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刃 3

 命は要に再び会う為に、彼の眷属達を見た。


 「ポー様は神が不老不死だと言ったが、それには語弊がある。

 神は不老では有るが、不死では無い」

 「あ、そっかー。そうだよねー」


 命に緊張が奔る。


 「え、じゃあ、要はどうなっているか、判らないじゃん」

 

 「ああ、だがあくまで憶測だが、殺される事は無いだろう。奴らの目的は予想がつく。殺しちまったら奴らの目的は達成出来ない」


 「奴ら……アイツだけじゃないの?」


 「多分、そうだ」


――多分って……。


 命は急に不安になる。

 彼らはその口振りから、要がどうなって、今何処に居るのか、わかっているものだと思っていた。しかし、憶測の話が多すぎる。自然、疑いが濃くなる。


 「まあ、お前が不安に思うのも尤もだが……」


 「あまり余計な事も言えないんだよ」

 言葉を詰まらせる男に、他の者が補助する。


 「お前は記憶を失っている」


――昨日から……何なんだ、こいつらは。

 そんなわけないし。



 命は自分が記憶喪失では無い確信が有った。

 物心ついてから、今迄、記憶の欠落も無いし、そういった違和感を感じた事も無い。

 写真を見ればいつ撮った物か判るし、人と話して記憶が違うと感じた事も無い。

 彼らの言う事が理解出来ない。




 「お前の記憶については言えない、言えないことになっている」


 「俺達も早くお前には思い出して欲しいんだ。だから、思い出すのに障害になるような余計な事は言えない」


 「俺達がお前の事を話して、お前が自分の事を知ったとしても、それじゃあ意味が無いんだ」


 「だな、記憶を取り戻さないと意味が無い」


 うんうん、と要の手下はお互い頷き合う。


 「だから、過去の事は話せないが、……今の事は話せる」


 今の事。


 命はたくさん浮かんだ疑問をぶつける事にした。




 「此処は、島だって言っていたけど。島国ってこと?

 あまり文明が発達していないようだけど……、要を助けるにしろ、帰るにしろ、出来ればちゃんとした機関に保護してもらいたいんだけど。

 この国にそれが望めないのなら、他のもっと先進国に行きたいんだけど」


 周りが静まりかえる。

 命は、自分が何かおかしな事を言ったのか、心配になった。


 「あの……」

 「国なんてモンはねーよ」

 投げやりな声で一人が答えた。


 「でも、要は攫われたんだから、警察とか……そういう組織に協力してもらったほうが、絶対いいじゃん。

 こんな治安の悪い場所でも、警察みたいな組織は有るでしょ?」


 いつの時代にも、犯罪を取り締まったりする組織が存在していた事を命は知っていた。

 だから、此処が別世界だとしても、そういった組織がある筈だと彼女は考えた。


 国には支配者が必ず居るものだ。

 国民主権だろうが、君主主権だろうが、政治を行ったり統制したり秩序を守る組織がある筈。でないと、社会が成り立たない。


――こいつは“国”は無いって言うけど、それでも土地が有って人が居るんだから、何かしらの自治組織はある筈。




 「だから、そんなモンねーって」

 「いや、あるぞ」

 「!?」


 『ある』そう言った男を全員が見る。


 「人間共にはそういう組織がある。だが、何の役にもたたんぞ」


 人間共。


 そこで、命は気付いた。

 そういえば、此処に来てから一度も“人間”に会っていないんじゃ?


