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短編

転移/転生トラックの逆襲。あるいは、異世界帰還者でいっぱいの地球がやばい。

作者: (=`ω´=)

 神々だって、間違うことがある。

 いや、より正確を期するのならば、間違うからこそ神であるといえる。

 嘘だと思うのならば、世界中に伝わるあやゆる神話を猟渉してみるといい。

 人智を超えた能力と通常の人間以上の幼稚さ、蒙昧さを兼ね備えた存在。

 それこそが、神性の証といえる。

 でなければ、そもそもこのような事態にはなっていないわけだが。


「最近思うんだけどよ。

 例のアレ、転生とか転移とかさせたやつら、増えすぎじゃね?」

「ああ、そうかも」

「数が多いだけならばまだしも、最近では増長してやりたい放題のやつらも増えたからな」

「基本的に、自己中でまわりの迷惑や自分らの言動の長期的な影響を考える頭のないアホばかりだからな」


 神々の世界にも、人間で社会でいうところのサロンとか酒場のような、息抜きのための社交場があると思っていただきたい。

 あるとき、多くの世界出身の大勢の神々が非公式に集まるそんな場所で、そんな会話が交わされた。

 その場にいあわせた神々も、当然のごとく酩酊をしていて正常な判断力を欠いていた状態であった。


「増えすぎたというか、便利に使いすぎたんだよ」

「どうせ一過性の流行に過ぎないのだから、放置しておけばいい」

「っていうか、自分たちのミスの尻拭いさせて隠蔽するためとか、あるいは単純に面白がって便利な能力を持たせたりするから、やつらも増長をするのよー」

「自分のミスを隠蔽させる方はともかく、面白半分に有限寿命者を焚きつけていじるのは歓迎できない風潮だな」

「なにを騒ぐ必要がある。

 多少、増長したとしても千年も生きられない連中じゃないか」

「さよう。

 しばらく放置をしておけば、いずれは滅ぶ」


 しばらく、茶化す者、冷静な意見を述べる者など、神々はそれぞれのスタンスで好きなことを活発にしゃべっていた。


「増えすぎたっていうんなら」

 その流れを変えたのは、ある神の一言であった。

「適当に間引けばいいんじゃん」

「それはいいが、どうやって?」

「やつら、無駄に強く育っている者が多い。

 その世界の理の中では、最強に近い存在になりおうせている者も少なくはない。

 世界の理を保持したままやつらだけを排除する都合のいい方法なぞ、そうそうないと思うぞ」

「その割に、大勢のそいつらに共通する天敵のような存在はあるんだけれどものね」


 というわけで、大勢の神々はよってたかって念入りに、そいつら、すなわち地球からの転移/転生者にとっての強力な天敵を新たに創りあげた。

 それはもちろん、「トラック」のことである。


 こうしてある時点から、どこからともなく現れたトラックによって、あまたの世界の転移/転生者が襲われるという事件が頻発することとなった。

 そこが戦場であれ農村であれ都会であれ大海原であれ未来であれ過去であれ閨や厠の中であれ、神々謹製のトラックは容赦なく転移/転生者を跳ね飛ばし、そのままその者が元いた世界へと強制的に送還をした。

 なにぶん神々のみわざであるからして、余分な前兆などまるでなく、大勢の転移/転生者がなす術もなくトラックに轢かれてそのまま姿を消す。

 覇王も勇者も魔王も吸血鬼も統治者もハーレムや逆ハーレムの主も冒険者も村人も商人も旅人も、大勢の神々が協力をしてしつらえたそのトラックに前では、等しく無力だった。

 そうした転移/転生者の多くはその世界において大きな影響力を持つ存在になっていることが多かったので、唐突に該当する転移/転生者を失った世界の多くは大きな混乱に包まれることになったが、なにしろ神々というのは基本的に気まぐれで無責任な存在であったので、一向に意に介さない。

