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与えられたチート能力がチート過ぎたのですが・・・・・・

前回は異世界チートは醍醐味なので、求めてみました。


 指輪を装着した健太が実践すること、それは当然の如く、幼女から与えられた能力のテストだった。

 半ば半信半疑というか、装着するまでは信用など欠片もしていなかった。

 しかし、装着した瞬間から、身体には激変が起きていた。


 別にどこかのオラより強い奴が系統の作品のように、身体が筋骨隆々のマッチョマンになったわけではない。

 もちろん全身から溢れるばかりの金色のオーラとか、青や赤の蒸気が噴き上がったわけでもない。


 すぐに変化に気が付いたのは視力だった。

 視力というのは、目が良い人ならば理解が早い事と思うが、遠近両方においての拡張能力の有無だ。

 遠距離を見れば、遠くにある豆粒まで見える事や、近距離を見れば、ダニの動きや毛穴の角質まで見えるというような、そういったもののことだ。


 そして、その視力がどうなっていたかといえば、見ようと思えば、地平線の端に見える山の尾根に生えている木々の葉や、その葉にくっついている虫の動きまでが鮮明に見えた。

 また、近距離ならば、自分の手の平をじっと見ていけば、ダニよりも遥かに小さな微生物や細菌のような生き物が付着している事まで見えてしまった。

 そんな物が見えてしまえば、頭を振って気持ち悪さを打ち消すしかなかった。


 聴力もまた強化されていた。

 ただ、聴力も強化されすぎれば、常時音の聞こえが良くなってしまい、近くで大きな音を立てられた時に前後不覚に陥る事もある。

 それを警戒していた健太ではあったが、そうはなっていなかった。


 聴力は健太が意識を傾ければ傾ける程に、聞こえる音が増えていく。

 それに、意識的に聞きたくない音を念じれば、その音をシャットアウトすることも容易だとわかった。

 例えば、目の前の幼女から聞こえてくる衣擦れの音や、心臓の鼓動や、自分の血液が流れる音、どうでも良いと思える音を除外していくことが出来た。


 だから、どの程度遠くかは定かではないが、どこかで誰かが生活している音や、話し声なんかも聞き取れていた。

 嗅覚も視力と聴力と同様の結果だった。意識すれば感じ取れるし、意識の方向性を変えれば感じなくもなる。


 皮膚の感覚は、強化されると鈍くなるのかと思いきや、きちんと両手を擦り合わせれば熱さも感じるし、息を手に吹き付ければ冷たさも感じる。

 ここまで理解したら試したくなるのは、やっぱり腕力だった。


 幼女の後方に広がっている森に生えている木が目に止まった。

 目の前に生える木々は、どれもこれもが樹齢は一体何年だろうかと思うほどに太いものばかりだった。

 幼女の脇を通り抜けて、森と草原の境目に生えていた木に両腕を回してみると、両手が触れ合うことはなかった。それだけでも太さは実感出来た。


 さて、そんな木の前に立った健太は、腰を深く落とした姿勢で拳を握りしめて、木の幹中心部に向けて、正拳突きを放った。

 その瞬間、ビリィッという音と共に、右手の袖が一気に裂けて、スコンという何かが抜け落ちるような音がしただけで、木が倒れるということもなかった。

 そこは木がバキバキと裂けて倒れる所だろうと思ったのだが、そうはならなかった為に、健太はがっくりと肩を落とした。


「力を試したくなるっていうのは、わからなくもないけど、音速の壁を突破する行動をする時は全裸でやるか、壊れない強度の衣服を着用した方が良いと思うよ。まあ、今更なんだけどさ」


 健太が幼女の方を振り向くと、幼女は健太の方など全く振り向きもしないで、何が起きたのかを把握していたかのような忠告をした。


「え、じゃあ、俺がさっきやった正拳突きが音速を突破していたっていうのか。でも、それだったら衝撃を受けた木が倒れるぐらいになっていてもおかしくないか。それとも、この目の前の木が音速の壁を突破するような攻撃を受けても倒れないぐらいに頑丈だったっていうことか」


