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ゴブリンキングを倒すと、ディートが声をかけてきた。
「やるじゃねぇか。俺の手助けは必要なかったかな?」
「はい。いなくてもよかったです」
:コラwwww
:確かにボス戦では、このおっさんあんま役に立ってなかったけどwww
:途中までのゴブリンとの戦闘では役に立ってただろwww
レイカが素直にうなづくと、いくつかコメントが流れていった。
「短い間だったが、アンタと旅ができてよかったぜ。せいぜいがんばって生き延びるんだな」
ディートは気取った笑みを浮かべながら、声援をくれる。
:おじさんありがとう!
:おじさんのことは忘れないよ!
:ボス戦ではあんま役に立ってなかったけど、おじさんがいてくれてよかった!
視聴者たちも、ディートのセリフに反応してコメントを打ってくる。とても良い雰囲気になっていた。
レイカは微笑みながら、モニターを見つめる。
「ディートさん。わたしもあなたと旅ができてよかったです。てい!」
主人公が大剣を振るい、ディートに斬りかかった。
:うおおおおおい!
:ちょっ……!
:なにしてん!
:いきなり何してんだ!
:だからなんでNPCを攻撃するんだよwwww
:全方位にケンカを売っていくスタイルwww
斬りつけられたディートは頭上に減少したライフが表示されると、ロングソードを抜いてくる。
「やはりこうなったか! おまえが俺の親友を殺したことはわかってんだ! その大剣と鎧はブルーのなんだからな!」
:バレてたwww
:バレてたかwwww
:ゲームだから親友の大剣や鎧を使ってるのはスルーされてるのかと思ってたけど、バレてたwww
「ちなみに、このまま森を出ようとしたら、ディートさんから不意打ちをくらってピンチになりますね。そうなる前に、始末しておくのがオススメです」
:マジかよwwww
:このゲームほんとヒドいなwww
:そんなこと笑いながらオススメしないでくださいwwww
:そもそもレイカちゃんがブルーを攻撃しなければ、こんなことにはならなかったwwww
レイカはディートと敵対すると、素早い指さばきでコントローラーを操作する。装備画面を表示させて、大剣から大斧に装備を切り替えた。
:え? なに? いまなにしたの?
:装備を大斧に切り替えた!
:なにしたのかわからんかったwwww
:スチャチャチャカチャッって感じだったなwww
:装備切り替えるの速すぎるwww
:手際よすぎだろwww
:まるで熟練の暗殺者のようだwww
:ゲーム内でレイカさまはキラーマシーンなのでwww
:なんなら現実でもキラーマシーンだよwwww
「ブルーの仇を討たせてもらうぞ!」
ディートはロングソードを振って攻撃してくる。
……が、主人公にローリングをさせて余裕で回避してみせる。
「短い間とはいえ、一緒に戦ったのでディートさんのモーションは見切っています。それに先ほどのゴブリンキングに比べれば動きも遅いので、簡単に避けられますね」
新たに入手した亜人王の大斧を叩き込んで反撃する。直撃したディートのライフは大幅に削れて、続く二発目を当てたら力つきた。
「すまねぇ……。ブルー……」
ディートはそうつぶやきながら、地面に倒れる。
「おぉ! やっぱりこの大斧は攻撃力が高いです!」
:大斧の威力に感激してるwww
:さっきまで一緒に戦ってた仲間が死んだのに、そっちを見向きもしないwww
:サイコパスwww
:てか二発で終わったなwwww
:ボスが使ってた武器だけあって、大斧は火力が高い!
:大斧の威力に感動するのもいいけど、少しはディートさんに関心を持ってあげてwww
:死んだ仲間よりも、新しい武器のほうに興味があるレイカさまwww
なんだかコメント欄では、レイカが危険人物のように扱われていた。
レイカはコホンと咳払いをすると、神妙な顔つきになる。
「悲しいですね。どうしてこの世界は、こんなにも残酷なんでしょう」
そう言いつつ、レイカは主人公にジェスチャーで「バイバイ」をさせて、倒れているディートにむかって手を振った。
:残酷にしてるのはあなたですwww
:ジェスチャーでバイバイさせるのやめいwwww
:死体に手を振るんじゃないwwww
:ガチでやばい映像に見えるんだがwww
:ぜったい悲しんでないだろwwww
「さて、ディートさんとのお別れも済みましたし、あとは……」
主人公を倒れているディートのもとまで近づけていき、ガサゴソとあさらせる。
『友情の鎧を入手した』と表示されて、ディートが装着していた緑色の鎧を手に入れた。
「友情の鎧をゲットです。防御力が高くて、いい鎧なんですよ」
:なんですよ、じゃないよwwww
:だから死体をあさるなwwww
:やっぱり悲しんでないな、この血塗れ女wwww
:強い装備を入手するために、出会うNPCを全て葬っていくwww
:もはや完全に野盗なんだがwww
視聴者たちの様々な感想がコメ欄を流れていくと、鐘の音が鳴った。
:鐘の音?
