閑話 照算の家出
第3章の時の杉ノ坊照算側から見た話です。
どうぞお楽しみください。
杉ノ坊照算、齢にして18歳。12歳で津田堅物の養子となり、兄である津田算正(次の監物)を支えていた。
その男は、津田堅物の養子になる前は孫市の元で、銃を学んでいた。
杉ノ坊照算は秘密がある。
顔をあまり出さないし、何より前に出てこない。
銃の腕前は、算正が「俺よりはるかに上」と言うスナイパー
それなのに家督はもちろん、根来の傭兵家業も積極的じゃない。
そして、家出である。
この時に、行くあてのない照算は堺に行く。銃で金を稼げば少しは暮らせていける。そういう算段だった。堺に付くと、奇妙な少年に会った。
少年、でも明らかに銃を知っている。そして時たま少年であることを忘れてしまう。。
話は面白く、真面目、人を殺すことはなさそうな少年。されどどこぞの武将の子だ。そして濃密な殺気を漂わせる。
こっちのことを理解しているような気がする。まさか杉ノ坊照算と気づいたか?
やるか?
いや、こんな子供を、しかもこっちには殺気を向けない。
それどころか何処か無邪気に鉄砲を触ったり、話している。
「ここを、改良すればもっと飛距離が伸びそうなんだよな?」
その言葉は唖然とした。何だこの子は?この歳で銃をそこまで理解、いやそんなことはない。なぜなら、私でさえ知らないことなのだ。
津田の家に養子なった、また孫市に教わった照算は、彼のような子供を多く見てきたし、自分もそうだった。小さい手で銃を触り手入れをする。そして12を超えた頃には打ち始め、十四の頃には戦場にでる。
そんな照算をもってしても彼は異質だった。頑張ってきた自分が彼には勝てる気がしない。そんな雰囲気を持っている。
そして彼が放つ殺気は数年後には一流の狙撃手をはるかに超えるだろう。そう思う。腕前は知らないが。
そんな少年との会話は楽しかったが、少年は誰かに呼ばれた。
「勝三」
彼を呼んだのは、林秀貞と前田慶次。どちらも織田の大物だ。
特に林は織田の外交を担う大物、そして多くの者が根来に依頼しにくる。
この子は…。
「申し訳ない、呼ばれているので、失礼。算正殿」
彼は私を兄と間違えていたようだ。
でもおかしい。あんな子が兄である津田堅物を知っている。
明らかに異常だ。
でも彼の元に行けば楽しく暮らせそうだ。
きっと戦場には出るが。彼のためなら銃を撃てよう。
それから半年が経った。傭兵として暮らしている。
そんな折、兄の堅物が私を訪ねて来た。
「おい、照よ。こんなとこにいやがったか。」
ぶっきらぼうな言い方だが、心配している。これが兄、今代の津田堅物だ。
「おい何とか言えよ。お前の抱えていることは知ってるからよ。手伝ってやる。
行く宛を作ってやったぞ。そこに勤めろ。ほれ、これがお前の推薦状と行くあての情報だ。」
そこに書いていたのは森勝蔵長可。織田家の小牧城の城下にあるお屋敷。
彼だろう。林殿の甥。勝三と呼ばれた子供。
「オメェ、ここで森の若さんと会ったそうじゃねぇか。しかも俺と間違えられたって。
まぁ、俺とお前はもともと親戚筋だから似てるけどよ。国友で若さんに会ったら、堺ではどうもときたもんだ!驚いたぜ。
聞いてみると俺と銃の話を半刻も話し込んだとか、最後に算正殿と名前を呼んだら、驚いた顔しやがったっていうじゃねぇか。こいつはお前だと思ったよ。
でもお前が半刻も話した?人嫌いのお前が?
こりゃお前を捕まえて、若さんところに送り込もうと思ったぜ。それによう、ありゃバケモンだ。」
そうか。国友で。
それにしても兄もよく喋る。
普段からおしゃべりだが、この話し方は興奮した時の話し方だ。
よし行こう。彼は根来衆とのつながりを欲しそうだ。私が行けば、彼は根来への貸しが作れることになろう。それは彼のためになる。彼が困った時は私が、彼の矢となろう。鉄砲だが。ふふふ。
それに父からも逃げられる。
照算と森勝三さんの出会いのシーンを照算から見た風景と、森勝蔵長可の部下になる時のお話です。




