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インセクト・ブレイン  作者: 善信
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くっそう、マジか!

マジで不死身なのか!

悪態を突きながらも、攻撃の手を休める事は出来ない。

イスコットさんやマーシリーケさんにも疲労の色が見えてるし、なんとか打開策を見い出さないと。


この手の不死身キャラを倒すには……


A.封印する

B.再生能力を使いきるまで攻撃を加える

C.一撃で再生不可能なレベルにまで粉々にする


こんな所か?

とは言え、まずA案は無いな。そんな魔法とか知らないし。

次いでB案。現在進行形でやっているが、終わりが見えない。

そうなるとC案か……。

だが、そんな手段が有るのか?

あのタフネスさと頑強さを兼ね備えた怪物を、一撃で倒す手段が……。


『無くはない』

不意に、迷う俺の頭の中でラービがハッキリと言い放った。

なんだって! それは本当かい?

確認すべく、俺は精神世界で彼女と向かい合う。

『これじゃ。この技が当たれば倒せぬ敵などおらぬ』

確かめる俺にラービが提示したのは、とある格闘漫画のワンシーン。

ああ、確かにこれなら……って、馬鹿!

お前、これ漫画の話じゃねーか!

フィクションと現実を一緒にしちゃダメでしょ!


しかし、ダメ出しする俺の顔をガッチリと両手で押さえ、ラービは真っ直ぐに俺を目を見つめてきた。

『イメージせよ、一成。ヌシがこの世界に来てからやっている事と大して変わりはないぞ』

言われてみれば確かにそうだ。

ずっと漫画やゲームで知った技を見よう見まねで使っていたんだからな。

だが、そんな不確かな技に文字通り命を賭けるなんていうのは……。


即座に踏ん切りがつかずにいると、ラービが額をぶつけるように顔を近づけてくる。

『ビビるな……とは言わん。バロストはあの時の地魔神(ヤーズイル)以上の化け物じゃからな』

その言葉に初めて魔神と戦った時の事を思い出す。

限定解除リミット・オーバー』で一時は攻めまくったが、魔神の体力を削りきれずに限界を迎え、成す術も無くなったあの時……。

目の前でラービを食い殺され、敵への怒りと自分への無力感で一杯になったあの感覚……あれはもう二度と味わいたくはない。


『じゃが、今のままではまたそうなるぞ』

……解っている。

『紙のように薄い確率かも知れんが、逆転の可能性がある現状の方がまだマシよ。そうであろう?』

それはそうだ。

だけど、失敗したら……そう考えると手が震える。


そう……内心、目を背けていたが自覚してしまうと認めるしかない……俺は怖いんだ。

はっきり言って、ヤーズイルとの戦いは俺の中で相当なトラウマになっていた。

限界突破オーバー・ブレイク』という魔神を越える新しい力を得て、あの時の心の傷に蓋をすることができたけど、今のジリ貧な状況が再び傷口を広げてきている。

ラービの言う通り一か八かでも可能性があるだけマシだと解っていても、なお安全策を求める弱さが振りきれない。


すまない、ラービ。こんなビビりが俺の本性で……。

ごちゃごちゃと打開策を考えていながらに、いざとなると動き出せないとは……。

精神世界で俯いて視線を落とす。

自分が情けなくて、とてもラービの顔を正面から見据えてられなかった……。


しかし、ラービはそんな俺の頭をそっと胸に抱く。

そうして元気づけるように撫でながら語りかけてきた。

『ヘタレでもビビりでも大丈夫……ヌシならそれを乗り越え、立ち上がれると信じておる』

なんでだ……なんでそんなに俺を信用できる……。

俺の呟きに、フフンと笑って彼女は一言。

『そりゃあ、ワレが惚れた男じゃからな』

……なんだ、そりゃ。

あまりにも根拠のない自信に溢れたその一言に、思わず吹き出しそうになってしまった。


『なぁ、一成。自分に自信が持てぬなら、ヌシを信じるワレを信じよ』

言われて俺は顔を上げた。

そうして、俺を見詰めるラービと目を合わせる。

『ヌシなら絶対にやれるとワレは信じておる。だから立ち上がれ。そして、さすがワレが惚れた男よと自慢させてくれ』

それに、童貞で死にたくはあるまいと、ついでのように付け加える。


ったく、好き勝手言いやがって……だけど、お陰で覚悟は決まった!

まったく、いい女だよこいつは。

そんな女にここまで言われて、奮い立たなきゃ男じゃねぇよな!

ラービから一旦離れ、今度は俺が彼女を抱き締めた。


『行こうぞ、一成』

ああ、やってやるぜ!

腹が決まった途端に闘志が湧いてくる。

『御主人様!』

いつのまにか、レイと彼女の中の骸骨兵達も俺達を囲んでいた。

『参りましょう。我らの力で、あの化け物に目にもの見せてやりましょう!』

ふっ……なんとも心強いじゃないか。

ああ、行こう。そして一発かましてやろう!

……でも、その前に一つ聞きたい。

ひょっとして、俺とラービとのやり取りって、全部見られてた?

その問いにレイ達は答えない。

しかし、やつらの泳ぐ視線(骸骨の癖に)が物言わずとも語っている。

ぐぬぬ……なんとも恥ずかしい所を見られてしまった……。


──意識が現実世界に戻ってくる。

精神世界でのやり取りは随分と長く感じたが、実際には一秒も経っていなかったようだ。

今だなおバロストと激しい攻防を続けるイスコットさんとマーシリーケさんに、俺は通信イヤリングを通して語りかける。

一瞬だけピクリと反応した二人に、俺は必殺の一撃をバロストの野郎に叩き込む為の手順を伝えた。


割りと無茶とも言える俺の提案に、二人は即座に同意してくれる。

うーん、さすがだな。

博打的な一手なのに、それしかなさそうだと判断すると素早く乗ってくれる彼等の思いきりの良さ……あれは見習わなければ。


「っしゃあ! 行くぞラービ、レイ!」

『うむっ!』

『はい!』

呼び掛けると、二人の力強い返事が返ってくる!

「コオォォォ……」

その声に背中を押されて、俺はまず空手の呼吸法『息吹』を使って呼吸を整えていく。

それと同時に全身鎧に変化が現れ、手甲と脚甲で両手足のみを包み護る形へと姿を変えていった。

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