 背に、一筋、嫌な汗が流れた。


 「まあ、俺達が言える事を言ってやる。お前の質問はそれからだ」


 どうも命は見当違いな事ばかり言っているようで、また黙らなければならなくなった。





 「順を追って説明しよう」


 「まず、此処は所謂――神の島だ。

 此処には神と人間が暮らしている。魔族は居ない。

 だが、何故だかわからんが、魔獣と呼ばれる、魔族が創り出した獣が出るんだ。

 恐らく、頭と同じような能力を持った魔族の嫌がらせだと思うんだが」


 「まあ、とにかくそいつらが蔓延っているんだ」


 「こいつが厄介でな、さっき退治したような弱いのなんて会った事が無い」


 男達は、命に判りやすいように、ゆっくり丁寧に説明する。


 「生身の人間にはまず狩れない。だから俺達みたいなのが退治してるんだ」


 「闘う力の有る神や、その眷属ですね」


 「だから人間は皆、神の住む近くに街を作って暮らしているんだ。

 自分達で魔獣退治するよりも、俺達にやらせた方が、圧倒的に被害も少ないし、効率がいいからな」


 「その神の住む周りの街や村をひっくるめて“神域”とか“域”とか言うんだ」



 「だが、問題が有る。神の住んで居ない土地には魔獣が常に蔓延っているんだ。

 だから人間は一生のうちに他の神域に行く事はほぼ無い」


――じゃあ、一生死ぬまで地元から出れないの?


 会ったことも無い人々が哀れに思える。


 「俺達がこの山から出る時は魔獣退治の時くらいで、他の神域がどうなっているかは知らんが、確かにお前の言う通り、此処の人間も自分達で色々と組織を造っているみたいだな」


――でも……だったら、思っていたよりもかなり小規模な組織ってこと?

 

 命は自分の考えの浅はかさを知った。


 「人間も神も他の域には殆ど関わらない」


 「たまにポー様みたいに自分の域を持たずにフラフラしてる神も居るがな。

 普通はそんな事しないし、出来ない」


 「神ってのは、頭みたいに結界張って、その中に閉じ篭もっているもんなんだ」


――何かソレって、ヘタレっぽい……。


 「腰抜けだと思うか?」


 命はギクリとした。

 考えが伝わってしまっていたようだ。


 「頭には責任が有るんだ。

 頭が死ねば俺達も死ぬし、神の庇護を受け年中豊かなこの山も本来の姿に戻る。すると、この域の人間も生きてはいけない。

 だから、頭は自分の命を大事にする責任が有るんだ」


 「俺達は別に人間を守るとかそういう事は考えてねーけど、死ななくて済むモンを死なせちまう程薄情でもねー」


 「だから頭の居ない今、この山を妹が代わりに守り、俺達は今迄通り魔獣狩をしなければならない」


 成る程。だから自分に要を任せるわけか。

 命は考える。

 何か、良い方法が無いか、と。


 「神様が結託して、何か良いシステムを作れば良いじゃん」

 命の提案に、男達は皆、ぽかんとする。

 雄柏が一言だけ「それは出来ない」と言った。


 何かまずい事をいってしまったのか。


 「あと、お前が言っていた、この島の外の事だが」


 命はその言葉にハッとした。


 「結論から言うと、この島以外には“何も無い”」

 「は?どういう……」

 「島の外は海が在って、其処から先は“無”が拡がっているだけだ」

 「???」



 「それは僕が説明するよー」

 今迄ニヤニヤしながらずっと黙っていた、闇を使う神、ポーが口を開いた。


 彼は懐から、折りたたまれた丈夫そうな分厚い紙を取り出し、地面に広げた。

 「じゃーん。コレがこの島の地図」


 全員それを覗き込む。


 「おお、流石ポー様! あちこち行くだけあって、良い物持ってる!」

 「まあねー」


 その地図には、大きな長細い菱形の島と、その半分位の大きさの島が四つと、他に小さな島が幾つか載っていた。

 島が1つではないことに、命は驚く。


 「この全部の島を徒歩でぐるっと一周するのに、普通に旅して大体一年位かな」

 「い……一年!?」


 命が思っていたよりも、ずっとこの“島”というのは広かった。

 ちょうど、日本と同じくらいの大きさだ。


 「此処に在る全部併せて“神の島”だね」


 命は呆気にとられてその地図を眺めていたが、「あれ?」と何かに気付く。


――この地図……なんかどっかで見た事が……。


 それは、小さな既視感で、命はすぐに―――まあ、いいや、と振り払ってしまった。




 「地図の端っこくらいにまで船で行ってみると判るよ。

 此処まで来ると、此処から出てくるんだ」


 彼は地図の上部に指を置いてから、今度は下部に指を置いた。


――地図の端が反対側の端に繋がってるって事!?