「ん、逆よ。あまりにも極端な程に威力の高い打撃を一点に受けたせいで、衝撃が全体に及ぶ前に背後へと突き抜けちゃっただけ。打撃を放った辺りの部分に穴でも開いているんじゃないかな」


 幼女に言われた健太は、自分が正拳を突いた場所付近を凝視してみると、拳の大きさより少し大きめの穴が出来ており、木の反対側の風景が見えていた。

 風景といっても、同じような木が生えているだけだったが。


「じゃあ、木を素手で倒すのなら手加減しろ、ってことか」


「どうして素手にこだわりがあるのかわからないけど、一点集中型の打撃をする必要もないでしょ」


 健太の疑問に答えるように、幼女はトコトコと健太が穴を開けた木の横に生えている木の前まで進むと、左手を木の横に当たるように伸ばしてから、木の右へと歩いた。

 ただ、幼女が木の横を歩く。


 それだけの行為で、幼女の左腕は木の幹にずぶずぶと埋まり、水平に木の幹は切り取られていた。

 後は、幼女が切り取られた部分の幹に両足をかけて、両手の平を木の幹に当てたまま立って、よいしょとばかりに手を伸ばして押してやれば、木はバキバキと折れて地面に倒れた。


「まずは、倒したい木に腕で切り込みを入れてから、その切り込みに足を引っかけて、後は軽く押してやれば、自然に倒れるでしょ。もしくは、腕をぐるりと一周回してやれば、幹の中心部分だけが残るわけだから、より楽に倒せるでしょうね。後は頑丈な剣でも斧でも切れるだろうし、チェーンソーでも使う方が利口だと思うよ」


 健太はあまりにも非現実的な光景に、一瞬なれど呆けてしまった。

 年端もいかないように見える子供が特に力を入れる様子もなく、木を切り倒すということに理解が追いつかなかった。

 それでも、ここが異世界であり、この幼女に見える何かが自分を召喚した一派であることを思い出して、強引に自身を納得させた。


 それじゃあ、幼女がやったような事を自分も出来るのだろうかと健太は、穴の開いた木に人差し指を伸ばして、そのまま押しつけてみた。

 すると、人差し指は突き指になることもなく、木の表皮をパキパキと音を立てさせながら、木の幹内部へと沈み込んでしまった。

 それを引き抜いた健太は、今の状態で全力を使って身体を動かすというのは、とても着ている服的な意味で危険な気がしてきた。


「一応、この身体強化って、どんなLvなんだ。何か不用意に力を使ったら不味い気がしてきたんだが」


 草原の方へと戻っていた幼女に尋ねると、幼女は小首を傾げて逆に聞き返してきた。


「ケンタが元々どれぐらいの身体能力だったか知らないから、どこまで何が出来るのかはわからないよ。ただ、その指輪に施した上昇値は一万倍かな。でも、人の身体能力って、例えばだけどさ。一メートル垂直ジャンプ出来る人が、二倍の身体能力を得たからって二メートルジャンプ出来るわけじゃないよね。


 単純な倍計算で筋肉や骨格が作用出来る筈がないからさ。でも、ある程度は力加減を考えて動いた方が良いし、そもそも今のケンタは、特に身構える必要もなく、余程の相手でもなければ、どうとでもいなせる筈だよ」


 身体能力一万倍とか、どんなチート能力だよ、と突っ込みを入れたくなった。

 確かに倍々計算となるような単純な身体能力の引き上げにはなっていないだろうが、今までの状態が身体能力一桁のゴミだったとすれば、それが四桁か五桁になっているということだろう。


