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一件落着?

とりあえず、ストーカー編? 一区切り。皆様応援ありがとうございました。

おかげでランキングにまで入り、大変びっくりしています。

まだまだ続くので引き続き応援よろしくお願いします。

 どうしてこうなったんだろう?

 うん、本当にどうしてこうなったんだろう?

 全て丸く収まったはずなのに、最後の最後で変なことが起きるのは俺のせいなのか?


「ほら、ユウ、あーん」

「あ、あーん」


 うん、来栖さんがお昼にお弁当をあーんしてくるのは、まぁ、何度もあるから良い。


「はい、高瀬君、あーん」

「何で飯野さんが!?」


 俺は何で飯野さんにあーんされてるのさ!?


「え? お昼を私が誘ったから?」

「そうじゃないよ!?」

「えー、なら、友達だからじゃダメ?」


 何で来栖さんの前で普通にそれが出来るの!?

 いや、うん、そんなようなことは言ってたけどさ!?

 ということで、話は少し前にさかのぼる。

 あれは来栖さんに飯野さんが謝った時のことだった。



 人目に付かない朝の校舎裏、来栖さんに呼び出されると、飯野さんもいた。


「あ、来た来た。委員長と無事仲直りできたよ。ちゃんと全部謝ってくれたし、私も全部水に流した」

「そっか。良かった」


 特に遺恨無く丸く収まったのならこれ以上に良いことはない。

 来栖さんはもちろんのこと、飯野さんもいつも通りに見える。


「飯野さんも元気そうで良かった」

「ねぇ、来栖さん、……高瀬君のこれって素なんだよね?」

「うん、良い彼氏でしょ?」


 え、何なのこの反応?

 何で飯野さんは呆れた笑みを浮かべて、来栖さんは自慢気なの?


「えっと、二人とも何の話をしてるの?」

「高瀬君を好きになって良かったって話」


 飯野さんはそういうと照れくさそうに笑った。


「あぁ、そっか。俺を好きになって良かった話――えええっ!?」


 いやいや、あれ? 俺が気になってる云々は来栖さんを見返すための嘘で、俺にちょっかいをかけてきたのも全て演技で、俺はつまらない人じゃなかったっけ?


「そうそう、私の自慢の彼氏――あれ?」


 来栖さんも首を捻った。

 うん、来栖さんが言うのならいつものからかいなんだけど、さっき言ったのは間違い無く飯野さんで――となるとどういう意味!?


「高瀬君に飽きたら教えてね? 来栖さん?」

「飽きないし! 十年以上好きな気持ちは今更変わらないし!」

「そっか、本当に羨ましいな」


 本当にどういう意味なのさ!?

 いや、それよりも、来栖さん、俺のこと十年以上前から好きってのもどういうこと!?


「うん、それを聞けたら、ちゃんと言えるよ」

「何よ? 言っとくけど、ユウはあげないからね?」


 そういって来栖さんが俺に抱きついて、腕を思いっきり掴んできた。

 あ、やっぱりさっきの飽きたらって、飽きたら俺と付き合うつもりとかそういう感じのなの? ――いやいや、そんな訳ないよな!?

 というか、来栖さん、ちょっと痛い。けど、そんなところも案外かわいい――いやいや、毒されるな俺。


 って、飯野さん!?


「図々しいお願いだけど、二人とも私の友達になってください。いっぱい傷つけて、迷惑かけちゃったけど、二人のおかげで前を向けるようになったから。お願いします」


 飯野さんが頭を真っ直ぐ下げて、俺達にそうお願いした。


 その突然のお願いに、俺と来栖さんは顔を見合わせた。

 どうするの?

 そう聞かれている気がする。


 とはいえ、俺の答えは決まっている。


 飯野さんのあの振り向かせるって言葉の意味を今なら分かるから。

 あれは恋人にするって意味じゃない。ちゃんと飯野さんを知って欲しいって意味なら――。

 今度こそあんな間違を起こさずに友達になれると思ったんだ。


「うん、今度こそ、よろしく」

「仕方ないなー。ユウがそういうのなら、私も別に良いよ。ただし、ネコ被りは無しだかんねー」


「分かってるよ。二人の前で猫被ってもどうせばれるでしょ?」

「そーいうこと。よくわかってんじゃん。腹黒委員長」


「ビッチの振りしてたっていうけど、来栖さんも素で結構良い性格してるよね?」

「まぁねー。お尻は軽くないけど、頭は軽い自信あるからね」


 憎まれ口を叩きながらも、来栖さんは自分から手を差し出して、朗らかに笑っていた。

 本当にこういう所はすごいと思うよ。

 水に流すって言って本当に水に流しきったんだから。

 器が俺にもったいないくらい大きい――。訂正、そんなに器が大きいのなら俺にはもうちょっと優しくしてくれないかなぁ!?


 こうして、無事俺達は飯野さんと仲直りしたのであった。


 その後、飯野さんは職員室に用があるからと、教室に戻る途中で別れ、来栖さんは俺を朝の時間に使わない理科室の前へと連れて行く。

 どうやら、二人きりで話がしたいらしい。


「ユウは優しいよね。全部許して友達になっちゃうとか。普通しないよ?」

「もしかして迷惑……だったかな?」

「ううん、だって、そういう所が好きだからね」


 そういうと来栖さんは少し背伸びして唇を重ねてきた。

 あまりにも突然で、目を瞑る暇もなかった。

 うわっ!? うわあ! 来栖さんの睫毛マジ長い、目綺麗、メチャクチャかわいいのがドアップ!?


