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2. はからずもザクを率いてしまったシャア・アズナブル/河村たかし名古屋市長

「なろう系」という言葉をご存じだろうか?


 当サイト「小説家になろう」での典型的なパターンで、非常に人気の高い分野だ。

 私も一万一千匹目のどじょうを目指しているが、それはともかく、その特徴を以下に記す。


 主人公がかなり強引な形で異世界に転生、転移する。

 主人公はチートと呼ばれるほどの力を得る。

 現代社会では当たり前の知識(マヨネーズ、甘さ、両手剣など)でも、異世界では賞賛される。

 無個性の美少女たちにモテまくる。


 参考サイト

https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%AA%E3%82%8D%E3%81%86%E7%B3%BB


 もちろん、人気作はこれらを巧みに取り入れ、それぞれ絶妙な味付けをしているようだが、ベースになるのはこのあたりのようだ。


 個人的には、これらに「主人公はサイコパス」を付け加えたい。


 例えば、主人公が転移(転生)先で、美少女とモンスターの戦闘場面に出くわしたとする。主人公はそこで、無条件に美少女側に付き、モンスターをコロす。

 実は美少女側が悪党で、モンスターを襲っている可能性は全く考えない。

「美少女とモンスターがいれば、美少女は常に善でモンスターは悪」とみなす。これは一種のサイコパスだ。


 ジャーナリストの津田大介氏は、異世界(美術界)に転移した。

「ジェンダー平等」など、反論のしようがない(する必要もない)無敵の剣をふりかざし、「あいちトリエンナーレ」の作家選定の権限も掌握した。


https://www.hokkaido-np.co.jp/article/322393


リベラル系のメディアからは拍手喝采を受けた。


 だが、それだけでは「なろう系」とは言えない。チートと言われた力を見せつけるには、それを使う相手、つまり敵が必要だ。そしてその敵は、数が多いザコがいい。

 そういうザコ敵を余裕で切り殺す場面が、読者にカタルシスを感じさせるからだ。


 「表現の不自由展・その後」に最初に反応したのは、松井一郎大阪市長だったが、すぐに行動に移したのは、河村たかし名古屋市長だった。


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190802-00010005-huffpost-soci 


 8月2日に展示を視察した河村市長は、本展示についてさっそく批判した。

 主な主張は下記だ。


「公金を使った美術展で、いまだ歴史的論争のある『慰安婦像』の展示は許されない

表現の自由と言っても、何をしてもいいものではない。当該作品の展示は、日本人の心を傷つける」


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190802-00010001-kinyobi-soci


 ここで念のため、私自身の立場を簡単に表明しておく。


 思想的位置づけ

保守寄り。ネトウヨに近いと思う。ただし、SNSなどで基本的に政治関連の発言は避けてきた。


「平和の少女像」に対して

作品を作るのは自由。また、政治的な背景を無視して単体の作品としてとらえた場合、以下の二作品に比べれば穏当かと(ただ、この場合「表現の不自由展・その後」に展示される意図と矛盾する)。


「遠近を抱えて・パート2」に対して

「遠近を抱えて」はともかく、「パート2」については、どうせやるなら自身の肖像画でやるべきでは?


「時代の肖像―絶滅危惧種idiot JAPONICA円墳-」

作者が「ファインアート」と言っているからそうだろう。作者はいい人そうだ。


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190809-00010017-abema-soci&p=1


ただ、「自分の作品(本作)をみんなが見て大笑いするんじゃないかと思って作った」というあたり、「なろう系」に負けず劣らずかなりのサイコパスだと思うが。


これらの作品を、公金が使われる「あいちトリエンナーレ」で展示することについて

 積極的に支持はしないが、不可とも思わない。


「表現の不自由展・その後」の展示中止について

反対。

展示は続けるべきだったと思う。

ただし、一般の職員その他の方々の危険には留意すべき


電凸について

批判自体は自由。これを制限するのは別の意味で危険。

ただし私自身は、「意味がない」と思ってしていない。これは証明できないが。


 上述の通り、どちらかと言えば保守的な私からすると、心情的には河村市長に共感するところはある。実際のところ、「平和の少女像」に政治的な意図がない、と言われても、世界のあちこちで「慰安婦像」として展示されている以上、その主張には無理がある。