 身体能力の実践は大体終わった。

 次はやっぱり、メニュー機能の実践だ。

 これは、幼女からも自分の想像力や妄想力なんかで適当に頑張って頂戴と言われた以上、イメージを膨らませた。


 目の前に四角い枠があって、それが半透明の状態で浮かんで、その中にメニュー項目が浮かぶイメージだ。

 すると、空間からじんわりと半透明の白い枠が滲み出るようにして現れると、真っ黒い字でステータスとアイテムボックスの項目が出来上がっていた。


 その項目に自分の指を這わせてから、クリックするようにタップすると、メニューウィンドウの左側にステータスウィンドウが浮かんでいた。

 そして、その自分のステータスウィンドウの情報を見た。


 名前:赤塚健太

 種族:人

 年齢:24

 能力:Lv1、生命力255000・魔力330・筋力320000・敏捷力432000・知力753000・体力255000

 スキル:現実逃避Lv10・妄想力Lv10・ご都合主義Lv10・身体強化Lv1000・解析・時空間収納・メニュー


 こう、ステータスの状態をじっと見つめては、何度か見返してしまう程に凄まじい何かを感じた。

 魔力が低いというのは、最初から指摘を受けていた通りだと言えた。

 能力が現在のLv1というのは、今後伸び代があるということに他ならない。


 スキルは最初の三個に関しては、割とふざけるなと言いたい所ではあったが、恐らくはこれらが無ければ、メニューとかステータスを閲覧というのが出来なかったのだろう。

 で、この身体強化のLvに関しては、幼女の説明では一万倍ということだったので、スキルのLvが1上がると、十倍になるということなのだろう。


 後のスキルにLv表記がないということは、特にLvによって変化があるスキルでないか、元々存在していないスキルか何かなのだろう。

 一通り眺めて満足した健太は、この解析を使ってみることにした。

 さて、どうやって解析を使えば良いのか、それを考えてみた。


 健太は解析、解析、解析と頭に思い浮かぶようにすると、何かを指定するようにと思考が流れていくのがわかった。

 とりあえず、近場に生えていた木を指定した。

 すると、普通に解析結果が、「木」だけだった。


 それならば、と足下に生えている草を指定したら、普通にやっぱり「草」だった。

 これはまさか、自分が得ている知識しか表示されないような役立たずのスキルなのではないかと不安がよぎった。


 健太に背を向けて、草原で時折あちこちに手を振っている幼女へと解析をかけてみることにした。

 ここで、結果が幼女とか、子供とか表示されるのなら、完全な役立たずスキルだとわかる。


 名前:リタ・※※※※・※※※※・※※※※

 種族:神

 年齢:50010歳

 能力:Lv1・生命力1・魔力1・筋力1・敏捷力1・知力1・体力1

 スキル:魔導


 解析結果は、別に自分が知っている事でなくても良いようだった。

 これが自分の思い描いた妄想によって現出したステータスでなければ、ではあるが。


 でも、名前が殆ど隠されていてわからなくても、リタという部分だけはわかるので、それを呼んでみて間違っているようなら、自分の妄想だったとわかることだ。


「なあ、リタ。この解析ってスキル、実は全く使い物にならないんじゃないか。さっきから足下の草は、ただの草としかわからないし、木だって、ただの木としか表記されないんだ。それに、リタを解析してみたら、種族が神とか年齢も相当に高いし、能力も低く見えるし、渡された能力に文句を言いたいわけじゃないが、いい加減なものだったら、ない方がマシなんだけどな」


 この解析機能は、付けてくれるのは万能の解析ラプラスの悪魔っぽい物ではなかったのだろうか。

 全ての事象を過去・現在・未来において記録し続けるもの、そういったものだったはずだ。


 そうなると、これはあまりにもお粗末すぎる。

 健太に背を向けていた幼女、つまりはリタは、特に健太の方を振り向くこともなく、行動は変える事もなかった。

 ただ、返答のみだけを行った。


「それはまあ、仕方ないと言えるねえ。何しろ、私もまだここに来てからせいぜい一時間経過したかな。今はせっせと世界中にピットを飛ばして、大陸とか島の位置関係やら、文明とか国とかがどこにあるか、おおざっぱな情報収集が限界だからねえ。


