クルッカス町
『ようこそクルッカス町へ!』
『豊かな自然に、美味しい食事、都市での疲れを癒すにはクルッカス町が1番!ぜひ、御一泊していってください!』
エクシスからこの世界に転送され、最初に目に入ったのはこの村、いや、この町の入り口だった。
クルッカス'町'か、100年たつとやっぱり変わるもんだな。100年前は村だったし、こんな看板ですら立ってない寂れたところだったからな。
…なんて、冷静に考えてる場合じゃない!
ヤバい、相当ヤバい。本当にヤバい。まさかこの世界に転送された影響で、気を失ってしまい、その間に誰かに身包みを剥がされて、神々の戦いで初勝利した時にアフロディーテから貰った剣も、アフロディーテとお揃いで買った指輪も無くなってるなんて!!
…どうしよう。魔神を倒すとかどうこう言ってる場合じゃない、アフロディーテに殺される…
いや、待てよ。次アフロディーテと会うのは多分、魔神達を倒した後にエクシスに行った時だ。その時までにどっちも取り返せばいいのか!この広い世界で見つかる可能性はほぼ無い。なんて事は思っちゃ駄目だ、プラス思考で行こう!!
とりあえず、アフロディーテに言われた通りギルドに行ってみるとするか。素晴らしい出会いがあるみたいだしな。
「よぉ、兄ちゃん。
おたくも都市での疲れを癒やしに来た口かい?」
ギルドを探して町を歩いていると、大きな荷物を持った、旅行客っぽいおっさんが声をかけてきた。
「いや、残念ながら違うんだ、ちょっと立ち寄っただけでね」
「おーそうなのかい、ここはいいとこだぜ?なんてったって酒が旨いからな。是非一泊ぐらいしてくのをお勧めするね」
そういえば、成人したのエクシスだし、この世界の酒飲んだこと無いな。旨いみたいだし、呑んでみるとするか。
「そうなのか、じゃあそうするとするよ。ところでギルドにはどう行けばいいか知ってるか?」
「そりゃもちろん知ってるさ、ここへはよく来てるからな。このまままっすぐ行って突き当たりを右に曲がれば見えると思うぜ」
「なるほど。ありがとな」
おっさんに行われたとおりに進んで行くと、木造の建物が目立つ中、数少ないレンガ造りの大きな建物が見えてきた。あれがギルドみたいだな。The冒険者って感じのゴツい人達が出入りしているし。
頑丈そうな扉を開けると、中にはむさ苦しいおっさん達が酒を飲み大声で話し、笑い合っていた。初めて見る顔の俺に一瞬視線が集まるが、興味を無くしたのかすぐに談笑に戻っていった。
さて、一番美しいお姉さんがいるギルドカウンターに向かうとするか。あの茶髪ロールでアフロディーテと正反対の胸をしているお姉さんのところだな。
「こんにちは、クルッカスギルド第三カウンターを担当しているアメリアです。ご用件はなんですか?」
まずは剣とかの事を聞くことからだよな。
「こんにちは、突然変なこと聞いて悪いんですが、このギルドに身包みを剥ぐような悪い人っていますか?」
年上のお姉さんと話す時って敬語になっちゃうよね!
