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夜霧の騎士と聖なる銀月  作者: 羽鳥くらら
第2章
107/335

【2-89】中間討論会 開始

 ◆◆◆



 ──冬の第一月第一週一日目。

 とうとう、中間討論会当日となった。次期国王候補たちは正装を着用して集まり、ウィスタリア王城の大広間に設置された長机を囲うようにして着席している。各々の側近騎士は、主の横に立っていた。


 王子王女たちの周りを囲うように設置された沢山の椅子には、有力貴族たちや書記係が着席している。

 マデリンが次期国王候補の立場から退いたため、彼女の後ろ盾になっていた貴族たちは、次にどの候補を推すべきかをこの討論会で見定めるはずだ。

 現時点では、マデリンが駄目ならば次にライアン陣営に付くのが妥当であると考えている貴族が多いだろう。この場でどれだけ説得力のある討論が出来るかが、ジェイデンとキリエの今後に大きく影響するのは明白だった。


「えー……、それでは、次期国王選抜中間討論会を開始させていただきます」


 定刻となり、宰相であるコンラッドが開始の言葉を述べ始める。


「本討論会は、王子王女様方の中からどなたに次期国王となっていただくべきかを今一度、皆で見つめ直すための機会でございます。次期国王候補の皆様の優劣を競い定める場ではなく、ウィスタリア王国の今後の発展を考えてゆくための大切な機会であるということを、お忘れなきようお願い申し上げます」


 そこで一度言葉を区切ったコンラッドは、沈痛な面持ちでマデリンの話題に触れた。


「次期国王候補の御一人であらせられたマデリン様につきましては、事前にお知らせしておりました通り、次期国王候補から外れていただく形となりました。王族の罪状は公にすることを定められておりますので、明日以降順次、一般国民にも周知されることとなります。──マデリン様の罪は、キリエ様の暗殺を企て、実行しようとされたことです。幸いなことに、キリエ様の御命は守られました」


 有力貴族たちから、マデリンの失墜への嘆きやキリエの無事に対しての安堵など、様々な意味合いの溜息が零れ落ちる。ジャスミンは心配そうにキリエを見つめ、ライアンはそんなジャスミンを無表情に見つめていた。


「本来であれば、マデリン様への処罰は極刑もやむなしというところでありますが、キリエ様の寛大な御許しがあり、辺境にて幽閉させていただくという形で話はついております」

「コンラッド、お話の途中で口を挟んで申し訳ありませんが、少しよろしいですか?」

「はい、キリエ様。いかがなされましたか?」


 コンラッドの言葉の途中で、キリエは挙手をして発言の許可を得る。リアムは一瞬だけ目を瞠ったものの、すました顔のまま前を向いていた。


「コンラッドは今、マデリンが受ける罰について僕が寛大だったと言ってくださいましたが、僕ではなく周囲の人たちの力があってこそマデリンの極刑は免れたのだと説明させてください。僕の側近であるリアムもそうですが、ジェイデンとマクシミリアンの助力が大きかったのです。コンラッドの判断も重要でしたし、マデリンの側近であるランドルフも今後彼女を支えてくれると言っています。僕ではなく、周りの皆さんの寛大さがあってこそです」


 ジェイデンとマクシミリアンは驚いたように目を丸くし、コンラッドは恐縮そうに一礼する。周りの有力貴族たちはキリエの言葉に聞き入っていた。


「先日、幽閉塔へ出発前のマデリンと話をしました。彼女は僕に、心からの謝罪の言葉を伝えてくれました。僕としては、それで十分に許せてしまうのですが、世間的にそうはいかないということも、彼女が犯した罪は本来はとても重いものであることも理解しています。ですから、彼女が幽閉されるという処置に異を唱えるつもりはありません。──ですが、もし彼女が違った形での償いを進言してくれた場合、僕の独断で決行はしませんが、検討して受け入れる姿勢を見せたいと思っています。……以上です」


 キリエが発言を終えると、数秒間の静寂の後、誰かが拍手をし始めた。手を打ち鳴らす音は伝染していき、ジャスミンも拍手をする。ライアンはそんな彼女を不機嫌そうに眺めていたが、ジェイデンは得意げに大きな音で手を打ち鳴らした。


 まさか拍手をされるとは思っていなかったキリエは、はにかんで軽く頭を下げる。主君が自分の意思で自分の言葉を堂々と語り披露した姿を見守ったリアムは、感慨深そうに、そして誇らしげに背筋を伸ばしていた。

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