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何コレ? モテ期?

 学校一の尻軽女だとか、スーパービッチギャル子さんと付き合いだしてはや数日、俺はムラムラ――じゃなくてモヤモヤしていた。


「そんじゃまたねー」


 学校の帰り道、来栖さんはその日その日で違う交差点で俺と別れる。

 朝一緒に登校する時に待ち合わせする交差点で帰ることは一度だって無い。

 今日も知らない方へ来栖さんは去って行く。


「毎日違う男のところにいってるんだろうなぁ」

「誰!? 人に変なモノローグつけないでよ!?」


 それだけは考えないようにしてるんだからさぁ!

 そんな俺にメチャクチャなモノローグをつけたのは、これはまた意外な相手だった。


「へ? 飯野さん?」

「うん、高瀬君も帰り?」

「えっと、うん」


 黒いストレートの長い髪、化粧っ気はほとんどないのに整った柔らかな顔立ち、そして、学年一位の成績を連続で叩き出している優等生、飯野葵いいのあおいさんがいた。

 清楚な雰囲気でどんな人とも分け隔て無く優しく接する人で、クラス委員長もやっている。

 来栖さんが目立つせいで表だった話題には出ないけど、実は男子にとても人気な子で、わざわざ先輩が見に来て告白したという逸話もある。

 他にも告白した人は大勢いるけど、みんなやんわりと断られているという。

 ただ、来栖さんと違って話題にあがらないのは、まずはお友達から互いのことを知ってからでいいかな? と気を持たせる断り方をするかららしい。

 そういうのも込みで、みんなの持つ飯野さんへのイメージは、来栖さんと真逆だ。

 どちらにせよ俺と関わるような人ではないんだけどな。

 事実、帰宅途中で声をかけられたのなんて初めてだ。


「何か寂しそうな目で向こうを見ていたから、大丈夫かな? ってつい声かけちゃった」

「あぁ、うん、大丈夫だよ。ってか、そんな風に見えたの?」

「うん、来栖さんのことでちょっと悩んでたでしょ?」

「なんで分かるの!?」

「ふふ、見れば誰でも分かるよ」


 うーん、来栖さんと違って上品に笑うなぁ。

 もし、本当にそんな目をしていたら、来栖さんは絶対に俺をからかって、ニマニマして、あげくにはケラケラ笑っているはずだから。

 なぁに? 妬いてるの? うわー超嬉しいし。寂しくないようにキスしてあげよっか?

 とか言いそう。

 んで、スカされて笑われるのまでがセット。

 あるぇ? もう完全に慣れきってるぞ。


「今度は何かすごく複雑な顔してるよ? 大丈夫? 身体の調子悪いとか?」

「あっ、いや、うん、大丈夫。ちょっと自己嫌悪してただけだから」

「そっか。高瀬君、ちょっとかわいそうだね」

「かわいそうかな?」


 うん、まぁ、そうかもなぁ。来栖さんにはからかわれて、クラスメイトからはへたれ扱いされて、お世辞にも良い扱いじゃないのは間違い無いのは確かだ。


「確かに悩むことは多いかなぁ」

「だよね。せっかく彼女が出来たのに、彼氏を置いて他の男と会っているかもしれないんだもんね。悩むに決まっているよ」


 だって、あの来栖さんだもんね。と飯野さんは続けた。

 女子だけで集まると、やっぱりそれなりにぶっちゃけ話も出るみたいだ。

 スーパービッチギャル子さんは経験豊富なのは、夜の街で何人もの男を相手にしたことがあるからで、実は子持ち、そんな噂話が広まっていると飯野さんは教えてくれる。


「高瀬君と付き合っているのだって、学校でつまらない男子に言い寄られないようにするためなんじゃないの? ってみんな言ってるよ。だから、途中から女子は高瀬君には何で付き合ったのかとか聞かなくなったでしょ?」

「あー……うん、俺が囲まれたのって最初の一日だけだったもんねぇ……」


 意外と飯野さんの言うことは的を射ている。

 俺は相変わらず女子の皆様からは箸にも棒にもかからない扱いだし、男子の皆様からはヤッたのかしか聞かれない。ヤってないと答えればすぐ離れていく。

 何か俺に先を越されるのがむかつくとか。


 って、俺の話はいいや。


 的を射ているのは俺のことだけじゃなくて、来栖さんのことも言い当てている。

 事実、俺と付き合っていることが広まって数日の間、来栖さんは俺の前で何度も告白を受けていた。


 例えば、そんな冴えない奴より、俺と付き合おうぜ。と言った野球部主将に、汗臭くて無理☆

 例えば、高瀬なんか京にはもったいないよ。俺と付き合ってというテニス部エースに、豚に真珠、あんたに私ね。私にあなたじゃ確かにもったいないわ。と切り捨てた。

 例えば、高瀬のポークピッツじゃ物足りないんだろ? 俺のビッグマグナムが満足させてやるよ。と突然服を脱いだ超ド級の変態には、ハッ、ちっさと一笑して立ち去った。


 高瀬でも付き合えるなら、俺でも行けるんじゃないか? って奴らが尽く沈められると、いつのまにか高瀬以下にされるんじゃないかと怯えて誰も告白しなくなっていた。


 そういう意味で、俺は立派な盾になった訳だ。

 いや、うん、こうやって改めて思い出すと、来栖さんの隣に俺がいるのが本当に不思議だよね。俺の対外評価どんだけ酷いんだよ。

 悲しくなってくるわ! 最後の変態以下だって思われたのだけは納得いかねぇよ!


「ねぇ、高瀬君、高瀬君?」

「あっ、ごめん。またちょっと自己嫌悪を――」

「ひどいなぁ。女の子がせっかく勇気出したのに」

「へ? ごめんなさい」


 何を言われたんだ?

 来栖さんのことについてか? あぁ、うん、何かあまりにも女子達の噂は現実離れし過ぎて実感が無くて聞き逃していたかな。


「私とも……仲良くしてもらえないかな? その友達からでもいいから」

「はい……?」


 意味が分からない。

 どういう意味か分からない。

 え? 単純に友達になりましょうっていうお誘い?

 だったら、友達からって何だ? その先は一体なんなんだ? でも、友達になりたいんだよな?


「えっと……? よろしくお願いします?」

「うれしいっ……。実はずっと前から高瀬君のことは気になってて……。来栖さんに先を越されたのは悔しいけど……それでも諦められなくて、友達からでも始められたことがとっても嬉しい……」


 え!? 俺、告白されたの!?

 隠れ人気ナンバー1の飯野さんに!?

 マジで何が起きてるの俺の人生!?

 いや、何かの冗談だよな? 聞き間違えだよな?


「ちゃんと振り向かせるからね?」


 聞き間違えじゃなかった!?


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