:今度はなんだ?
:レベルアップか?
視聴者たちが推測を書き込んでいくが、そのどれとも違っていた。
ゲーム画面には『暗黒騎士に転職が可能になりました』と表示されている。
「どうやら暗黒騎士になれるみたいですね」
:暗黒騎士!
:上級職的なモノか!
:こんな職業あったのかよwww
:前にプレイしたことあるけど、知らなかったwwww
:ネットで情報あされば出てくるぞ!
新たな職業が解放されると、コメント欄が驚きにつつまれる。
「どうやら暗黒騎士の存在を知らなかったプレイヤーもいるようですね。この職業は、序盤でブルーさんとディートさんを倒さないと発現しない特殊なものなんですよ」
:隠し職業か!
:まともな倫理観があるなら、絶対に発見できない職業だwww
:だからNPCを倒してたのかwwww
:隠し職業を出すためとはいえ、NPCを倒しちゃうのはどうなんだ?
「確かに暗黒騎士は解放するつもりでしたけど、ブルーさんとディートさんを手にかけたのは、装備がほしかったからですね」
:のほほんと笑いながら、やばいこと言ってるぞwww
:異世界でもこんな感じで冒険してたのかと思うとゾッとするなwww
:ゲームだからだろ? ……たぶん
気づけば結構な時間が経っていた。就寝時間も近づいてきたので、そろそろ配信を終わらせる。
「目標としていた最初のボスを撃破できましたし、今日のゲーム配信はここまでにしておきます。よかったら、みなさんもダークソルジャーをプレイしてみてくださいね」
:レイカちゃんのプレイを見てたら、遊んでみたくなったよ!
:レイカさんのプレイ動画を参考にしようと思います!
:レイカさまの野盗プレイを参考にするんじゃないwww
:もう通販サイトではダークソルジャーがランキング上位にのぼってるんだがwwww
:SNSでも「ダークソルジャー」「野盗プレイ」「てい!」がトレンド入りしてるぞwwww
:「てい!」もかよwww
:「てい!」は仲間を殺すときの掛け声www
:早くもレイカさまの影響が出始めてるなwwww
:この配信も同接が百五十万いってるぞ!
:配信サイトの日間ランキングでも30位まであがってる!
「ど、同接百五十万に、ランキング30位……!」
その数字を知らされると、レイカはギョッとして椅子からすべり落ちそうになる。
「ダンジョン配信よりは視聴者数が下がると思っていたのに……まさかここまで同接が増えるだなんて……」
驚くべき結果に、レイカは目を白黒させる。だけど、目標であるランキング1位まで、着実に近づきつつあった。
:椅子からすべり落ちそうになってるwwww
:ランキングで人気Vチューバーを何人か抜いたぞwww
:とはいえ、まだ上位には他にもVチューバーがいるwww
:今回の野盗プレイは話題になってるから、配信終わってもランキングあがりそうだなwww
:NPCを殺害してるところが切り抜かれて拡散されてるwww
:切り抜き動画がめっちゃ再生されてるなwww
:仲間殺しの小林とか呼ばれてるんだがwww
:仲間殺しwww
:言い得て妙wwww
またしても物騒な呼び方をされているようだ。不服ではあるが、NPCを手にかけたのは事実なので、否定したくてもできない。
「そ、それではまた次の配信で」
レイカは微妙な笑みをつくりながら、配信を終わらせる。コメント欄には「おつかれ!」「また見にくるよ!」「おもしろかった!」という書き込みが流れていった。
配信を終えた後も、アーカイブにある動画の再生数は伸びていき、日間総合ランキングの27位までのぼることができた。




