やってきた男
道を歩いていると、突然目の前に現れた見知らぬ男が、私を睨みつけて言った。
「おい、お前に言われた通り来てやったぞ」
しかし、そう言われた所で私はこんな男など知らない。
「すいませんが、どちら様ですか? 誰かと間違えているようですが…」
「いいや、確かにお前だ」
男からは怒りを抱いている様子が感じて取れた。私は自分の気づかぬ内に、人の怒りを買っていたのだろうか…。
確認の為、しっかりと男の顔を見て自分の記憶を辿るが、やはり男に心当たりはなく、どこで会ったのかすら思い出せない。考え込む私に、業を煮やした男は信じられない言葉を口にした。
「まあ、お前が知らないのも無理はない…。俺は未来からやってきたのだ」
「未来から!?」
「そうだ。喧嘩で揉めた未来のお前に一昨日来やがれと言われ、タイムマシンに乗って二日後から来たのだ」
この状況に立たされて、納得のいく人間がいるのだろうか。私は反論する。
「むちゃくちゃな、そもそも未来の自分の発言など責任が持てるわけがない」
「言い訳するな!! 自分の発言だろ!!」
それならばと一つ、私は思い付いた提案をしてみた。男の言葉が事実だとして、これは完全なとばっちりである。
「わかりました。では私を二日後の私に会わせてください。一言言わないと気がすまない」
こうして私は、男と共にタイムマシンで二日後の私に会いに行った。
自宅から出てきた私を呼び止め、私は私に文句を言う。
「おい、未来の私!! お前が余計な事を言ったせいで、面倒な事に巻き込まれたぞ!! どうしてくれんだ!!」
だが、未来の私はとくに驚きも悪びれもせず、私に冷たく言い放った。
「何だ、過去の私か…。過去の私の事なんざ知った事か」
「なんだと!! 自分の事だろ!! 過去を敬え!!」
「やかましい!! 私は未来に生きてるんだ!!」
私の言葉に腹が立った私は、思わず私に掴みかかった。取っ組み合いの喧嘩を始めた私達を見かねたタイムマシンの男が仲裁に入る。
「おいおい、喧嘩なんか止めろ」
「うるせぇー!! すっ込んでろ!!」
「そうだ!! あっち行ってろ!!」
「なんだと!!」
とうとう喧嘩が私二人とタイムマシンの男の三人となったところへ、新たな人物が現れ言った。
「お取り込み中すいません。あなた方に言われ、二日後から来たんですが…」
「うるせぇー!! 一昨日来やがれ!!」