 「な……何で!?」


 「ああ、空間が歪められているんだよ。

 大昔にか『ポー様!!』


 突然の大声に、命は心臓が飛び出しそうになる程驚いた。

 ポーの言葉を要の手下全員が遮ったのだ。


 「ポー様! こいつに昔の話はしないで!」

 「ホント、頼みます」

 「取り返しのつかない事になりかねないんで!」


 彼らは強い語気で、ポーに詰め寄る。

 その気迫に彼は圧倒され気圧されているようだ。


 「わ……わかったよ」


――神様って……。


 命はその様子に呆れて失笑した。



 「まあ、そんな訳だ」


 雄柏が流れを変える。


 「頭を連れ去ったのは魔族なんだろ?」

 彼は命の目を真っ直ぐに見た。


 「……うん。要とその人が“魔族”って言ってた」


――そういえば、こいつらが現れたのはアノ娘が居なくなってからなのに、何で知ってるの?


 命は不審な目をして彼を見返した。


 「俺達はお前らを見てた動物に聞いたんだ。頭の眷属じゃなくて普通の奴だ」

 「そんな事も出来るの……」


 そんな彼らと同等の存在になったのか、と命は狼狽する。


 「何故此処に魔族が居るのかは判らん。確実に、今、良からぬ事が起ころうとしている」


 良からぬ事。その言葉に命は息を呑む。


 「此処は神が支配している空間だ、魔族の力は弱くなる。

 だが、例え“域を守る”という使命が無くとも、俺達全員で頭を取り戻しに行くよりも、お前一人の方が、よっぽど頼りになる」


 「は?」


 命は運動神経も良く無いし、元々体力が無い。

 要の眷属になり多少は“マシ”に為ったとしても、この世界の事も良く知らない。それなのに、彼はそんな事を言う。

 彼女は自分が彼らよりも頼りになるとは到底思えなかった。




 彼は命の胸元を指差す。


 「その刀だ」


――コレ?


 彼女は縋り付くように抱えていたそれに目を遣った。


 それは、要が闇に呑まれる直前に置いていった刀だ。


 刀は鞘に収まっている。

 鞘と(つか)は一続きになっているように、(つば)や柄巻き(柄の木製部分の上に巻く紐)等は一切無い。

 一様に朱塗りに金の箔で模様が描かれていた。

 飾りや金具の類は一切無く、のっぺりとした印象だ。


 とても実用的な刀には見えない。


 「お前と、その刀の方が、俺達よりもよっぽど役に立つ」

 「この刀は、いったい……」


 何なのだろうか、と命は刀を抜いてみた。



 片刃で、反りがある。

 命に言わせれば、それは“日本刀”であった。


 刀身は60cm程で、短く、太刀というより脇差といったほうが適当と思われる。

 刃は、美しく傷一つ無い。日本刀の多くに有る()と呼ばれる溝も無く、―――全く使われていないのではないか、と命は首を傾げた。



 「その刀は普通の武器じゃない。神剣だ」

 「しんけん……。でも、剣なんて使ったことないし」


 「ああ、だから、俺達の中から、一人お前に“つける”」


 そこで不意にウルフカットの、命が一番憎んでいるアノ男が立ち上がった。


 「?」


 「そいつは俺達の中で、一番片刃の剣の扱いが上手いんだ」


 命は驚いて腰を浮かせた。


 「ちょ、ちょっと待ってよ! こいつと要を探せって言うのかよ!?

 死んでも嫌だ! この刀はあんた達に返すから、そっちはそっちで勝手に要を探してよ!」


 「それは出来ない。その刀は、頭がお前に渡したのだから、お前にしか使えない」


 そう言って彼は手を差し伸べる。命は意図を解して刀を彼に渡した。


――!!!


