ファーストバレンタイン
初めての「バレンタインデー」
私はがんばった。
ずっとずっと大好きだった、初恋の先輩に渡そうとした。
先輩のこと、名前しか知らなかった。けど、ドキドキした。
私は告白しようと決めて、手作りでチョコを作った。クラスの友達に図書館から作り方の本を借りてるとこ見られて、冷やかされた。
恥ずかしくって、それでも好きで。
先輩を呼び出して、
「好きです。付き合ってください」
自分でも分かるくらい顔を赤くしながら、チョコを差し出した。すると先輩は、頭に手を当てて、
「迷惑なんだよ。そういうの。何考えてるの?大して俺のことしらねぇくせに」
そういってチョコを強引に取り上げて、思いっきりぶん投げて、背を向けて帰っていった。
私は何がおこったか全然分からずに、その場にしゃがみこんだ。
違うよ。私の好きな先輩はオーケーはしてないかもしれないけど断るとしてももっと、優しく、こう・・・。
泣きたくても、泣けなかった。何でかわからないけど、もやもやした。先輩は・・・?
チョコを取りにいく気になれず、ずっとしゃがみこんだままになっていると、がさがさと周りで音がした。
「誰?」
私は声をあげて顔も上げた。同じクラスの、男の子だった。頬には私が流せなかった涙がうっすらと流れていた。
男の子は無言でチョコの方に歩いていくと、拾い上げて、
「はい」
とだけ渡してきた。なんて無神経なんだ。人がどういう気持ちかも知らないで。
「いりません」
私はツン、とそういうと立ち上がって後ろを向いた。男の子は、
「ダメ・・・だよ・・・。」
とポツリと呟いた。
「何がダメなの?アナタ見てたか知らないけど、私たった今フラれたんだ。何がダメなのよ。ひどいフラれかたされてさ」
私は声を張り上げた。
「・・・泣きなよ。泣いて。いいんだよ。辛いときに泣かないのって、嫌じゃん」
男の子は今にも泣きそうな震える声で言った。
え・・・。思いがけない言葉に、私は心を見つめなおす。
先輩は、先輩は。優しくて、カッコよくって。ドキドキする。でもそれは、私のただの妄想で。
結局、私は先輩のこと、何も知らないだけだったんだ・・・。
何にも知らないまま告白して、何にも知らないままフラれて。
バカじゃん、私。
私は泣いた。バカだ。何先輩のせいにしようとしてるんだ。結局フラれたのは自分のせいじゃないか。
男の子のほうを向きなおしてわんわん泣いた。男の子も何故かわんわん泣いていた。
「このチョコ、どうすんの?」
男の子は涙を手で押さえながら言った。
「あー。多分ぐしゃぐしゃになっちゃってるだろうね・・・。持ち帰って自分で食べるよ」
「俺・・・もらっていいかなぁ」
不意に言われた言葉に、私はドキッとした。
「いーよいーよ。気を使わなくて。味も自信ないし」
私が言い終えると同時に男の子は包みを開けて、バラバラに砕け散ったハート型のチョコをひと欠片口へ持っていった。
「なんだよ・・・。チクショー。うまいじゃねぇか・・・」
男の子は複雑そうに食べた。
私は初めて、人を好きになった気がした。
うーん、ばらんすぶれいく!!!