「身包みを剥ぐ、ですか。犯罪行為を行った事がわかった場合、罰金、禁固等の刑罰の上に、ギルドが使用禁止になってしまうので、冒険者の方々は行わないと思いますよ。もしかして被害にあわれてしまったんですか?」
「はい…この服意外全部盗られちゃいまして… 」
「そうですか…それは災難でしたね…おそらくですが、指名手配されている大盗賊ムスタフ率いる盗賊集団による犯行だと思われます。王都、都市クリネイスト、都市アッカーバルン等で被害がでていたんですが、最近はここら辺まで手を伸ばしてきたみたいなんです」
ムスタフね。そいつを探し出すのが確実で、手っ取り早そうだな。…いや、指名手配されてる奴がそう簡単に見つかるわけないか…
「わかりました。それともう一つ、今相棒がいない人っていますか?」
「?…今パーティーを組んでない人、ということでしょうか?」
パーティー、ね。今はそう呼ぶのが主流なのか。
「そ、そうそう。パーティーを組んでない人です」
「適正なパーティーメンバーをお勧めするために冒険者ランクを確認したいので、ギルドカードを見せていただいてもよろしいですか?」
「…」
「あの、ギルドカードを」
ギルドカード?なんだよそれ、そんなものまでできてるのかよ…
こんなに変わってる事があるなら教えてくれよ、アフロディーテ…
「すいません、持ってないんです」
「あ、これは失礼しました、新人の方でしたか。それではお作りしましょうか?」
「是非お願いします!」
「こちらの紙に、名前と年齢をお願いします」
年齢か、これはどうしたらいいんだろうか。
122才って書いたら絶対馬鹿にしてると思われるだろうし、22才にしとくか。
「書き終わりました」
「リアム・アルバーンさんですね。えーっと、ちょっと待っててください」
ギルドのお姉さんがギルドの奥にパタパタと走っていき、しばらくしてから白いカードをもって出てきた。
「最期にこのカードに血を垂らせば発行完了です」
アメリアさんに言われた通りに血を垂らすと、血が瞬く間にカードの上に広がっていき、文字を描きだした。おぉ、すげぇ。
「ギルドランクが4、7、9と成るにつれてギルドカードの色が白から、赤、黒、銀と変わっていく仕様になっております。
それと、無くされてしまった場合は再発行となるのですが、その時は銅貨5枚で最期にギルドカードを利用した時のランクで再発行することができるので、是非覚えて置いてくださいね」
「わかりました」
「それで最初の件なんですが、冒険者ランク1の方が受けるクエストは比較的簡単な物しかないので一般的にはパーティーはお作りしないのですが」
違うんですよね!神様からここで素敵な出会いがあるって聞いたんですよ!
うん、素直に言ったら完全にイっちゃってる人だ。何て嘘つこうか。
「いや、そうじゃないんですよね。都市まで行こうと思ってるので、仲間が欲しいなと思いまして」
「…もしかして都市まで自分達の力で行くおつもりですか?」
あれ?もしかして変なことなのか?
「そうですけど」
「ここから行かれるとしたら都市クリネイストだと思われますが、道中には魔物も出ますし、自力で行くんだとしたら流石にランク1の実力では厳しいと思いますよ。せめてランク3ぐらいの実力はないと」
魔物か、魔神がいるんだしそういうのもいるのか。
都市はクリネイスト、か。100年前は無かった都市だな。次はそこを目指すとしよう。
「いやいや、大丈夫ですよ。俺結構強いですから」
「しかしですね、ギルド職員として、命を失う危険が高い行動はお勧めできないというか…
ランク3程の実力がつくまで待つか、高ランクの方々が護衛して都市まで送って下さる馬車が週1で出てますのでそちらをご利用してみてはいかがでしょうか?銀貨5枚と結構値段はしてしまいますが」
銀貨5枚か。銀貨どころか銅貨でさえ1枚もないからな。まぁ、元々利用するつもりはないけど。
「そうですか、わかりました。お金はちょっと無いので、ランク3になってから行くことにしますね」
「…ここではそう言っておいて、私と別れてから自力で行こうとしてるわけではないですよね?」
ぎくっ!す、鋭い!
「ははっ、そ、そんなわけないじゃないですか!」
「ふふっ、ですよね。変な心配しちゃいました」
「はっはっはっ」「ふっふっふっ」
おそらくアメリアさんはギルドの中で人気があるんだろ、美人だしな。笑いあう俺達にギルド中からの恨みの籠もった視線が集まる。
「ほんっっとうにやめてくださいね!笑っても誤魔化されませんよ!」
「わ、わかりました…」
「もうっ、皆さんに変に注目されちゃったじゃないですか」
「すいま―」
「おいおい、お前アメリアさんを口説いてんじゃねぇよ」
俺の言葉を遮って、変なマッチョが絡んできた。
日付が変わるときに投稿していく予定です。
名前を考えるのって難しいですね…