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Beautiful World  作者: 剣崎月
8/9

[08]安定のエーリヒ 絶対の地雷



 井上スキル(役立つスキルなので、彼女の名誉のために井上スキル。まティるだスキルなんて誰も言わない)を手に入れ最初に殺すのは――御坂香。


 アルテミスは特殊加護で殺害できない。だが俺は絶対に殺す!


 アルテミスよりも殺しやすい御坂。連王の元に送り込まれていない場合でも、ジェラルド王国は連王の支配国家のため、連王直属の部下であるプレイヤーは易々と城へ入ることができる。

 そして憎い御坂を殺す――この際注意しなくてはならないのは、御坂を「ダチのウィル」が庇うこと。プレイヤーのAGIが低いとダチのウィルを誤って、ぶっ殺してしまうことになる……ダチのウィルも嫌いなので殺すには殺すのだが、(国王を殺しても、お咎めはない)ダチのウィルが死ぬと御坂は元の世界へと戻ってしまう。


 そう、御坂を殺すことができなくなってしまうのだ。


 御坂エンドの時、団長がウィリアムを殺さないのは、御坂を終末までこの場に留めて、巻き添えにするためだったと、この御坂殺しに失敗して気付くのだ。


 かといって、連王の元に送られてきてから殺害するほうが楽……でもない。

 御坂に心酔している取り巻きがいるので、そいつらの屍の山を越えて行く必要がある。おまけに御坂は魔法を使えるので、けっこう厄介。

 どうしてプレイヤーは回復魔法しか使うことができないのだ! 攻撃魔法が使えたら、きっともっと! たくさん殺せるのに!

 逆ハー要員ももっと殺害できるのに。


 ……殺害スキル、早く欲しいなあ。でもアルテミスを無力化しないと捜索は無理だ。


 殺害スキルが手にはいったあかつきには、獲物はレイピアにしようか、ククリにしようか? 心躍らせながら、学園内で聞き込みをしまくった結果【親衛隊スバル】【風紀委員リト】【平凡三年生セオドール】【優等生エーリヒ】この四名が、今回アルテミスを襲う面子だと判明した。


 さすが安定のエーリヒ!


 実はこのエーリヒという男、高確率で強姦メンバーに入ってくれるBW界きってのお役立ちクズ。エーリヒのエは「エロ」のエ! 言われるくらいに。

 そんな彼は今回もメンバー入りだ。

 このエーリヒ、見た目は優男。線が細くて顔立ちも女性的。茶色い柔らかい頭髪に、桜桃のような色合いの唇……その見た目と、お菓子作りが上手で甘いものが好き。コーヒーは苦手だよ――という、女性を安心させるスキルを武器に”女を”強姦する。(受パーツとも重なってはいるが)

 ”女を”と強調しなくてはいけないのがBLのお約束。生物として違う扱いだから、女が――ではなく、女に興味がある男は異質であり、落伍者であり、クズである。そうでなくともエーリヒは普通にクズだが。

 安定のお役立ちクズ・エーリヒは、強姦した女性を強請って色々なことをする。彼が優等生なのも、女性教員を強姦し、それで脅してテスト問題を得ていたり、成績表に手心を加えるように指示しているため。それを抜きにしても成績は良いようだ。一人の教員だけで全成績の評価が決まるわけでもないだろうしな。

 そんなあまりにも立派なお役立ちクズで、名前が似ていることと、優等生でもあることからエリートクズと呼ばれることも珍しくない。


 アルテミス無力化攻撃部隊(強姦)を指揮するのはエーリヒ。俺はそれを上手く使うだけ。


 上手く使う――

 この行動は「阻止」することも可能。仕掛けるのもプレイヤーなら止めるももプレイヤー。

 自作自演極まりなしな行動だが、これは元々「ゲルハルトを強姦した四名」を捜し出すための手段の一つとして存在している。

 ”ゲルハルトを強姦した四人の男は女を強姦しない”という確定事項がある。――念写した写真にそういう文字が浮かんでいやがった。BLだ、それもありだろうし、プレイしてみると事実でもあった。