「っ!?」

「でも、浮気しちゃダメだからね?」

「……来栖さんにこんなことされたら、浮気する勇気も甲斐性もないって」

「童貞だもんね?」

「そこはへたれって言って!?」

「あはは」


 来栖さんがケラケラと楽しそうに笑う。

 キスをして浮気しないでって言うために、わざわざ人がいない場所を選んだのかな。


「実は私、委員長のやったことに関しては、結構怒ってたんだよね。泰斗兄さん達に迷惑かけるかも知れないしさ。まぁ、怒ったら相手の思うつぼだと思って、犯人が分かるまでスーパービッチギャル子さんらしく振る舞っていたけどさ」

「そうだったんだ。でも、だったらどうして?」


 どうして、飯野さんを許せたんだろう?


「ユウのおかげかな」

「俺の?」

「うん、ユウが委員長の本当の声を見つけてくれなかったら、私は全力で委員長を折りにいったよ。自分がちやほやされたいから、他人の足を引っ張るなんて、むかつくから」


 うん、それが当然の反応だと思う。

 けど、その当然を俺が変えてしまったらしい。自覚はないけど。


「でもさ。もし、もしもだよ。委員長がユウのことをちゃんと知って、私より先にユウに告白していたら、ユウはきっと告白を受けたでしょ?」

「うん……」


 嘘をついても仕方無い。だって、来栖さんはもう全部知ってるんだから。

 俺は素直に認めた。そうなる可能性は十分にあったはずだから。


「もし、ユウが他の人と付き合ったら、私も委員長と同じようなことするかもって思ったんだ。自分の好きな人が他の人の方を向いてるって辛いもん。私を見て欲しいって思うし、相手の女の子を見て欲しくないって思っちゃう。そうしたら、その女の子の悪い噂を流すなんて考えが頭をよぎってもおかしくないなって」

「来栖さんも?」


「うん、私もだよ。委員長もそういう気持ち全部言ってくれて、謝ってくれた。私も影で聞いていたことも全部話してくれて、嘘は言っていないって分かった。ユウが委員長と話をしていなかったら、委員長の言葉を信じられなかったと思う。もし、信じられないままだったら、クラスで険悪な雰囲気になって、また違う虐めに遭わされたかも知れないし」

「そっか。俺も少しは役に立てたんだ。本当によかった。全部丸く収まって」


「うん、全部本当にうまくいっちゃった。最後まで本当に委員長が変わったか信じられなかったけど、ユウのおかげで信じられた。だから、自信を持って。ユウ君は十年前からずっと私を助けてくれる格好良い男の子なんだから」


 来栖さんはそう言うと、いきなり顔を俺の胸にぽふんと埋めた。

 え? 来栖さん急にどうしたんだ? 口調もいつもとなんか違う?


「来栖さんどうしたの?」

「……ユウ君が悪いんだからね?」

「え?」

「……今回のユウ君がちょっと格好良すぎて、……顔見られなくなった」

「えぇ!?」


 ま、またいつもの冗談ですか!?

 実はすっごくニマニマしてるとかじゃないんですか!?

 そう思わず敬語で疑ってしまうけど――。


「委員長と友達になるって言ってくれた時も、すっごくユウ君っぽいなって思った。まっすぐ委員長の気持ちに向き合って、受け止めちゃうのが私の彼氏なんだって思うと――すっごく嬉しい」


 あ、あれ? からかわれてない?

 来栖さんが素直に俺を褒めてる!?


「怖かった……怖かったよぉ……ユウ君。……っく、ひっく」


 あれ? もしかして、来栖さん泣いてる?

 あぁ、そっか。――そうだよな。

 今までずっと気を張っていたのが緩む姿なんて、誰にも見られたくないよな。


「うん、もう大丈夫。怖くない。もう大丈夫だから。よく頑張ったね来栖さん」


 くすんだ金髪の髪を撫でながら、ぎゅっと来栖さんを自分から抱きしめる。

 そうして、チャイムが鳴るのも無視して、来栖さんが泣き止むまで俺は彼女を抱きしめ続けた。

 その間、いつもなら言われそうなハグ童貞卒業なんてからかいはなかったけど、一応自分の中の童貞卒業リストにハグを追加しておいたのは内緒だ。



 なんてことがあったせいで、飯野さんは俺と来栖さんの共通の友達になった。

 んで、お昼に誘われて、誘いにのった結果が――。


「ちょっと委員長何してくれてんのさ!? ユウも何で普通に食べてるの!?」

「料理の練習始めたから味見して貰おうと思ってねー」

「でもでも、あーんする必要ないよね?」

「どうせだったらやってみたくて。恋人が出来た時の練習?」

「だったら、私が代わりにやって見学させてあげようか? ユウの彼女だし」

「必要無いよ。私だって高瀬君の友達だから、練習くらいなら頼んで良いでしょ?」


 俺を挟んで喧嘩する二人だった。

 さっきまでとっても良い話でまとまっていたんだけど、本当にどうしてこうなった。


「ユウ!」

「高瀬君!」


「は、はいっ!?」


「「どっちのお弁当が美味しかった!?」」


 いや、何か怖い二人のせいで味なんて分からないなんて言える訳もなく。

 俺は空を見上げてただただ、こう呟くのであった。


「どうしてこうなった」

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