 わざわざそこらへんの草やら木の調査はしないわよ。それと私の事だけど、色々と今後の事を考えているから、ある程度の情報規制は敷いてるわ。能力に関しては、意識して何かするのが面倒だから身につけてる指輪に制御させてるから、情報に齟齬が発生するのは仕方ないね。


 実際問題、外的に見れば低いのは確かでしょうし。種族と年齢に関しては、普通に人だし、年齢も今年で12歳なんだけどねえ。恐らくは、あの時の経験が反映されちゃっているんだと思うから、後でそこは制御して改ざんするわ。で、この解析ってスキルがどんな物かは、今の話で大体わかるでしょうけど、私の知識に直結してるわけ。


 私が世界を知って、解析すればするほどに、解析効果は上昇するし、それをしていない物や生物に関しては、ケンタの理解している程度しか把握出来ないってわけ」


 リタの返答は、それをそのまま鵜呑みにするのなら、そういう事なのだろう。

 でも、裏を返すなら、健太に現在は与えたくない情報を解析結果に反映させないようにしているとも捉えられる。


 そう、これが召喚側の意図としてなら、名前や能力を隠しているということからも、わかりやすい。

 でも、召喚側がわざわざ自分の事を神だとかわかるようにしておくだろうか。

 もしくは、このような特殊能力をいきなり与えられるのだから、ただの人であったら逆に怪しまれると考えての情報公開とも言える。


 しかし、こんなことを考え続けても答えなど出てくる筈もない。

 別に今出来ることなど、そんなに多くはないのだ。

 少なくとも今は自分の敵ではない、それだけ確かであるなら、ここはそのままで良いということだ。


 さて、次に確かめるのは時空間収納、つまりはアイテムボックスだ。

 一旦自分のステータスウィンドウを閉じてから、メニューにあるアイテムボックスをタップした。

 すると、現在入っている物のリストが出てきた。


 リスト内に武器というフォルダだけが出来ていた為、それをタップした途端、膨大なまでの文字の羅列が出現した。

 目の前にある枠内に収まらない部分は、下へとスクロールしていくことで見ていくことが出来るようだった。


 見やすいように、ということなのか、最初がアルファベット順に並び、その後で平仮名、カタカナ順で、最後に漢字表記の物があった。

 健太は、ざっと目を通してみたものの、よくある鉄の剣とか、表記としてアイアンソードとか、そういう物が並んでいるんだろうと思っていたが、そういうわけでもなかった。


 カタカナの物だと、ぱっと目に止まったのはワルサーと付いた後に数字が付いている何かや、デザートイーグルやら、コルトガバメントやら、銃?と思える名称ばかりだった。

 漢字の方を見れば、普通に89式5.56mm小銃とか書かれていた事で、これはもう武器というのは、銃の類が揃っているのだろう、とわかった。


 健太は、試しにデザートイーグルをタップしてみると、手の中に大ぶりな拳銃が収まっていた。

 現代日本で普通に暮らしていただけだった健太は、銃なんて握ったこともなかったが、慎重に両手で銃を構えて、木に向けて何発か発砲してみた。


 すると、映画のような大きな発砲音が響くこともなく、タンタンというような軽快な音がしただけで、銃を撃った事による反動も何もなかった。


「ああ、アイテムボックスとやらの中に入れておいた武器を試してるのね。本格仕様を求める人には悪いけど、基本的に実用重視だから、音と反動、それと安全装置とかの面倒な機構は全て適当に作ってあるよ。引き金ひけば誰でも撃てるわ。


 弾は各種の銃にそれぞれ十万発の魔力が込められている魔力弾ね。アイテムボックス内に戻せば、弾数は自動的に補充されるから、弾切れになっても大丈夫。武器の火力に関しては、その名称通りの性能だから安心も出来るし、そこまで過剰にもならないはずだね。


