転生者の前世と覚悟
転生者は前世の記憶を辿るお話。
森勝蔵長可さんの家族についてもお話します。
はぁ、先が思いやられる。
勝三に転生して、はや1週間
元の喋り方に戻しました。
「勝三、稽古を頑張っておるようだな。」
「父上、勝三はもう普段通りです。」
「そうだな、傅兵衞」
兄と父が、そう言ったので、
「父上、倒れて、少し混乱したが、いまは大丈夫」
「そうか、だが、言葉遣いは戻らぬ方がよかったぞ。」
「そうでございましたか?」
「無理しなくて良い。」
父はわらった。
「勝三、稽古だけではなく、読み書きの習いも頑張りなさい。」
「はい、母上」
母はそう言った。
ふむ、これでも転生前は28歳の大人だ。読み書きぐらいはできるに決まっているよ。
そう思いたいが、なんせ現代と字が違う。
戦国時代の文など読めたものじゃない。なんだ、あのミミズは?資料で知っていた以上に這ってたぞ。何でみんな読める?
はぁ、しかも勝三さん、勉強嫌いだ。
子供時代(今も?)の記憶にもありません。こりゃまずいなぁ。この歳でもう一度勉強だ。
いや、この歳だから勉強か。
フゥ、でも、キャラ的には、あんまり学ばなくてもなぁ。
それじゃあ、学ばなくては、いずれ辛くなる。
部屋に戻り、一人休憩する。
前世のことも、今世のことももう一度、思い出そう。
落ち着いたしね。
前世は山本拓也、28歳。独身。兄弟はない。親も俺が死ぬ(?)一年前に亡くなった。
某有名な六大学の一校を卒業後、一流企業に入社し、成績も良く、上司の覚えも良かった。でも、先輩や同期の嫉妬にあい、嫌がらせで会社を辞めた。
その後、貯めた金で少し旅行をした後、派遣と祖父の残した財産で暮らす毎日だ。彼女もいない。そして休日は史跡を回っていた。
まぁ、背は178cmで、顔はなかなか。これがいじめの原因なのだ。自分で言うのもなんだが、モテる方なのだ。
まさか、一流企業の美人な先輩に気に入られるなんてね。想像にないよ。
スポーツは柔道と剣道をしていた。
小さい時から、祖父に教わり。祖父は一流の武道家とも呼ばれるような人であった。
一所懸命が家訓。兎に角、目指す物に、または与えられた場所で、必死でやる。そのために体も知も鍛えよと言われ。小さな時から剣道と柔道をして来た。両方共に黒帯で、高校時代は柔道部において、県大会で個人の部で準優勝した。
剣道もかなりの腕前だと思う。
そして、歴史好きな父と祖父、今で言う歴女の母に囲まれて育ったから、
歴史好きだ。
その中でも、戦国時代はもう一番好きです。大学は歴史研究の盛んな大学に進んだ。
あぁ確か、あの人も好きだったかな。それが理由でだって言われたよ。確か。
織田信長が好きで、家臣も竹中半兵衛、佐々成政、前田利家ら戦人。他にも村井貞勝や林秀貞らの政治に強い人も好きだった。そして、森長可が大好きだった。
悲しく、でも負けないように一所懸命な所が好きだった。
武蔵塚も可成寺も金山も行った。
そんな中の転生。まぁ、嬉しいと言う気持ちもあるよ。なって見るかと言われるという感じだ。
それに、残してきた仕事(派遣だから、代わりなんていくらでもいるけど)や祖父から受け継いだアパート(自分でも住んでたんですが)に関して申し訳ないなぁと思う。
それが転生前の自分について思い出したこと。
そして、対して。
勝三君に関して、
一言で言えば、脳筋で、粗暴です。それに尽きる。
なんでも力づくだよ。暴れる君。
そう、鬼武蔵の名を欲しいままにする長可さんそのままだよ。記憶に残る勝蔵君は。
俺とは近いところもあるけど、反対の方だね。
「せっかく転生したから内政チート」なんてできないよ。
だって、勝三君がチートな内政の話したら、狐が憑いた確定だよ。記憶を踏まえれば、そりゃ、そうだよ。
ちょっと丁寧に話しただけであれですからね。
そんな勝三君ですが、兄の可隆(傅兵衞)さんは優秀みたいです。
文武両方ですばらしい。理想の嫡男だ。
こんな才能ある嫡男がいれば、勝三君があれでも頷ける。
まぁ、武だけなら勝三君の方が強い。それがむしろいいんだろうな。家督問題は起きないだろうよ。
父も体はでかい。
兄はまぁまぁかな。
勝三君はもちろんでかいよ。
周りの同年代の子より、はるかにでかい。
そりゃ、兄と比べてもいい勝負します。6歳も離れているのに。
ちなみに、前世の記憶で覚えている長可さんは悲しいの一言。
