ちょっと、一度ひと休みしましょう! そうしましょう、マックス!」


 真正面からマクシミリアンの賛辞を浴び続けたキリエは、顔を赤くしたり青くしたりしながら両手と首を振り、必死に制止を訴える。その小動物めいた反応を見たマクシミリアンは吹き出しそうになったが、それを抑えて輝かしい微笑を浮かべた。


「ひと休みと仰いますと……、お菓子を召し上がりますか? 私が食べさせてさしあげましょう」

「だ、大丈夫です! 一人で食べられますから……っ」


 ちなみに、キリエとマクシミリアンは茶と菓子を並べたテーブルを挟んで向かい合わせに座っている。マクシミリアンは立ったままの給仕に徹しようとしていたのだが、いつもリアムと一緒にそうしてお茶をしているから一緒に座ってほしい、とキリエが頼んだのだ。


「お隣では、どうしているのでしょうね……」


 キリエは心配そうに隣室のほうへ視線を投げて呟く。今頃ジェイデンとリアムがどのような会話を交わしているのかを把握しているマクシミリアンは、一瞬だけ真顔になったものの、すぐに満面の笑みと共にキリエの気を引いた。


「嗚呼、キリエ様! 御傍にいるのは私でございますのに、そんなにリアムの御心配ばかりなさるとは! このままでは嫉妬にかられてキリエ様にお菓子を食べさせて差し上げてしまうかもしれません!」

「えっ、だ、駄目です……! 僕、一人で食べられますからっ」

「では、私が抱いているキリエ様への熱く燃え上がるような情熱的な想いを、詩にしたためてお贈りいたしましょうか! 嗚呼、麗しき我が銀の小鳥よ、」

「そ、それはひと休みって言ったじゃないですか! え、えっと……、そ、そうだ! マックスのおはなしをしましょう! 僕、もっとマックスのことを知りたいのです」


 円らな銀の瞳は、どこまでも純粋だ。ジェイデンと交わすものとはかけ離れている、どこか幼さすら感じるほどの会話内容も、マクシミリアンにとっては新鮮だった。無論、嫌な意味ではなく、良い意味で。

 マクシミリアンはくすくすと笑いつつ、キリエの話題転換に乗ることにした。


「私に興味を持っていただけるとは嬉しいですね。恐悦至極でございます! 何をお知りになりたいのでしょうか? このマクシミリアン=オールブライト、何なりとお答えいたしましょう!」

「えーっと……、じゃあ、マックスは何歳ですか?」

「ふっ、あははっ! ふふ、失礼いたしました。基本中の基本の質問から攻められるとは、流石はキリエ様! 私は現在、二十八歳でございます。次のご質問を、どうぞ」


 耐え切れなかったのか吹き出したものの、すぐに気を取り直して、マクシミリアンはにこにこと答えてくれる。その笑顔に引きずられるようにして、キリエは無邪気に次の問いかけをした。


「じゃあ……、ご結婚は?」


 ウィスタリア王国民、──特に貴族は、成人してからあまり間をおかず二十歳前後で結婚する場合が多い。だが、マクシミリアンは年齢の割には既婚者の雰囲気が全く無いため、それを不思議に思ったがゆえの単純な質問だった。

 ──しかし、ほんの数秒の間ではあるが、マクシミリアンの笑顔が凍り付く。

 触れてはならない話題だったと勘付いたキリエは、慌てて謝罪した。


「ご、ごめんなさい、マックス。答えたくないことなら、無視してくださって大丈夫ですので。無神経なことを尋ねてしまったのだとしたら、本当にすみません。ごめんなさい……!」

「いえいえ、キリエ様。大丈夫です。少し驚いてしまっただけで、怒ったりしたわけではないのですよ。むしろ、ご心配をおかけしてしまいまして、こちらのほうこそ申し訳ございません」


 これ以上キリエの気が乱れれば、それを察してリアムが駆け込んできてしまうだろう。そうなってしまうと、せっかくジェイデンが時間を割いてリアムと話をしに来ている意味が無くなってしまう。そのように考えたマクシミリアンは、努めて穏やかに微笑み、キリエを落ち着かせることに集中した。


「でも、僕は……、きっと無意識のうちにマックスを傷つけてしまったのですよね」

「いいえ、キリエ様。私は傷ついてなどおりませんよ。本当に、久しぶりにその話題が振られたなぁと驚いただけなのです。さぁ、愛らしい銀の小鳥。いつものように可愛らしい笑顔を見せてくださいませんか? 貴方のお顔が曇ってしまうことのほうが、私は悲しいのです」


 半泣きで反省しているキリエの気持ちを宥めるように、マクシミリアンは静かに優しく語りかける。実際のところ、マクシミリアンは別に傷ついているわけではない。ただ、嫌悪している生家と切っても切れない話題のため、一瞬だけ不快感が湧いただけだ。だからといって、キリエに対して負の感情を持ったというわけでもない。


「今後、キリエ様と私も顔を合わせる機会が増えていくでしょうし、もっと仲良くしていただくためにも、オールブライト家についておはなししておきましょう。決して無理をしているとか傷つくというわけではなく、もっとキリエ様とお近づきになりたいからです。……おはなししても構いませんか?」

「……それを話してマックスが本当に辛くないというのなら、聞きたいです。僕も、もっとマックスと仲良くなりたいので」


 素直な言葉を紡ぐキリエを見て柔らかく微笑んだマクシミリアンは頷き、静かに語り始めた。

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