興味
そこは不思議な空間だった。空間全体が黒に覆われていたし、白にも覆われていた。一部分が金色だったりもしているし、他の色も見られたのかもしれない。
また、とても熱くとても冷たい、ともかくそこは、色や温度や形、匂いや味、はたまた時間という概念が存在するし、存在しない、そんな空間だった。
平べったい円盤型の宇宙船が宇宙空間で停止している。その宇宙船から一匹の宇宙人が姿を現した。触手がたくさんあり、人間とは似ても似つかない、例えるならそれはクラゲといった所だろうか。
宇宙クラゲは独り言を呟いた。
「やれやれ、酷い目にあった。パピ星に行く途中でまさか時空間の歪みに巻き込まれるとは…。ここはどこなのだ?」
宇宙クラゲはそこで、自分の目の前の光景を見て「はて?」と思う。そこには今まで見た事のない不思議で異様な空間が広がっていたからだ。宇宙クラゲは無数にある触手の一本を、恐る恐るその空間に伸ばし触れてみた。ヒヤリととても冷たかった。今度は別の触手で別の空間部分に触れてみる。不思議と冷たさはなかったが、ピリッと電気の様な衝撃が走ったので、急いで触手を引っ込めた。
その空間は先に進めそうな気もしたが、それより先には進めそうもない、そんな気もした。
「ふむ、不思議なものだ。さて、それよりも…」
と、宇宙クラゲはあまり興味がなさそうに呟き宇宙船に戻ると、もと来たであろう方角へ向けて宇宙船を発進させ去っていった。
広大な宇宙の史上において、宇宙クラゲは初めて『宇宙の果て』に到達した宇宙人だったのだが、興味がない本人にとってそんな事はどうでもいい事だった…。