 同じ種類の銃は基本的に一つずつだけど、必要な数が増えて要望があれば、追加するのはいつでも出来るから言ってね」


 健太が、拳銃を発砲した後、木の様子を確かめて、弾痕が所々にあるのを調べていると、後ろからそんな説明が聞こえた。

 弾数無制限の素人でも撃ちやすい無反動とか、健太はあまり行かなかった為わからなかった事だが、ゲームセンターにあるガンシューティングに使用する銃のようなものだった。


 ただ、重量に関しては現実の物と同様にしているらしく、名称だけでは何かわからない物も、色々と出したり入れたりしていると、軽いとか重いとかわかってきた。

 それでも、重量の差があるだけで、別に使いづらいとは思わなかった。そこは身体能力が高くなっているおかげなのだろう。


「銃はわかったけど、この武器ってリスト、銃だけしか入ってないのか」


 健太は、銃だけではなく、ファンタジーの世界に来たのだから、もっと夢の溢れる聖剣とか魔剣とか、そういうものがないのかという意味で、リタへと聞いた。


「まあ、ショウタが武器っていうと、銃の事を言っていたから、現代日本に居た人だったら、銃で良いと思ったんだけど、違ったのかな。今のケンタの能力なら対物ライフルも片手で楽に扱えるだろうし、本来は各種乗り物に装填するようなガトリング系統の機構の銃でも使いこなせる筈だよ。


 それも入れてあるんだけど。もしかして、戦車とか戦闘機とか空母とか戦艦辺りが必要ってこと?あれらは確かに一応はオートパイロットも可能だけど、自分で操縦も出来ないと難しいと思うよ。それに戦闘機はともかくとして、戦車だって、それなりの人数が搭乗してないと乗りこなせないよ。


 燃料も弾薬も魔力供給だから、永遠に動くけど、場所を取る武器っていうのは、あまり使い勝手が良くないよ。それとも大陸弾道系の核弾頭ミサイルが欲しいとかかな。それだったら、ちょっとこの世界には不向きだと言えるし、そこまでの破壊活動を最初からやりたい、っていうのは許容しにくいかなあ。


 それに、核は使った後に環境へと与える影響を考慮すると、面倒なんだよね。その汚染も綺麗に除去する事は出来るけど、それもやるのが面倒だからねえ。だから、核以外でだったら、ある程度は融通させてもいいけど、私は操縦出来ないよ」


 リタの回答は、健太の想像を遥かに超えているものだった。

 剣とかロマン溢れる武器はないのかと尋ねたつもりだったのだが、より近代兵器、どちらかというと大量破壊兵器の話になっていた。

 この調子では、特に聞きたくもなかったが、ウィルスなどを使用した生物化学兵器も所有してそうだった。


「いや、そうじゃなくて、剣とか聖剣とか魔剣とか、こう敵を切るような武器のことだよ」


「ああ、ごめん。そっちか。私の国って元々魔導中心の国だったから、そういうのないのよ。せいぜい、武器じゃないけど、菜切り包丁とか刺身包丁とか、果物ナイフとかかなあ。それに食材だって魔力で切った方が断面が綺麗で細胞を破壊しないってことで、そんなに発達しなかったからねえ。魔力がない人の為にってことで、作られた程度の物だったらあるけど、それでもいいの?」


