第6話
戦闘シーンにかなり悩んだ挙句操作ミスで全部消してしまい、かなり遅くなってしまいました。
本当にすみません。
「ただいまー。」
「おかえり。」
温泉から帰ってきてただいまと言えばリーシャからおかえりと返ってくる。
そして部屋の中で武器の手入れをしていたメイヤもこちらをチラリと見てくる。
しかし、残り2人の姿がどこにもない。
「あれ、2人は?」
「ああ、2人なら探索に行ってくるって言って出掛けて行ったわよ。」
「えー!? 集めた情報の共有とかしたかったのに……。」
「それはさっさと温泉に向かったウタイが悪いんじゃない。温泉に入る前にやれば良かったんだから。」
「……だって我慢できなかったんだもん。」
「だもんって……まあ、あの2人なら別に話さなくてもいいじゃない? 魔物自体はこれまでに何度か倒しているんだし、集めた情報もどこで見かけたかとかでしょ? 亜種とかだった訳じゃないんだったら伝えなくていいでしょ。どうせ忘れるわ。」
「……それもそうだね。」
というわけで2人抜きで情報の共有を行なった。
そして帰ってきた2人……特にロップルには軽いお仕置きを敢行した。
ロップルに関してはまあ、予定通り?
とりあえず、モフモフは正義だったとだけ言っておこう。
◇
翌日。
ギルドの方に顔を出してついでに受けれる依頼がないかどうかを確認しつつ、到着した事とこれからブラッドダイナソーを倒しに行く事を伝えた。
残念ながら「ここは女子供が来るところじゃねぇ」って言いながら近づいて来るテンプレ冒険者は現れなかった。
全く、この町の冒険者は度胸が足りない。
返り討ちにしてやろうとウキウキしていたというのに。
登録した時は人数が少ない時間帯だったのか絡まれなかったからねぇ……。
初顔出しだから今回は期待してたんだけど、本当に残念だ?
ギルドを後にし、目撃情報などから割り出したブラッドダイナソーの潜伏先と思われる場所へ向かう。
「ビンゴ!」
予想通りブラッドダイナソーがいた。
私が釣り出してみんなが待ち構えて一気にというのがいつものパターン。
しかし今回は違った。
「ギュアアアアアアア!!」
もう1匹!?
ひょっとして番い!?
てっきり怪我をしてその怪我を癒す為にここに来たと思ったけど、そうじゃなかった?
産卵をして身動きが取れなくなるから、敵となる相手が少ない浅い場所に来ただけ?
でもこうして出て来たって事は産卵済み?
子供はまだ孵化してないのか?
分からない。
分からないけど、これは分かる。
ちょっとだけ面倒なことになった。
「みんな、もう1匹いた! 罠使っていいからこいつの相手お願い! 私はもう1匹の方の相手をするから!」
「1人で足止めするつもりか知らないけど、無茶だけはしないでね!」
「分かってる。だが別に、あれを倒してしまっても構わないのだろう?」
「え、あ、うん。出来るのならね。」
こうして、想定外の1対1をする事になったわけなんだけど、ネタにはなんの反応も無かったのがちょっと寂しい。
友人が暫く疎遠になっている幼馴染の妹経由で知ってそこから伝わって来たアニメ作品ネタなんだけど、やっぱりあの声じゃないとダメなのかな?
「こいつでも食らってなさい!」
最初に釣り出した奴をみんなに任せた後、即座に反転し、興奮作用のある薬品と唐辛子なんかの刺激物を混ぜ込んだものを入れた袋を投げつける。
興奮し、刺激物によって怒るブラッドダイナソーは袋を投げつけた主である私のみを狙いだす。
みんなから離すのには成功したけど……選択間違えたかも?