 とはいえ、法律の素人の私があれこれ考えても、河村市長の主張の妥当性はちょっとみつけられない。

 さすがに、「独島は韓国領土」という展示が日本国内であれば、「公金を使うのは問題」と言えるかもしれないが、「平和の少女像」の撤去を求めるのはやりすぎだと思う。これらをテーマにしたフォーラムを企画するなど、市としてもっと建設的な対抗策をとれたのではないか。


 しかし、これ以上に大きな問題は、影響力のある河村市長の発言が、「税金を使うな!」「公序良俗!」と叫ぶ有象無象を生み出してしまったことだ。


 これは津田氏側からしたら想定内、もっとも御しやすいザコ敵だっただろう。

 もちろん、「ガソリンをもって」という脅迫もあり、これは実行の可能性を考えれば運営側にとって脅威だが、津田氏にとっては、これもザクの範疇だったと思う。


 ネットの世界は、発信力のある人が何かを言うと、多少違和感があったとしてもそれに引っ張られる。そしてそうなったら、雪だるま式に膨張し、違和感や異論は飲み込まれてしまう。


 例えば、先日、百田直樹氏による、俳優の佐藤浩市氏の発言に対する批判があった。詳細はこのあたりに詳しいが、


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190530-00562472-shincho-ent


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190531-00562474-shincho-ent


簡単に言えば、「佐藤氏の『権力者を演じるのはちょっと抵抗があるため、おなかが弱いという設定にしてもらった』という発言に対し、第一次政権時代、難病の潰瘍性大腸炎を患い、辞任した安倍総理を揶揄している」というものだ。


 もちろん、佐藤浩市氏の真意はわからないが、これに対し、作家の百田尚樹氏が、「役者ならどんな役も演じるべき」と言い、「三流役者が!」と罵倒したことで、批判派、擁護派で非難合戦が起きた。


 佐藤浩市氏が役者として三流ということはないと思うが、本来の問題は、難病の潰瘍性大腸炎を揶揄した、またはそのように見えたことだ。

 実際、ツィッターなどでは、同じ病気を抱える方々からの悲痛な叫びもあった。

 しかし、発信力のある百田氏が「三流」と言ったことで、論点が「佐藤浩市の首相役という権力者に対する考え方」になってしまった。結果、批判派、擁護派とも、本当に病気で苦しんでいる人の叫びなど無視して罵倒し合う、という何とも言えない状況に陥っていた。

 結果的に、難病に苦しむ人たちの声、そして一部の人の「本当の問題はそこではない」という主張は潰されていった。

 

 今回の「表現の不自由展・その後」に対する批判も、同じような構図だ。


 批判派(保守派)の人たちの中にも、「『公金が使われているから、表現の自由に制限がかかる』はちょっと無理があるよね」という思いがあったかもしれない。 「『表現の自由』を言われたら弱いよね」と思っていた人もいると思う。実際、河村市長も少しずつトーンダウンしていったように感じる。

 また、「公序良俗」という観点も、今回の展示がそこまで言えるものか、という疑問は、頭の片隅に残っていただろう。

 そしてその上で、「表現の不自由展・その後」に対する冷静な批判も、実際にあった。しかしそれらは、圧倒的に大きな大衆の怒声に飲み込まれていき、「よりまっとうな批判」として可視化されるまで時間を要した。

 

 ノイジーマジョリティのザクに対して、津田氏側は、「俺はここから一歩も動かない」くらいの余裕で対応できた、と思う。むしろ、斬られ役(撃墜され役)のザクが目出つ状況に、無敵感が増していたかもしれない。

 そして津田氏の「俺TUEEE」状態が長引いたことは、問題の整理の大きな妨げとなったと思う。



 河村たかし名古屋市長は、以前イベントで「機動戦士ガンダム」の主人公、アムロのコスプレをしていた(衣装を着ていた)。

 しかし、今回の件では、むしろシャアとして、多数のザクを率いることになったのは皮肉だし、とても残念だ。

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