奇妙丸
奇妙丸こと織田信忠に出会います。
やっと家族以外との話
それにもう1つ。
だって、信長様が優しいもの。
勝三君が倒れたことを心配して、父上に言葉をかけたそうです。
確かに、森家はお屋形様の覚えが良いとはいえ、たかだか家来の子供が倒れたことぐらいで主君が心配の言葉をかけるなんてありえない。
さらに、奇妙丸こと信忠様とこんなに仲がいいなんてありえない。
信忠の子分的にはなるだろうよ。年も近いし、でもこんな近い距離はない。
そうこれは史実にはありえないのだ。
信忠様が今日、家にお越しいただいたことなどありえないのだ。
時は数刻前、
「勝三よ、元気か」
「ええ、奇妙様」
「そうか、父上も心配の言葉を言っておられたぞ」
「お屋形様においては、ありがたきお言葉、恐悦至極でございます。また、奇妙様においてもわざわざお越しいただき、御礼を申し奉ります。」
「勝三よ、やはりどこか、おかしいぞ。大丈夫ではないな」
「少し、頭を打ちまして、自身の行為を鑑みまして」
「そうか、父上にはよい医者を用意してもらおう。城に来い。」
「大丈夫です。奇妙様」
慌てた。家臣の子として、世継ぎであり、いずれ主君になる奇妙丸様に無礼があってはと思ったが、今までは無礼だったようだ。
なんと、恐れるものがない子だ。勝三君。
父上も顔が引きつっている。
奇妙様は続けて、
「勝三よ、いつも言っておるが、年の近いのはお主ぐらいしかおらぬ。皆が気を使ってくるのだ。お主ぐらい友として無礼なくらいの態度でいろ。父上もそんなお主をかっておるのだ。」
「はぁ」
可成は「勝三、まぁ奇妙様の言う通りにしろ」
「はっ、父上」
「奇妙様、勝三は頭を打って記憶が曖昧なところがあります。できる限り今まで同様のお付き合いができるよう申し伝えますが、何卒ご容赦を」
「まぁ、よい。今まで通りの付き合いになるなら、少しぐらい構わん。ただこれが続くようだと…。まぁ、よい。」
「奇妙様、わかった。」
「ふっ、そうだ。それで良い。よし稽古をしよう。」
「今日も滅多滅多にしてやろう。」
「ぐぬ、そこは戻らなくて良い」
「いや、奇妙様はお屋形様の後を継ぐのだ、強くなくては」
「ふん、勝三め、吠え面をかかせてやる」
「そんなこと、ありえないし、あったことがない」
「なにを」
「さぁ、今日もやりますよ。木刀を」
2人は稽古を始める。
それは、勝三の独壇場。
奇妙丸様も年の割には強いし、大きい。
しかし、それは相手が悪い。
一つ年下の勝三なれど、いずれ、あの鬼武蔵、夜叉武蔵と呼ばれる勝三。
6歳とは思えぬ体躯に、豪放な剣筋で圧倒し、吹っ飛ばす。
奇妙様は泣きそうな顔をこらえ、一瞬の狂気に怯えるも剣を再度強く握り、立ち向かう。
6歳にして12歳の兄にも匹敵する力の強さである。
しかも、今は前世で散々頑張った剣道の技術もある。
可成や勝家をして、わしのその頃より遥かに強いと言わしめるほど。
家臣団でも一番将来を楽しみにされている子供である。
粗暴で、脳筋でなければ小姓に抜擢されているはず。
信長の覚えも良い。
これから変わるだろう勝三は…きっと出世の道はのぞめるはず
主人の嫡男にこんなことを勝三君はすごい。
1章終了です。ここから勝三君の転生で歴史が…。