 その確定事項から、犯人を選別する際にどうしても分からない場合、女を拉致監禁し、犯人なのか? それとも女が好きなのか分からない奴に対して「メモ」を残す。

 そのメモに誘われて女が監禁されている場所に来たら無罪――どこがどう無罪なのか? 悩めるところだが、この世界では無罪。

 プレイヤーは犯人かどうかを判別するために、隠れて見ている。

 部屋に入った時点で犯人ではないことが確定するので、止めることも可能。

 監禁される女は学園の女子生徒が主であったが、現在はアルテミス以外がこの被害にあうことはない。

 精々注意事項は、妹好きの妹を監禁すると兄が助けに来てしまうので、回避しないとせっかくの「メモ」が無駄になってしまう。

 「メモ」には使用回数制限があり四回のみ。


 ゲーム上では「メモ」で済んだが、この世界では俺が書かなくてはならない。メモ用紙も鉛筆も大量にあるが、文面が思いつかず、毎晩悩んでいる。こんな悩みを抱えているやつも、そう多くはないだろう。”諸君に褒美を取らせよう”違うな。”貴兄に折り入って頼みがある。この場所にいる女をなにも言わずに”……結構良い感じだ。良い感じになったら駄目じゃないか? 自問してみるが、リアル連続殺人鬼の俺だ。バーチャルで犯罪教唆したってどうってことないだろう。


 監禁そのものは、当初は男子生徒も可能で、同じように「メモ」を残して、部屋まで誘導することができる。

 もともとBWはBLゲームなので男子を拉致監禁するのがスタンダード。

 以前は男子生徒を捕まえ「怪しい奴」を誘い出してみたのだが、犯人以外にも男性好きは潜んでいるので、犯人確定には使えないトラップであった――犯人以外も来てしまう。男子学生なんてソレしか考えてないのだから仕方ない。

 そのうち女子生徒も監禁できることに気付いた人と、うざい探偵女ティナも監禁できることに気付いた人がほぼ同時に現れた。


「学園の生徒以外も監禁できる? ってことは……」


 そこでアルテミスにも通用するのでは? ―― それは成功した。その副産物として連王は興味を持たず、アルテミスの正式な恋人ディアーナも暗黒面に落ちてヴォルデモートが出てくると、良いことづくしだ。


 ……アルテミスが見つからないな。妹好きの男はまだ連王に落ちていないが、そろそろ危険なので――彼の好感度を下げて、エンディングを迎えないように調整しよう。また無力化攻撃部隊を捜すの面倒だからさ。


 妹好き男の好感度の落とし方は簡単。妹を連王の妾にするだけでだだ下がり……というか、フラグが全滅。決してエンディングを迎えることはない。

 妹には恨みはないが、この為の駒なのでその運命を受け入れてくれ。

 築き上げた信頼や友好度を破棄して妹を入手した連王と、哀しみにくれる兄を放置して、俺は探索を再開する。

 早朝ルイト少年を見かけることもあるが、無視だ無視。身を隠してやり過ごす。

 俺が出会わなくてはならないのはアルテミス。


 アルテミスがこの国へとやって来る方法は瞬間移動――突然街に現れるのだ。瞬間移動した経緯はラインハルトがアルテミスを庇って死亡、そのショックで単身ワープしてしまう。すごいね、悲しいとワープするとは。これだから主人公補正持ちはいやだよ。


 そんなアルテミスが現れる場所は五つ。

 城壁の入り口近く。裏路地A。裏路地B。空き家。そして王宮門前。

 これは無力化部隊と親交を深めながら、この五箇所を行き来している。連王からの命令? それは、後まわしだ。

 あとティナがゲルハルト殺害(?)犯を挙げることはない。ティナは絶対に見つけることができないように設定されており、無実の人を犯人呼ばわりして人々に白眼視される――このティナ、無駄に権力持ちなので無実の人を捕まえて牢獄に放り込める。酷い女だ。