夜叉と呼ばれるのもわかる。
父と兄を浅井朝倉との長い戦(第一次信長包囲網)で失うんだ。
朝倉浅井の連合軍から、石山本願寺を攻める信長たちの背後を取らせぬため、必死に寡兵で踏ん張り、守り通す最中に比叡山から来た延暦寺の僧兵に追撃をくらう。それでも死兵となり踏ん張り時間をきっちり稼ぐ。
結果、連合軍は一兵も間に合わずに、本願寺側との挟み撃ちはできずに終わった。そのおかげで織田は近江に撤退する時間を稼いだ。そして比叡山に逃げ込んだ朝倉らは講和することとなった。
弟達は、信長様に付いて、近習、小姓、側仕えとして本能寺に入り、明智の謀反で死ぬ。いわゆる本能寺の変。本能寺で信長と最後を共にし、焼かれた本能寺で無残にその命を散らした。
ちなみにまだ蘭丸君こと成利君はまだ生まれてないよ。母のお腹にもいません。
坊丸君らももちろんいません。
母は父と兄がなくなった後に尼さんになり、出家します。この時代の武将や大名の奥方は多いよ。このパターンが多い。
えいさん(母)の家系も色々とある。えいさんは森家の家臣の出だ。
勝三君の母方の祖父は林新右衛門通安さん。あの林秀貞さんの父の林通安さんではない。その林新右衛門通安の子で為忠は娘の嫁ぎ先が粛清され、森家を出弄するなど運がない。
しかし、史実ではそんな記述は見たことがないが、林通安の林氏と尾張林氏とは遠縁にあたるらしい。現在の、祖父の林通安さんは織田家にいる。それで、林秀貞は、祖父である森可行が美濃で斎藤道三と揉めて、出弄した際に、母である、えいが遠縁であるため、織田信秀様への繋ぎをしてくれた。そのおかげで森家は織田家の家臣になった。その縁もあり、親戚として付き合いをしていて、叔父上と呼んでいる。正確にはえいの再再従兄弟か再再従叔父あたりになるらしい。なので、勝三君は林秀貞を叔父上と呼んでいるようだ。
その秀貞は史実では、弟の仕出かした事(織田家家督争いで、信行について信長と戦をした)を償う為に頑張るも、1580年に理由不明の織田家追放となる。名を変え隠居生活をするも、その二ヶ月後に死亡する。
まぁ、今の時期は、秀貞は筆頭家老だけどね。
そんな勝三君は父が宇佐山の戦いで1570年に亡くなって、兄も同時に同年の朝倉攻めにて亡くなり、12歳の若さで家を継ぐ。
その後、15歳で初陣に出陣し、多くの武功と問題行動を起こす。24歳で弟達が本能寺の変で死亡し、主君である信長も同日に死亡した。その後は秀吉に仕えるも、27歳で岳父である池田恒興について参加した小牧長久手の戦いで、徳川方の鉄砲足軽の一撃が眉間を貫通し、死亡する。その後に遺言を残し、1番下の弟を秀吉様の側近として欲しい。領土は他の人にという殊勝な最後の遺言だった。そして、小牧の近くの、最後の地である場所に武蔵塚というところに首ある可成寺に首のみが埋葬されたという人生だ。
おいおい、前世から知っていたし、自分のことになるはずなのに、なるはずの歴史を思い出すと涙が出そうだよ。
何回も言うよ。辛すぎるよ。
神さまがいるなら、怒るよ。
坊さん嫌いも頷けるよ。
結構苛烈に比叡山や敵対勢力の一向宗なんかを狩ったりしているんだ。
まぁ、俺も前世から嫌いです。
だって、前世の父や祖父がなくなった時に、檀家だから、なんとか言って金を奪おうとするし、あんなの詐欺師だろう。
そんな、勝三君になりましたが、勉強も頑張ります。
だって六大学を出て、商社勤務だったので、計算はできるし、英語も喋れるよ。孫子も学んだ。竹中半兵衛の戦術が好きで、趣味で研究もした。
だけど、勝三君だから、今は利用できないのは勿体無い。だからこれから利用してもおかしくないように色々と学んでいくよ。
で、一番大事なのが、
父も兄も、弟も死なせない。
そう決めました。よし、歴史変えます。
後世の方、申し訳ない。
山本家が存在しないかもしれない。
でも、多分、これパラレルワールドだと思う。
まず、過去に転生はおかしい。仏教その他でも輪廻転生はあるが、それはあくまで時間の不可逆性を侵すことはないはず。これができるんなら、タイムスリップはできているはず。
覚悟を持ってここから話は動き出します。
父は森三佐衛門可成
兄は森傅兵衞
母はえい
なお、歴史上の家族を言う場合はさん付けや父、兄と言った敬称で呼びます。
感想を受け、
えいと秀貞の設定部分を変更。妹から親戚へ(2019.10.9)