表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インセクト・ブレイン  作者: 善信
36/188

36

………………………………ん。

意識が覚醒しつつある。いや、体はまだ寝てるけど、頭だけが覚醒していると言うか何と言うか……まぁ、寝惚けている状態ってやつか?

数秒後には肉体も目覚めるだろうけど、フライング気味に意識だけが覚醒するのは、寝る前の戦闘で気が昂っていたせいだろうか。


……ふと、体を動かそうとして、全く動かない事に気づく。

おお?これは金縛りってやつか?すげー、初めてなったよ。

脳だけ覚醒した状態の時に金縛りになる事があるとは聞いたことがあるけど、実際になるもんなんだな。でも、体が動かないというよりは、体に力が入らないって感じか?


どうせすぐに動けるようになるだろうとタカをくくり、目を閉じたままこの珍しい体験を楽しむとするか……などと考えた時、俺は体にのし掛かるような違和感に気が付いた!

……誰かが俺の上に乗ってる?

そう気が付いた時、一気にゾワッとした悪寒が背筋を走る!

ヤバイ!めっちゃ怖い!さっきの余裕から一転、恐怖によって目を開ける事が出来ない!

頭に浮かぶのは、ホラー映画なんかで見た怨霊のイメージ。

今、目を開けたらそんな恐ろしい奴等と見つめ合う事になりそうで、とてもじゃないが目を開けて状況確認をする気になれなかった。

ごめんよ、ホラー映画の主人公達。今まで「金縛りで目を閉じたまま引っ張るなー」とか思ってたけど、この状況は確かに怖くて目が開けられないわ。


金縛り+誰かがのし掛かってる?な状況で狼狽えていると、何やらモゾモゾと体の上で動く感触が伝わってきた。

むうううっ!怨霊やろう、俺をどうにかするつもりか!首を絞めるとか、どこかに引っ張りこもうとかする絵面が浮かび、このままではいかん!と悟った俺は、意を決して目を開ける事にする!

目の前に怨霊がいたら頭突きをかましてやるわ!


一人で昂り、目を開けようとしたその時!

ムニュッとした柔らかい物が俺の体に押しあてられる感触が伝わってきた。

……なんだこれは?

さらに二度、三度とムニュムニュとした感触が俺を襲う。その心地よい感触に集中しろと本能が叫び、理性も手放しでそれを支持した。

男として逆らえない、逆らいたくないその感触を堪能していると、耳元にため息のような甘い吐息が漏れるのが届く。……って、おい、この声は。


カッと目を見開く!

そして、俺の視界に飛び込んできたのは、うっとりとした表情で俺を覗きこむラービの姿だった。


「ようやく起きたの」

ひっそりと声を抑えて、ラービは俺の耳元で囁く。耳にかかる吐息に少しゾクッとするも、いつのまにか金縛りの解けた俺は、慌てて上体を起こそうとする。

「待て一成、もう少しこのままでおれ」

そう言うと、ラービは俺の動きを押さえるように抱きついてきた。

適度な重みと柔らかさに、俺は再び身動きが取れなくなる。……まぁ、下半身が元気になってるために、下手に動くとそれがバレるから動けないというのもあるが……。

雰囲気に流されそうになった見境ない自分に反省し、「ある意味、自分の分身であるラービに欲情なんかしない!」と偉そうな事を言ったからには、「悔しい……でも、感じちゃう」な今の状態を知られるのは、格好悪すぎる。

静まれ、俺の下半身よ……。


「もっと楽にして良いのだぞ?体の力を抜くがいい」

再びラービが耳元で囁く。その囁きにまたも荒ぶりそうになる下半身を必死に理性で押さえ込んだ。

大体、声もそうだが、視覚的にも今のラービは健全な男子には危険過ぎる。

俺にのし掛かるラービの姿は、いつもの制服姿はとは違い、ピンクと黒を基調とした可愛らしくも妖艶な下着姿だ。

どっからそんな下着を持ってきたとツッコミたい所だが、よく考えればラービはその体表面を変化させて服っぽく見せてるたけだったから、下着姿もお手のものだろう。

下手に動く事も出来ずにいると、密着しながら這い上がるようにしてラービの顔が近づいてくる。


いかん!このままでは、またも雰囲気に流されてしまう!

近づいてくるラービを止めようとしたが、時すでに遅し。ラービは俺の目と鼻の先、文字通り息のかかる程の間近で俺を見つめていた。

やだ……キスされちゃう……。

「普通、逆じゃねぇか?」とか、「男がそんな反応してもキモいだけぞ!」など、妙に冷静な部分が自分に語りかけてくるが、ラービの醸し出す攻めの雰囲気に呑まれ、身動きがとれない。

やがて、ラービはさらに近づき……コツンと熱でも計るように、俺の額に自分の額を当ててきた。


予想外の攻撃に呆気に取られていると、突然、頭の中に声が響いた!

『ふむ、やはり一成と触れ合うと念話がまた使えるようだの』

その響きに驚きの声を上げそうになるも、ラービの人差し指で唇を押さえられ、それを断念する。

いや、それにしてもなんだか念話で話すのは久しぶりな気がするな。普段、脳内組手をしているときは、自分(プレイヤー)自分(キャラ)を操って格ゲーでもやってるような感覚だったし、会話もチャットでのやり取りみたいな感じになっていたから、ダイレクトに思考で会話する感じはなんとなく懐かしい。


『突然で悪かったの、一成。本来ならヌシがその気になってワレに手を出してくるのを待つつもりだったのだが、今はちと急ぎ密談をしておかねばならぬ故に、寝込みを襲わせてもらった』

は、はあっ?一向にその気になどなっておりませんが?下半身が荒ぶってるのは、ただの生理現象なんですけど!

『フフ……わかった、わかった。まぁ、焦らすのも一つのテクじゃからな、とりあえずはそれで良いわ』

精一杯、虚勢を張ってはみたが完全に見透かされていて、さらに軽く流されるあたり、余裕の差があったようで少し悔しい……。

まぁ、それはそれとして、念話を使った急ぎの密談とは、一体何なのか……?


『今、ワレらは監視が強化されておる状態だからの。故に今後の身の振り方について相談しておかねばならんのだ』

監視?一体誰に?

まさか、バロストみたいな奴の使い魔的な物が他にもまだこの近くにいると言うのか……?

『違う違う』

何を的はずれな……と言ったニュアンスを含んで、ラービが否定する。

『ワレらを監視しているのはもっと近い人物……ダリツ達じゃよ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