 俺は無実の人を釈放するためにも、真犯人を捕まえなくては……なのだが、いまはそれどころではない。とにかくアルテミスだ! アルテミスを無力化したら、お前等を救ってやるよ。お前等を救ったことで「恥をかかされた」とティナに目を付けられて、シルヴィアの証拠を隠してるのを探し出されることになるんだが――真犯人を挙げないと攻略対象が増えないから仕方がない。その中に次のイベント用フラグ【死亡】キャラクターが含まれているしな。

「居ないなあ……次はAポイントに行くか」

 アルテミスが地雷と言われるのは「絶対に傷つく質問しかない」ところにある。アルテミスを保護して意識を取り戻すと、幾つかの質問をする。

 ラインハルトが死んだことで傷つき、喋ることができなくなっている彼女は(もう一つ理由もあるけれど)首を縦に振ったり横に振ったりして答える。その問題は三択問題なのだが、どれを答えても”間違い”

 例えば「あなたにとって大切な人は誰? 1.両親 2.恋人 3.自分」という設問がある。【1】の両親を選ぶと傷つき泣き崩れ、連王がその涙に心揺さぶられる――落ちつけ連王。お前、童貞じゃないだろうが。

 【2】を選ぶと【1】と同じく泣き崩れ……以下省略。【3】も同様。

 【1】は両親との確執があり―― 成績でしか自分のことを評価しない。三人きょうだいの長女で、いつも我慢を強いられてきた。この世界に来る直前、成績が下がったことで両親に叱責され、虐待まがいのことをされた……ということが、後々ミニゲームで分かる。

 【2】は最愛のラインハルトが自分を庇って死んだ。大切な人が自分を庇って死んでしまった。自分にはそんな価値などない。ラインハルトは神聖帝国に必要な人だったのに。【3】と被る感じ。

 アルテミスに対する質問は彼女は泣いて傷つき、そして質問した者は軽蔑される。そう、全て。

 アルテミスが喋ることができるようになってからも、好感度上昇イベントである”質問”が頻繁に発生し、こんな質問が登場する。

「身分制度をどう思う? 1.必要 2.伝統 3.お前に関係ない」

 どれを選んでも現代からやってきた、身分制度を疑問に思う女子高生の怒りを買い、滔々とご高説を聞くこととなり、連王はその開明的なご高説に感動して、アルテミスはこの国の女とは違うと――


 選択肢がそれしかないんだから、仕方ないだろう。選ばないと先に進めないんだから。昔あったよなあ、どの選択肢選んでも「日和見だ」とか「力が正しいと思ってるのか」みたいに責められるゲーム。


 一問や二問ならまだ耐えられるが、この手の質問が三十問超えてくると嫌になってくる。そしてその度に「アルテミスは違う」と逆ハー要員たちが持ち上げる。この繰り返し。

 ああ、思い出した! 好きな色当てクイズで選択肢に好きな色が含まれておらず、嫌いな色やトラウマな色しかないというのもあった。お前のトラウマなんぞ知るか!

 予備知識なく初見プレイの場合、アルテミスはは神聖帝国の出来事に深く傷ついているので喋ることができない状態が続き、そこに彼女を捜して鞍替えしたバートラムたちがやってきて――初めて異世界からきた十六歳の女子高生であることを知る。

 その頃には連王はすっかりとアルテミスに惚れて、覆すことは不可能に。


 早く無力化して井上スキルを手に入れたい。そしたら……一度くらいは生かしておこう。”絶対地雷異世界トリップ女子高生勇者逆ハーのアルテミス”と”ウィルはダチの魔法使い御坂香”の対決は見物だ。

 アテクシな御坂の逆ハーが崩れていく様は爽快だ。愛人たちの女の争いを鼻で笑っていた女が追い詰められてゆく様は本当に楽しい。どうしたんだい? 御坂くん。君はすっかり嫌な女になってるよ。逆ハーVS逆ハー。より男に好かれるほうの勝ち。二十七歳と十六歳じゃあ勝負にならんと言う人も多かった。肌のハリとか、ババア調子に乗るな、とか……あっ! 見つけたアルテミス!


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