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二人きりの家で

 来栖さんに案内されてたどり着いたのはとあるマンションの一室だった。

 その部屋の前で来栖さんが立ち止まる。


「場所覚えた?」


 そう言って来栖さんが俺に目線を向けてくる。

 帰り道の心配をしてくれてるんだろうか?


「うん、大体。多分普通に帰れる」

「なら、次は一人でも来れるね」

「えっ? あ、うん」


 次って何!? どういう意味で聞いたの?


「それじゃ、いらっしゃいユウ」

「お邪魔します」


 来栖さんが扉を開けて中に入る。

 そして、よく片づいたリビングに通された。

 花柄のテーブルクロスがかけられたテーブルに木の椅子。テレビの前にはソファーとクッション。


 棚の上には、叔父さん一家の若い頃の写真と、最近撮ったのか来栖さんも写っている写真が飾られている。

 どっちの写真もみんな仲が良さそうに笑っていた。来栖さん楽しそうだな。


 にしても、彼女と保護者のいない家に二人きり。すごい緊張するんだけど、心臓の鼓動がさっきからすげーうるさい。


「ほら、荷物はそこ置いて。こっちこっち」


 てっきりリビングで何かするのかと思ったけど、別の部屋に連れて行かれるらしい。

 そして、京と書かれたルームプレートのある部屋の前に連れて行かれる。

 ここはもしや!?


「ここ、私の部屋」

「ここが来栖さんの部屋」


 ゴクリ、やばい。俺今から女の子の部屋入るの!? 入っちゃうの!?

 緊張して変なことをしないよう気をつけないと!


「私、着替えてくるからちょっとここで待っててね?」

「あ、あれ? てっきり来栖さんの部屋で何かするのかと……」

「暑くて汗かいたし、先着替えておきたいなって。ほら、これからご飯も作んなきゃだし。制服汚したら嫌だかんね」

「あ、そっか、そうだよね」

「ふふーん、ユウは何を期待したのかなぁ?」


 うう、何か学校とか外にいるよりも緊張するせいで、こういけない想像力が働いてしまう。

 というか、普通にリビングに残してくれれば良いのに、わざわざ連れてきてからかうなよ!?

 でもまぁ、一度からかわれて満足してくれただろうし、着替え終わるまで待つか。

 それにしても来栖さんの普段着かぁ。そういえば、見たこと無いなぁ。うわっ、何か楽しみになってきた。


「扉ちょっと開けておくから、覗いても良いよ?」

「うん、分かった。ありがと――えっ!? 今変なこと言ったよね!?」

「あはは。良い反応してきたね」


 からかわれた!?

 そのケラケラ笑う感じ、完全に狙ったな!?

 って、本当に扉を中途半端に開けて、部屋の中入っちゃった!?


「覗いても良いって言ったよな……」


 思わず呟きながら扉の隙間を見つめる。ここに顔を近づければ来栖さんの生着替えが見れる。

 でも、それは俺ならそう言われても覗かないでしょ? っていう信頼でもあり……。


「ううー……」


 俺は扉に背を向けた。

 背中越しに来栖さんの着替える音がする。ジッパーを開ける音とか、布がこすれる音とか、棚を開ける音が一々全て聞こえてしまうせいで、何度も振り向きそうになった。

 振り向けば、あの時ちらりと見えた黒い下着が見えるんじゃないかと想像力が勝手に働く。

 

 でも、ガマンだ。多分、見たら俺の理性はもう耐えられなくなるだろうから。


「お待たせ」

「すごく長く感じたよ……あ……」


 振り返ると、エプロン姿の来栖さんがいた。

 短いスカートを履いているせいで、正面から見ると下に何も履いてないように見える。

 すっげー! 生足だ! 触るとスベスベしてそう!


「ふふ、ちゃんと覗かなかったご褒美にちょっとえっちいコーデにしてみたよ。感想は?」

「……すごく似合ってる」

「えへへ、あんがと。恥ずかしいけど着たかいがあったよ」

「一応聞いておくけど……覗いてたら何を着ていたの?」

「ジャージ」


 ナイス俺! よく耐えた俺! ガッツポーズ仕掛けたぞ俺!

 そうだ。人は服という文化を持っている。人は服でより自分を美しく見せる力を持った唯一の生物だ。

 裸が見たいなど、原始の本能の名残でしない! その本能に負けず、服を着るのを待った俺偉い!


「それじゃ、晩ご飯をちゃちゃっと作っちゃうから、いこ?」


 そう言って来栖さんはいつものように俺と腕を組んだ。


 ん? あれ? 何かいつもと感触が違うような気がする? 何というかいつもより柔らかいというか、押し付けられた感触に弾力を感じるというか?

 私服だからなのかな?

 不思議に思っているのが視線からバレたのか、来栖さんが俺の顔を見てニマニマしだした。


「恥ずかしいから、あんまりおっぱいジロジロ見ないでね? ブラしてないから。あ、もし、着替えを覗いてたら私のおっぱい見れたかもね?」

「っ!?」


 うわああああああ!?

 それは見たかった! 服は人のみが持つ文化!? いいや、男はその服の中に隠された裸も想像しちゃうからエロく感じる訳で、やはり大事なのは裸か!?

 ヘタレた俺が間抜けだったのか!?

 で、でも、覗いてたらこの感触もこの姿も無かった訳で、くそう! 何て二択を突きつけてくるんだ!?

 というか、来栖さんの家に来てから、ずっと俺変だ!? ずっと心がフワフワしてる!?


「あはは、本当にユウはかわいいなあ。私なんかにドキドキしてくれてホント嬉しいよ」


 ああ、ダメだ。勉強会の時にこれからはからかわれないなんて思ったのは間違いだった。


「はぁ、来栖さんにはまだまだ敵わないなぁ……」


 でも、おかげで、緊張がとけていつも通りくらいに落ち着いてきたような気もするから、来栖さんなりに緊張をほぐしてくれたんだろうか。

 なんてのは都合よすぎる考え方だけど、そうだったら良いなぁ。


「ホント、動揺が顔に出すぎだよpure boy?」


 うん、違った。ただ、からかうのが好きなだけだ。


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