普通に投げナイフでも投げときゃよかった。
周りの木が悲惨な事に……。
「ギュアウ!」
「おっと!」
噛み付きを躱す。
地球のトリケラトプスは草食という話だけど、あくまでも地球での話。
ブラッドダイナソーは見た目だけはトリケラトプスに似ているがその実態は完全な肉食。
こうして鋭い牙で噛み付いてくる程に。
振り返ってこちらを向いてきたブラッドダイナソーがひと吠えすると地面から岩の槍が生え連続して襲って来る。
それをパックステップしながら躱し、岩の槍が治まった瞬間に飛び出し肉薄する。
近づいた私に向かって噛み付いて来るけどそれを斜め前に一歩分進んで躱し、飛び上がりながら短刀を一閃。
ついでに首目掛け、体を大きくひねりながら投げナイフを連続して投擲。
シュタッと着地してそのまま屈むと頭上をブォン! という大きな物が通り過ぎる音がする。
多分振り向きつつ尻尾による一撃を狙ってたんだろう。
前転してから振り返り投げナイフを確認する。
「一本だけか〜、やっぱ硬いわね。」
首の右側にちょこんと刺さって……あ、落ちた。
メチャクチャ浅かったようだ。
ま、あんまり期待してなかったけどね。
伊達に身体能力と頑丈さだけでB認定されていないのだろう。
見た目こそ竜種を彷彿とさせるけど、こいつはブレスを吐かないし翼も持たない為亜竜ですらない。
言ってみれば大きくて頑丈なトカゲ。
それでも身体能力と頑丈さだけは本物。
「ギョアアア!」
そして首の傷もすごく浅い。
というか、肉にすら到達していなかった。
表面の鱗に本当に小さな傷を付けただけ。
その事に気を良くしたのか軽くひと吠えしてニヤリとした顔を浮かべる。
うん。
ただの小手調べだったから傷が付いてないのは構わないのだけど……ムカつくわね。
お前の攻撃なんか無意味だと言わんばかりの顔して……そっちがその気ならそろそろ本気で行かせてもらうわ。
チラリと地面に落ちた投げナイフを見る。
そしてブラッドダイナソーを確認してから小さく怯えの表情を浮かべて後ずさる。
練習したわけじゃないから人間相手なら見抜かれていたかもしれないが、相手は魔物。
それも知能あるドラゴンではないただのトカゲだ。
ものの見事に引っかかってくれた。
「あっ……。」
足を引っ掛けて転んだように見せる。
それを好機と捉えたブラッドダイナソーは大口を開けて私の頭に噛り付き……
「ゴリ、グチャ、バキン! って食べてる光景を夢見てるんでしょうねぇ。」
なんて事はない。
ただの幻術だ。
最初に怒らせて、そしてその実態はまともに自身を傷つけられない取るに足らない雑魚だと思わせて心に隙を作る。
後は幻術に嵌めてやればご覧の通り。
その場で呆然と立つトカゲとなるわけよ。
無闇矢鱈と傷つけたら素材の価値が落ちるし、毒とか使うとお肉が食べられなくなっちゃうからね。
だからこうして幻術を使ったわけ。
さて、それじゃあ、トドメと行きますか。
「彼の地より来たるは漆黒の鎖。汝が縛しは眼前の敵なり。」
私の詠唱に合わせて地面から黒い鎖が現れ、ブラッドダイナソーを縛り上げる。
「地へとひれ伏させし彼の者の、頭上に生まれしは罪人を裁く死出の導き手。其は地に堕ちて大地を真紅に染め上げん。」
黒い鎖で縛りつけられたブラッドダイナソーの頭上にこれまた真っ黒な、なんとも厳つい断頭台が生まれる。
その刃は一直線に落ちていきブラッドダイナソーの首を撥ねとばす。
そんなことする訳だから勢いよく血が吹き出てくる。
……相変わらずエグい魔法ね。
闇魔法と言われて納得出来るけど、どうにかならないものかね。
魔法名は【漆黒の斬首刑台】と見たまんまだ。
まあ、ルビが無いだけマシというもの。
ルビとか振ってあって痛々しい物になってたら普通に死ねる。
ちなみに詠唱は見たまんまをそれっぽく言ってるだけ。
「また派手にやったな〜。」
「アン。そっちは終わったの?」
「ああ、私が止めて後はみんなでフルボッコだ。」
「ちょっ、素材傷めてないでしょうね!?」
「その辺は大丈夫だ。頭に攻撃を集中させたから。」
頭を剥製にして欲しがる好事家とか居そうなんですけど……ま、仕方ないか。
この辺はゲームとの差ね。
ゲームだとどれだけ傷付けても素材は傷まないけど、ここは異世界とはいえ現実だから、攻撃したらしたぶんだけ傷が付く。
その辺も考慮して倒さないと遠征費やら装備代やらで赤字になる。
そういう事情もあって黒字を出せて初めて一人前と言える。
意外と夢のない職業なのよね、冒険者って。
ま、それでも私は一流と呼べるレベルなってかなり稼いでいたりしてるんだけどね。