童話な四つ子
「アンジー・メーアフェンであります。」
「ハインリヒ・メーアフェン...」
「セレーヤ・メーアフェンだよ~」
「我々3人をよろしくであります」
「2人には何かあったら、許さないから」
「お姉ちゃん、お兄ちゃん。何言ってるの?」
「セレ達...4つ子でしょ?」
とある家に、4人の子供が住み着いていた。
親はとうの昔に自殺しており、4人は幼いまま取り残された。
そんな身勝手な大人を嫌うせいか、4人は大人の援助を頑なに拒んだ。
しかし10にも満たない幼子達。何をするにも力が足りない。
だから大人を利用した。
子供の愛嬌を武器に様々な力を盗んだ。
重たい物を運ぶ力。刃物の使い方。機械の構造。
そうやって子供の為に出来上がったその家は、子供為の夢の場所へと姿を変えていた。
エプロン姿でご馳走をテーブルに並べる少女が1人。
「ハインツー!セレーヤ!ご飯食べよー!」
4人の長女、アンジー。
大人に近づき、情報を聞き出すのが上手い少女である。
アンジーの呼びかけに、2階に居たであろう少年が階段を降りてくる。
「セレーヤはまだ遊んでるのか?」
アンジーの弟、ハインリヒ。家族間ではハインツと呼ばれている。
手先が器用で、組み立てたりするのが得意な少年。
ハインリヒが降りてきて、数秒後に部屋の扉が開く。
「いい匂いがする!!!お魚かな!!!!」
力仕事が得意な3人目。女の子のような男の子のような容姿。
アンジーが盗んだ情報で、必要に応じて木を切ったり、動物を狩ったりしている。
ア「そうだよー、久しぶりに大人から貰ったんだ♪」
ハ「まったく...どんな会話したら魚貰えるんだよ...」
セ「わーい!!久しぶりのお魚だあ!!!!」
楽しそうにはしゃぐ3人。
ア「ほら、ピーター。そろそろ起きて。」
「んぁ...」
ずっとその場で眠っていた少年が1人。
アンジーの呼びかけで目を覚ました。
「なに?ご飯出来たの?」
彼の名前はピーター。
4人兄弟の末っ子。
出来損ないの足でまといである。
4人は同じ日に生まれた4つ子。
親が死んだのは4人が9歳の時。
それから3年、4人は強く生きた。
現在12歳を迎える4人は、その年からとても考えられない技術と力を身につけていた。
ア「それじゃ、私は情報調達に行ってくるであります」
セ「いってらっしゃいであります!!!」
アンジーは夜に出かける。
夜は危険だが、日の出てる時間より多くの人や物が動くため、情報を集めるなら夜が都合のよいのだ。
セレーヤの腕力にこそ劣るが、アンジーも太刀を振り回す事が出来る。小さな外見に油断する大人も多い。
アンジーがお出かけに行った。
「アンジーはちゃんとしたお姉ちゃんだ。明るく...強く...皆を支えてくれる...素敵な人だ...」
セ「ハインツー!また何か作ってるのー?」
ハ「今度はゴーグルっていうの作ってる。」
セ「なんに使うのー?」
ハ「目に水が入らなくなるんだ、皆にも作ってやるよ」
セ「本当!!?水の中で目が開けるの!!嬉しい!」
この家はハインリヒの作り出した物で溢れかえっている。
悪い大人が来た時は、彼の考案したトラップで大人を追い出した。
「階段からナイフ飛び出したり、天井からカエル出したり...すごいよねぇ...僕の心臓用に鉄の帯でも作ってくれないかなぁ...」
セ「ピーター?大丈夫?」
「...どうしたの?僕はいつだって何一つ大丈夫じゃないよ」
セ「そんなことないよ。ピーターが大人を退けてくれるから、セレ達は毎日楽しいんだよ?」
「...僕らの世界に、大人は要らないからね」
セ「...今日はもう寝ようか」
「セレーヤは強いなぁ...周りに凄く気を使ってくれるけど...いつかきっと...マーメイドのように僕らの元から離れて行くんだ...」
セ「ピーター?」
「...寝るよ」
そう言って、ピーターはベットへ向かった。
ベットの中で、ピーターは考えた。
僕はなんでここに居ることが許されてるんだろう。
3人が優しいからだよね...わかってる...
けど...ここに大人が近寄らない...
その原因が、パパとママを死においやった僕にあるのもわかってる。
それなのに...許してくれる...
暴力の絶えない大人から、解放してくれたヒーローだと、思ってくれている...
けどね...毎日辛いんだ...僕...
「狼に負けない赤ずきん...
鉄の帯が必要無いハインリヒ...
皆に元気を与えてくれるマーメイド...
...親殺しのピーターパン」
ピーターには3人のように誇れるものがない。
会話は続かないし、不器用、力もない。
「...捨てられたくない」
ピーターは足でまとい
「...いつまでも...いつまでもこのネバーランドに」
.....................
.........
...
ピーターは気づいたら家の屋根に昇っていた。
セ「ピーター!!?」
ピーターを追いかけてきたセレーヤが悲鳴を上げる。
「...僕は...今の状況が...いつまでも続けばいいと思ってる」
セ「降りて!!!危ないよ!!」
セレーヤも屋根に登る。
「...僕は、いつまでもここにいるんだ。」
ピーターの右足首にはベルトが着いていた。そのベルトは、屋根についてる、ハインツの作った屋根行きの為のハシゴに絡まっていた。
「...成長したくない」
その言葉を呟く前に...ピーターは足を滑らせた。
ピーターは目元にうっすら涙を浮かべた。
セ「ピーター!!!!!!!!!!」
ピーターの後を追いかけようと身を乗り出すセレーヤ。
セレーヤも屋根から滑り落ちて行った。
時間が経ってアンジーが帰ってきた時。
玄関の前に2人の兄弟がいた。
片方は地面に叩きつけられ、痛そうに呻いている。
もう片方は右足首のベルトのせいで、宙吊りになっていた。
かなり時間が経っていたのか、宙吊りの...ピーターのほうは、見るも無残なありさまだった。
その後、急いでアンジーはセレーヤを病院に連れて行った。血まみれの兄弟を背中に背負って走る経験は、アンジーに血の恐怖を植え付けた。
セレーヤが叫んだにも関わらず、気付かず作業に没頭していたハインリヒは、自ら全ての罪を背負い、監獄に身を投じた。
なんとか命を取り留めたセレーヤは、脳が麻痺しているのか、ピーターが死んだ事を認識出来なかった。
ハインリヒが囚人となった為、アンジーとセレーヤはハインリヒから離れないために看守となった。