 彼は刀を抜こうと力を入れているが、まるで柄と鞘が本当に一体となっているかのように、全く動く様子が無い。


 演技か?

 しかし、彼の腕の筋肉の震えが、とてもそうは見えなかった。



 「そんな」


 雄柏が刀を命に返す。


 「まあ、そう悲観すんな。

 勿論お前が俺達を憎んでいる事も判っている、だから……キリタチ」


 男は、ウルフカットの男を見上げる。


 彼は頷いて、首を下げた。

 かと思うと、そのまま姿が歪む。


 形が曖昧になり、両手だった部分が地面に着く。

 彼の着ていた服や肩に下げていた刀が落ちた。

 段々と、形がはっきりしていき、姿が明瞭になる。


 ソレは、四ツ足で立ち、全身灰色の毛で覆われていた。

 大きさ自体は元の彼と、さほど変わらないが、その姿は、紛れも無く“狼”になっていた。




 「犬!?」

 「ガアッ゛!!」


 心外だったのか、彼は命に向かって吠えた。


 「狼だよ、ソレがソイツの本当の姿だ。

 俺達は殆どが、この山の動物達と同じく、元々は獣だ。

 長い事生きていると、この形に成れるようになる。獣のままだと上手く喋れないから不便なんだ。

 どうだ? ちょっとは怒りも収まったか?」


――確かに、犬に跳び付かれて、犬パンチを食らったと思えば……ちょっと萌える……「って、萌えない!!」


 「「「???」」」


 だから何だっての!? 『実は動物だったから許してください』って?

 そんな事で許される筈無い! こいつらのしている事は犯罪だ。

 命は言いたい事を我慢して、一言だけ洩らした。


 「うちの他にもいっぱい被害者が居るんでしょ……その人達の事を思うと……絶対に許せない」


 「そうか」



 鬱屈した雰囲気が流れる。


 「言い訳になるかもしれないが」


 男はポツリと呟いた。


 「俺達は人間を守るとか、そういう事は元々考えていない。

 ただ、此処で生活しているだけだ。山に入った人間から色々搾取したりしてな」


――サイテー。やっぱりただの山賊じゃん。


 「だが、人間の方はそうは思っていなかった」


 相変わらず他の男達が彼の話を補助する。全員が一丸となって同じ方向に向かう様に、彼等の結束が窺えた。


 「『豊かな山を与えてくれる』『魔獣から自分達を守ってくれている』って、勝手に思い込んでいるんだよ。俺達が奴らの身包み剥いだりしても、神の洗礼だとか、供物だとか言って逆に喜んでるんだよ。気持ち悪ぃ……」


 「自分達で処理出来ない事が有ったら、何でもかんでも頭に祈るんだ。

 天災に遭ったり、病が流行ったりな。初めて山の麓に祠が建った時は寒気がしたぜ」


――だから?



 「人間は災害があった時とかに……祈りに来るようになりました。

 頭には彼らが望むような事はできないのに。

 彼らの祈りは段々と度が過ぎるようになって行きました。

 最初は小さな祠だったのが、大きな神社を建てるようになったり……。

 でも、僕らはあまり彼らと関わりたくないので、彼らが山に入ったら襲ったり、持ち物を奪ったりして追い払っていました」


 「だが、或る時長い日照りが続いたんだ。

 それまで奴らは天災があったら、作物とかを祠に捧げていたんだが……何を思ったのか、若い女を“生贄”とか言って山に置いていくように為ったんだ。

 きっと作物も採れなくて、動物も皆食っちまって、他にもう捧げるモノが無くなったんだろう……人間はホント様々良く思い付くよ」


――だからそれをそのままイタダキマシタって?


