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暗中模索 3



 「何か変だね、ルードが自分で言い出したのに、投げ出すなんて」


 「ああ、何かあったんだ……、問い詰めたい事が幾つかできた」

 ヒルは拳を強く握り締める。


――記憶の事、要の事……言い出したのはお前なんだ、ルード。


 「ルードに直接会いたい」


 モタついている暇は無い。

 考えるより先に、行動しなければ、このまま何一つ目的を果たせぬまま、終わってしまうかもしれないのだ。


 「連れてってくれないか?」


 ヒルは目の前の派手な鳥へ、ひたむきに向き合う。


 キニチ・カクモは首を何度か傾げた後、

 肯定の意味で、彼女の手の甲に擦り寄ってから、再び口を開く。


 『そう……そう言ってくれて、良かった。……感謝するわ』


 それっきり、キニチ・カクモがルードの声を発することは無かった。





 「――というわけで、わたしは知り合いに会いに行く。お前らは此処に残った方がいい」


 ヒルは紗羅と晩霞に淡々と告げる。


 「いいえ! 私も一緒に行きたいです。私はたくさんの町を見たいんです」


 真っ先に抗議するのは紗羅だ。


 「だったら尚更来ない方がいい……わたしはもう、何処にも行きたくないんだ……」


 「? それはどういう――」


 「晩霞となら、大丈夫だ。危険な目にも遭うだろうけど、きっと全ての域を巡れるさ」


 ヒルの言葉を聞いて、今度は晩霞が抗議する。


 「っざけんな! 俺の動向を勝手に決めんじゃねえ。


 俺は暇潰しがしてぇんだよ、退屈なババアの介護なんてしてられっかよ!

 俺はお前らと共に行く。

 初めからお前らの異様さが気になっていたんだ、だからついて来てやっても良いと思ったんだ」



 「これ以上来たって退屈だぞ……個人的な理由で、知り合いに会いに行くんだ」


 「んなもん今までもそうだろ、それに根暗は今まで通り共に行くんだろ?」


 「そうだけど」




 「話せよ、お前の素性を」


 「……」


 「俺は、何処かやる気のねぇお前が、ずっと気に食わなかった。

 記憶が無いせいだとも思ったが、どうやら違うらしい。


 “自分は周りの人間とは決定的に違う”とでも言いたげな態度が気に入らねえ。

 確かに生きてんのに、たまに死人のようなツラになる。


 生きてる奴が、どんな理由でそんなツラになんのか、俺は知りたいんだ!」


 晩霞は、その生い立ちから、多くの人間の死を見てきた。

 彼自身も多くの人を殺したが、死んでいく人間達の命が軽いものだとは、決して思ってはいない。


 だからこそ、人間であるはずのヒルに何があるのか気になっていたのだ。





 「私も知りたいです! 神秘的なヒルさんもとても魅力的ですが、私たちもう一ヶ月もの付き合いなんですよ!

 そろそろ次の段階に進んでも良いと思います! お互いもっと深くまで知り合いましょうよ」


 「気色悪ぃ言い方すんな! 淫乱ブス!!」


 「ぶ……ぶすぅっ!?」


 珍しく紗羅と晩霞の意見が一致したと思ったのも束の間、

 どこまでも性格の合わない二人は衝突を避けられない。


 「――わかった、わかったから喧嘩するな……面倒なだけで、別に言いたくない訳じゃ無いんだ……」


 この騒々しさが少しでも落ち着くなら、

 身の上話など安いものである。


 「ポーにも直接言った事は無かったな……聞いてくれないか?」


 彼の無反応を肯定とみなし、

 ヒルは苦笑しながら、静かにこれまでの経緯を語り始めた――

 






 「私俄然協力します! ヒルさんが元の世界に戻られるのは寂しいですが、好きな人に告白するのは大賛成です!!」


――どっちも巧く私が阻止するけど。


 という言葉を飲み込んで、紗羅はヒルに好かれたいが為に全面協力の意を示す。


 「別世界とか。

 こんな面白れぇことは無ぇ! 安心しろ! 俺が最後まで協力してやる!」


 晩霞は単純に、面白そうだから首を突っ込む。


 「お前ら……安易に、わたしの話を信じすぎやしないか?」


 一通り説明し終わっても、質問の類いが出ない事に拍子抜けしてしまう。


 「え!? まさか、嘘なんですか!?」


 「いや、本当なんだけれど……」


 言い淀んで、

――不思議な力を使う神にとっては、突拍子も無い話ではなかったのか、とヒルは唖然とした。


 自分の話が無条件で誰かに信用されるとは思っていなかった。自分自身を卑下することで、予防線を張っていたのだ。


 

 何にせよ、彼らは物好きなことに、自分に協力するというのだ。それは感謝すべきことなのだが――ヒルは未だに誰かを信じることが恐ろしかった。

  



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