 どうやら健太が求めるような武器は見つからないようだった。

 異世界で包丁を左手に、アサルトライフルを右手に戦うというのは何か違う気がした。


 それなら、今の身体能力を考えれば、遠距離攻撃を銃に任せて、接近戦に持ち込まれたら殴るなり、蹴るなりして対処するか、最悪銃で殴れば良いのではないかと判断した。


「いや、それならいい。多分、どこか町とかに行けば、近接用の武器とか見つかると思うし、包丁で戦うのは何か嫌だ」


「うん、わかった。ケンタがそれを望むなら、それでいいね」


 リタはやっぱり、健太の言葉にはすぐに反応を返して答えてくれるものの、特に振り向くこともなく、何やら突っ立ったまま手を振ったりして作業をしている。

 健太は、このアイテムボックスがメニューを開いた状態でしか使えないのかを確かめる為に、メニューを閉じて確認作業を始めた。


 すると、頭で記憶に思い浮かぶ名称の物は瞬時に呼び出しが可能で、手の中に収まるイメージなら、手に収まるし、地面に指定すれば地面にも置かれた。

 また収納も入るように念じれば、手で持っていなくても、地面に置かれていても消えた。


 どれぐらい離れた距離から収納が出来るのかを確かめたが、収納できなくなる距離はわからなかった。

 物は試しと取り出した銃を空中高くに思い切り放り投げた後で、収納を試みても成功したからだ。

 それなら、何でもどこに居ても手に入る万能なアイテムボックスなのかと思って、遠くに生えている草を指定して、収納されるように試した。


 しかし、リストに加わる事はなかった。

 足下の草に触れて収納を試しても入らなかった。

 一旦草を引きちぎってから収納してみると、リストに草が加わった。

 その草を取りだして丸めて空に放り投げてから収納すると、リストに草が戻り、取り出すと丸まった状態になっていた。


 次に草を引きちぎって丸めて、自分の真上に放り投げてから、収納をした。

 すると、べしゃりと草は頭にぶつかって、地面に落ちた。

 これでアイテムボックスの大体の仕様は掴めたような気がした。

 収納したことがない物は手に触れないと収納できない。

 収納した事が一度でもある物は出し入れする距離に制限はない。


 生き物は入れられないのか、と考えているとアイテムボックスの仕様という一覧が現れて、チェックリストが出てきた。

 生物を入れられるというチェック項目には現在の所、チェックが入っていなかった。

 試しにこれにチェックを入れてから、足下の草に触れて収納を試した。


 すると、手の触れていた箇所の草がごそっと消失して、リストに草が数本入った。

 その草を数本取りだしてみると、根っこの先まで綺麗に付いた状態で手の中に出てきた。

 これは植物の採取に便利だと思えた為、チェックは入れたままにしておいた。


 そうして、健太はリタが切り倒した木と、穴と弾痕が開いている木の両方を収納した。

 これで特に大きさの制限も無さそうだと把握した。

 生き物が入るというのなら、試してみたい事があった。

 そう、それはもちろん、健太に背を向けて何か作業をしているリタだ。


 アイテムボックスのチェック項目に時間経過の有無があったが、これは時間経過しない状態になっている。

 だから、これでリタを収納することが出来たとしても、取り出せば何をしたのか発覚しないはずだ。

 そして、収納出来るのであれば、万が一自分を裏切った時に、いつでも危険を排除出来るということだ。


 もしも、収納出来ないのだったら、肩に触れたのは、ちょっと用事があったからだとでも言えばいい。

 健太は、無防備な背中を晒しているリタという幼女に対して、多少の後ろめたさはあるものの、身勝手な召喚をしてきたのは向こうなのだからと内心で言い訳をしながら、リタの肩に手を乗せて、アイテムボックスに収納されるように念じた。


 すると、何の抵抗感もなく、リタは消失した。

 アイテムボックスのリストを急いで確認すると、リタ以外の文字が文字化けしたままだったが、収納されていた。


「ふっ、ふふふふふ、あーっはっはっはっは、何だこれ、何だこれ、チート過ぎるだろ。能力を与えて、寝首をかかれるとか、馬鹿な奴だったんだな。まあ、後で何食わぬ顔で出してやればいいか。まだまだ利用価値はあるからな」


 健太はひとしきり笑うと、今後の予定を考え始めた。


いつもお読みいただいてありがとうございます。

年末は暇だから、多めに更新出来るかもしれません。


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