表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界怪盗★調ちゃん 〜職業冒険者ときどき怪盗〜  作者: 椎茸大使
第1章 異世界怪盗調ちゃん誕生?
3/7

第2話

潜入するにあたって、私はいくつかの装備を用意した。

まず仮面。

これはどっかの村の民芸品として露店で売っていたもので、そんなに珍しい物ではない。

目的が顔を隠すことだから珍しい物や価値の高い物は使えない。

一つ問題があるとすれば……恐ろしい見た目くらいだろう。

真夜中にこんな奴が突然現れたら、私なら多分腰抜かすと思う。

でも私は被る側だし何も問題はない。

見つかって化け物が出るなんていう噂が出来て警備が強化されるかもだけど、正体がバレるよりかはマシよ。


二つ目は服。

黒くてあまり目立たない物を選んだ。

そして少し大きめ。

大きめだから体格とかをあまり分からないようにと思ってこれにした。

剣道なんかの袴は足さばきとかを分からなくする為にああいう形だっていうし、それを真似てみたのだ。

え?

どうせ胸小さいんだし分からないだろって?

うっさいわ!

ちゃんとあるし!

まだまだ育つし!

服は忍者っぽいのにしようかとも悩んだりもしたけど、オーダーメイドになるからやめた。

今後使うかも分からないのに高いオーダーメイド品は流石にどうかと思ったから。


三つ目はフード付きのマント。

漫画とかにいる怪しい集団が着てそうなやつ。

これも服と同じで体格とかをごまかす為のもの。

これがあれば服はいいんじゃないかと思わなくもないけど、捲れたりした時に見られたくないからね。


最後はこれ。

煙玉……と行きたかったけど、作り方が分からないから小麦粉を袋に詰めて代用する。

見つかった時の逃走用だけど、出来れば使いたくないな。

上手くいくか分からないし、凄くむせそうだから。


装備を確認し、いざヨーデルハイム商会へ。

草木も眠る丑三つ時……丑三つ時がいつか分からないけど、深夜に宿屋を抜け出して裏道を使って接近。

誰にも見つかってない事は気配察知で把握済みだ。

無事に裏口にたどり着くと再び気配察知を使う。

中に人がいるのか、いたらどこにいるのかなんかを調べる。

人の気配は11こ。

動きがあるのは裏口と正面入り口の所に1人ずつと真ん中付近に2人。

裏口と入り口の方は見張りで中の2人は交代要員かな。

動きがないのが寝ているのであろう商会主の主人とその妻、そして噂の孤児なのだろう。


どうやって忍び込もうか。

こういう時の定番だとわざと物音を出してそれを確認しに来た見張りをこう……後ろからキュッと。

でも殺すわけにはいかないし、一撃で声も出させずに気絶させる自信はない。

失敗した時のリスクがでかいよ。

って、あれ?

あそこの窓開いてない?

一階だというのに……不用心だなぁ。

泥棒とか暗殺者みたいな怪しい奴に忍び込まれたらどうするのさ?

というわけで、潜入潜入〜。


えーと……っ!?

何ここ?

ベッドが無い。

いや、ベッドどころか布団も無いじゃない!

あるのは1人につき1枚支給されたのであろうボロい毛布だけ。

それを被って子供達が寝ている。

毛布があって、雨風凌げるだけでもありがたいとでも思ってるんでしょうね。

孤児だったんだから。

野晒しの中で生きるしかない孤児だったんだから。

でも、雇って住まわせたんでしょう!?

なら、もっとマシなのを与えてあげなさいよ!?

