誤解
リアムの説明や、アメリアさんの考えてることを書きたくて、途中でアメリアさん視点になっているので、話がそんなに進んでません…
「ランク1のくせにアメリアさんを口説いてんじゃねぇって言ってんだよ」
何だこの失礼なマッチョ野郎は。
「違いますよ、ロッドさん。ギルド利用が初めての方だったので、色々と説明をしていただけです」
「アメリアさん、こんな奴を庇う必要はないさ。俺は最初っからしっかり話を聞いていたんだ。出会ってすぐにフリーかどうか聞いたり、都市まで行くから仲間になってくれって口説いたり、そんな奴はろくな奴じゃない、俺がしっかり冒険者流儀で断って置いてやるからよ」
おい、全然しっかり聞いて無いじゃないか。それにお前盗み聞きしてたのかよ。
「ロッドさん、本当に違うのでやめてください。それにまた冒険者同士で喧嘩騒ぎを起こされるのは困ります!」
「大丈夫、大丈夫、俺を信じな。おい、お前ちょっと外に出ろよ」
「えっ、いや、アメリアさんの言ってる通り本当に口説いてないんだけど…」
「んだと?アメリアさんは口説くまでもねぇって事か!」
本当なんなんだこいつは!話が全く通じないな!
「いや、だから…」
「うるせぇ、ゴチャゴチャ言うんじゃねえ!そんなに外に出たくないってんならここで話をつけてやるよ!」
「ロッドさん!止めて下さい!」
アメリアさんの制止も聞かずに、ロッドは殴りかかってきた。
◇
はぁ~、今日も退屈。なんでこんな地方のギルド職員になんてなっちゃったのかしら。いる冒険者はおじさんばっかりだし、ロッドはイヤらしい目でちらちら見てくるし、こんなことなら冒険者を続けていれば良かった。
ん?今入ってきた人、初めて見る顔ね。武器も防具も身に付けてないし、依頼でも出しに来たのかしら。
でも珍しいわね~、黒髪なんて。持っている魔力に感応して髪色は変わる、って聞いていたけど。ま、染めてるだけかもしれないし気にしない気にしない。そんなことより顔をcheckしないとね。うんうん、短髪が似合ってて結構カッコいいわね。身長は175ぐらいかしら。こういう人がこの町で冒険者として活動してくれたらな~。
あら、私のギルドカウンターにきたわ。
「こんにちは、突然変なこと聞いて悪いんですが、このギルドに身包みを剥ぐような悪い人っていますか?」
いきなり凄いこと聞いてくるわね…もしかして、被害にあっちゃったのかしら。
「はい…この服意外全部盗られちゃいまして… 」
可哀想ね…でも、命があっただけ良かったのかしら。多分やったのはムスタフ達ね。最近は王都、都市クリネイスト、都市アッカーバルンだけじゃなくてこっちにまで範囲を広げてきてるし、困ったものだわ。
「わかりました。それともう一つ、今相棒がいない人っていますか?」
相棒?パーティーを組んでないってことかしら?
「そ、そうそう、パーティーを組んでない人です」
今初めてパーティーって言葉を聞いたみたいな反応ね。取りあえずギルドカードを確認しないと。
「…」
なにかしら、急に黙っちゃったんだけど…
「すいません、持ってないんです」
なるほど、新人さんなのね。カードが無いって言うのが恥ずかしかったのかしら。じゃあ、まずはカードを作るところからね。
ふむふむ、リアム・アルバーン、22才か、私のが少し年上ね。
いけない、早くカードを取りに行かないと。
カードも作り終わったことだし、最初のパーティーの件について話した方がいいわね。
「いや、違うんですよね。都市まで行こうと思ってるので、仲間が欲しいなと思いまして」
えっ、なにこの人、ランク1なのに自力で都市まで行く気なの…
いや、でも違うかもしれない、一応確認してみないと。
「そうですけど」
この人…馬鹿なのかしら、ここから行くとしたら都市クリネイストでしょうし、ランク1でクリネイストまで自力って、死にに行くようなものだわ、絶対止めないと。
「いやいや、大丈夫ですよ。俺結構強いですから」
うわー、この人馬鹿だわ!絶対馬鹿!冒険者成り立てがよくなる「あれ?俺結構強くね?これ、あのモンスター倒せちゃうんじゃね?」って勘違いして、結局やられて死んじゃうやつだわ。
自力で行ける適正ランクと馬車でも教えてあげようかしら。
「そうですか、わかりました。お金はちょっと無いので、ランク3になってから行くことにしますね」
…おかしいわ、変に素直。これ嘘ついてるんじゃないでしょうね、一応カマかけてみようかしら。
「ははっ、そ、そんなわけないじゃないですか!」
「ふふっ、ですよね。変な心配しちゃいました。」
「はっはっはっ」「ふっふっふっ」
って、これ絶対嘘ついてるわ!笑っても誤魔化されないんだから!
「わ、わかりました…」
ふぅ、ようやくわかってくれたわ、でも笑ったせいで変に注目されちゃったわね。
「すいま」
「おいおい、お前アメリアさんを口説いてんじゃねぇよ」
げぇっ!ろ、ロッド!なんで来るのよ!
「ランク1のくせにアメリアさんを口説いてんじゃねぇって言ってんだよ」
なによ、あんたはランク1の時から口説いてたってのに!
いけないっ、これじゃ、リアムさんがロッドにやられちゃうわ。
「アメリアさん、こんな奴を庇う必要はないさ。俺は最初っからしっかり話を聞いていたんだ。出会ってすぐにフリーかどうか聞いたり、都市まで行くから仲間になってくれって口説いたり、そんな奴はろくな奴じゃない。俺がしっかり冒険者流儀で断って置いてやるからよ」
この馬鹿、全然聞いて無いじゃない!ってか、それあんたが冒険者になったときに私にしたことでしょうが!それに、盗み聞きしてたなんて信じられない!
でも、この馬鹿のことだからこの勘違いでリアムさんをボコボコにしかねないわ。
「大丈夫、大丈夫。俺を信じな。おい、お前ちょっと外に出ろよ」
いやーっ!全然大丈夫じゃないわ!
「えっ、いや、だからアメリアさんの言ってる通り本当に口説いてないんだけど…」
「んだと?アメリアさんは口説くまでもねぇって事か!」
本当なんなの!?人の話がよく頭に入らない病でも抱えてるの?
「いや、だから…」
「うるせぇ、ゴチャゴチャ言うんじゃねえ!そんなに外に出たくないってんならここで話をつけてやるよ!」
あ、危ない!
ボコッ!ガッシャァァン!
反射的に目を閉じると、凄い音が聞こえてきた。うわ~、痛そう、リアムさん大丈夫かしら。
リアムさんを心配しながら閉じていた目を開けてみると、私達から2メートル程離れたテーブルにぶつかってるのはロッドの方であり、ピンピンしているリアムさんが立っていた。
「へ?」
まぬけな声が静まりかえったギルドに響いた。