 命が彼らを睨む目つきに変化は無い。



 「俺達だって!最初は生贄をそのまま返したんだ。

 そしたら、今度は死体になって戻ってきた。家族親戚、一族全員の死体付でな」


 え、と命の口から音が漏れた。

 彼女の表情は変化し、驚きで目が見開いている。動揺を隠せていない。


 男達はそれに畳み掛けるように話を続ける。


 「奴らからしてみれば、女は生贄としての役目を果たさず戻ったんだ。

 村人達が怒り狂って一家全員親戚も殺したんだろう」


 「俺らだって色々と考えたんだ。

 勿論女には何もしないで、山の反対側に在る別の町に逃がしたりした。

 だが、その後女は自ら山に戻って来て、自殺した」


――そんな……。


 命はこの世界の人々が何を考え、何を信じて生きているのかを知らない。

 生贄に為った女達が、いのちを掛けて天災を鎮めようとした事も。


――なんでそこまでしなきゃならないの?


 「俺達は贄を殺したり、奴隷にするよりも、犯して返す事を選んだ」


 「……」


 「段々と俺達も罪悪感が無くなっていったのは事実だ」


――そんなこと……そんなこと話されても……。




 命の考え込む様子を見て、雄柏は声を掛ける。


「まあ、あまり気にするな。

 ただお前に聞いておいて欲しかっただけだ」


 命は何も言わなかった。言えなかったのではなく、言わなかった。

 自分の考えを口に出し、彼らと議論するのが面倒だったのだ。


 必死に口論して、自分の考えを押し付けたって、虚しさしか残らない。

 こいつらにはこいつらの言い分が有る。こっちは絶対に許さない、それでいいじゃないか。


 中学の教室。

 一人ぼっちで席に座っているイメージが命の脳裏に湧き上がる。


 お互いの考えが交わらないなら、いっその事、最初から何も言わない方が良い。


 「お前が拒否しようが、こいつ――キリタチを“つける”事に変わりは無い」


 命ははっとして顔を上げた。

 思考の渦に呑まれていたようだ。


 「幸い此処にはポー様も居るしな。ポー様の力を借りて、お前にこいつを“つける”」



 命は困惑と嫌悪の表情を浮かべ「意味が」と呟いたが、横に居たポーの言葉に掻き消された。


 「ちょっと神使い荒くない?

 僕、君達に協力するなんて一言も言って無いけど?」


 「ポー様は俺達派だろ? してくれるって判ってますよ」


 「まあねー」と彼は満更でも無いのか、割合乗り気なのか、すぐさま立ち上がって命の前に行った。


 「な……何?」


 すると、キリタチも命の隣に移動する。


 間近に来ると――かなりデカイ。

 命は彼の獣としての迫力に、ゴクリと唾を呑み込む。


 ポーが、キリタチの額に掌を乗せた。

 すると、次第にゆっくりとその掌は下がってゆく。


 命が何事か、と一歩下がって全体を見ようとしたが、身体が動かない。


 「!!!」


 目を下に向けると、狼が“お座り”しているその脚と尻が段々地面の中に入っていった。

 要が呑み込まれたように、彼も又、夜の闇に沈んでいった。


 「な!」


 ポーが地面から手を離すと、其処にはもう何も無かった。



 「これで彼は君の闇に成ったよ」

 「はあ!?」


 命は驚きのあまり開けた口が塞がらない。


 「闇が濃く大きい時しか彼は動けないから、気を付けて。

 夜なら大丈夫だけど、昼間はあまり動けないかも」

 「え???」


 雄柏がほくそ笑む。


 「奴と一緒に頭を探しながら、剣の使い方を教わるのと、闇に潜ませて技術だけ得るのとどっちがいい?」

 「どっちも嫌だ!」


 命には訳が判らなかったが、彼の言葉の“憑ける”という意味は判った。

 悪霊の如く、自分に取り付く彼に、命は不気味さだけしか感じない。


 「狼がとり憑いたと思えば良いんだ。楽なモンだろ?」

 「ちょっと、全く意味が解らない!」


 慌てふためく命を男たちは面白そうに笑った。



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