ダメだ。

これはもう完全に黒だ。

そう感情が訴えるが、冷静な部分が待ったをかける。

この光景に憤るのは私がこの世界の出身ではないからで、この世界ではこの光景は普通なのかもしれないから。

毛布があって雨風が凌げて食べ物ももらえて給金ももらえるのだから。

住まわせてもらってるのに文句を言うのは筋違い。

そういう考えなのかもしれない。

私にはこの世界の常識がわからない。

だからまだ手を出すべきじゃない。

私は、なんとかしたいと思ってるけど、まだ何もしてはいけない。

今は、情報収集を優先しないと。


気を取り直す。

子供達の部屋を出て店の中を調べる。

優先して調べるのは不正の証拠や噂の真偽だ。

商会主の仕事部屋を調べたいところだけど、一体どこにあるのやら。

でもとりあえず、退路の確保を優先しておこう。

逃走経路が一つだけだとそこを潰された時点でアウトだから。

潜入がバレるつもりは無いけど念の為ね。

台所と思しき部屋の窓を開けておく。

これでよし。

こんな適当でいいのかと思うだろうが、逃げるということは追われているということだからね。

そんな逼迫した状況で細工をして逃げるのにかかる時間が伸びるようなことする必要はない。

転移魔法とかあれば楽なんだけどものすっごいレアスキルって話だし無理か。


噂の真偽は調べにくいが帳簿などを見れば給金が払われているかくらいは分かるはず。

店とは関係ない仕事とか、暴行なんかは現場を押さえないと無理。


そう思いながらいくつかの部屋を見て回ったが、商会主の仕事部屋では無かった。

一階は後二部屋。

どっちかが当たりだといいんだけど……お、当たりかも。

まだ分からないけど、少なくとも立派な作業机や高そうなソファーがあって凄くそれっぽい。


何か無いかな〜っと。

金庫発見。

簡単な南京錠か。

罠解除の要領で……おっと。

魔力認証もあるのか。

南京錠は囮で本命はこっちか。

無理に開けようとすると大きな音が出る仕組みか。

でも、その仕組みに行く回路の方を弄ってしまえば無理やり開けたとしても音は鳴らないから何の意味も無いんだけど。

これでよし。


では、ご開帳〜。

……なんだ。

入ってるのはお金と貴金属類だけか。

って、おや?

この指輪って、確か盗賊団の壊滅と盗まれた指輪の奪取っていう依頼の時の指輪にそっくりだね。

……うん。

ちゃんと愛するジェシカへって彫ってあるね。

本物だね。


という事は、ここは例の盗賊団と繋がってたって事になるよね。

ひょっとしたら闇市か何かで手に入れたかもしれないけど。

そっち方面の証拠が無いかも探してみよう。


一通りこの部屋を調べてみたけど残念ながらそれっぽい書類とかは見つからなかった。

他の場所にあるのか、それとも既に処分されたのだろうか?

そういえば、漫画とかだとこういう絨毯の下に隠し部屋とかが……あったね。

多分ここだ。

すぐにバレる所に金庫があったのは囮だったって事ね。

鍵は掛かってないようね。


中に入るとうず高く積まれた金貨に怪しげな小瓶……うわっ!

鑑定したら媚薬でしかも依存性が高い危険な代物だ。

これ、法律的に大丈夫なの?

非合法の可能性あるわね。

その辺は後で調査……は、やめておこう。

女の私が媚薬の調査ってそれもうアレ目的じゃない!

そんな事はまだした事ないし、そういう女って思われたくないわよ!


他に何か無いかと探してみるとまた金庫を発見。

金貨が積まれている以上はお金や貴重品の可能性はないと思う。

後は開けてから。

こっちは魔力認証は無いし楽勝だ。

中身は……ビンゴ。

盗賊団に依頼をしたっていう書類だ。

他にもなんかあるけど脱税の証拠とかはどう見ればいいのか分からないけど、テレビとかでは使途不明金とか言うよね?

よく分からない使い道の物とかこの用途でこの金額は無いだろう……っていうのを見つければいいのだろうか?

……………………だめだ。

分からない。

そりゃパッと見ただけで分かるような書き方しないよ普通。

多分そんなのは創作の中だけだろう。

仕方ない。

この書類は諦めて他の書類を見てみるか。

そっちの方は分かるといいんだけど。


結果だけ言おう。

ダメでした。

私は元々ただの女子高生だったんだから分かるわけがないんだ。

いや、分かるはずがない!

……はぁ。

とりあえず、書類の読解は今後の課題にして、ひとまず撤収しよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