 また、そうした転移/転生者を直接的に殺害ないしは存在を抹消しなかったのは、その者を世界を超えて召喚した神々へのいい逃れる途を残しておきたかったからである。

 神々の世界においても社会性というものは存在しており、仮に複数の神々による犯行であるとはいっても、相手の面子を正面から潰すことは避けたかったためであった。


 そうしてトラックによって強制送還をされた転移/転生者は最終的に三千二百余名にものぼった。

 結果としてそれらけの数の多種多様なチート持ちが前後して地球という世界に戻ったことになる。

 その三千二百余名のうち、二千名近くが陸地から遠く離れた海洋の真ん中に出現し、空を飛んだりテレポーテーション的な能力を持たない千七百名近くの転移/転生者がそのまま溺死をした。

 不親切なことに、例のトラックは地球という世界に強制送還をする機能はあっても、その移送先はランダムであり、地球のどこに出現をするのかは完全に運任せであった。

 かろうじて陸地に出現したものの、極地とか砂漠とか森林とか、とにかく近くに人里がない場所に現れた者が別に三百名ほど。

 これらの者からは死傷者はほとんど出ず、そのかわり、彼らが人界に姿を現してなんらかの影響を及ぼすまでに数日から数年のタイムラグが生じることになった。

 残りの二千二百名ほどがどうにか人間が居住をする場所に出現したわけだが、彼らは彼らで別の危難が待ち受けていた。

 なにしろパスポートもビザもない状態で、唐突に出現している。

 大抵の者が現地の警察に相当する組織にお世話になり、残りの少数は言語や交渉術関係のチートを駆使してどうにか身の証を立てた。

 ずれにせよ、そうした転移/転生者というのはだいたい思慮に欠けていたので、長期的に見るといずれはなんらかのトラブルをみずから起こすことになるわけだが。

 犯罪組織やテロ組織、反政府組織に加担をする者、その逆に体制側に取りいってそうした者たちを弾圧する側にまわる者などが続出し、各地で治安が乱れて紛争が激化した経緯は、皆様もすでにご存知の通りである。

 なにしろチートを呼べるほどの能力を持つ者たちが好き勝手暴れ、あるいは敵対してまわるものだから、周囲への悪影響は計り知れないものがあった。

 現在、われわれがどうにか第三次世界大戦になるまでの混乱に至っていないのは、一部の転移/転生者が真っ先に世界中の核兵器を破壊して回ったからだといわれている。

 大戦には至っていないが、そのかわり、小さな紛争が休む間もなく頻発し、全世界的に生産ならびに物流ラインが機能しなくなり、乏しくなった物資を争奪するためにさらに争いが起こる。

 われわれは、そいう負のスパイラルの中のただ中にいる。

 一部の生産系チート持ちがどうにかしてその負のスパイラルに抵抗しようと試みているようだが、彼らの技能を持ってしても世界中で必要とされる物資をすべて生産し、必要な場所に届けることは不可能であろう。

 なにしろ、今では全世界の七割以上の場所でライフラインがまともに機能していないという。


 ある論者によると、すでに人類は文明レベルを維持できるラインを超えて衰退をしている最中であり、あとは絶滅を待つだけの身であるという。

 いくら優れた能力を持つ個人がいたところで、マスに対する影響力を考えたら、たいしたことはできないのが現実であった。

 むしろ、そうした転移/転生者は、自身の能力に執着するあまり、無用な摩擦を生んで衰退を加速する傾向にあった。

 神々の無責任さに起因する現在の地球の様相もまた、一種のハルマゲドンの変奏曲であるといえる。

 彼らの神々は、その気まぐれにより、直接手をくだすことなくこの地上に滅びの種を蒔いた。

 そしてわれわれ人類は、この終末に対して抵抗する術を持たない。


 世はすべてことがあり過ぎる。



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― 新着の感想 ―
[一言] 何これー変なのーw
[良い点] 更新乙す [一言] 神話の時代から言われてるが、やっぱり神様は碌でもネーナ!! (人間も碌でもないとは言っていない
[一言] 強制送還をする昨日はあっても 機能では?
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