灼熱の駅
雫川と付き合ってから、早2カ月ちょっとの8月後半。俺はこの県の一番大きい駅に来ていた。
この夏休みは平穏そのものといったところで、波風が何も立つことなく穏やかに過ごせていた。
……ほんと、雫川と付き合っていると知れ渡ってからの学校生活は俺史上稀にみるあれ具合だったからな……。
話したことないやつにも根掘り葉掘り聞かれたり、妬みを持ってるやつから睨まれたり嫌がらせをされたり、心休まる時間がほとんどなかった。おかげで夏休み前最後のテストも散々だったし……。事情を知らないやつの感情って恐ろしいな。
まあ、それはそれとして良い面もあるんだけど、雫川と一緒に居られるっていうのは悪くない。性格良いし、容姿も良いし。
そんなことを考えながら俺は駅構内を進んでいく。この県は田舎のほうではあるが、まあまあ、人の出入りはある。駅の建物を出るとバス停があり、バスたちが出て行っては入ってき、入っては出ていってを繰り返していた。それを横目に俺は人の出入りの邪魔にならないところで立ち止まる。
スマホをちょこちょこイジリながらボーっとしていると、1分も経たないうちに俺はとけそうになっていた。
身体が暑さに適応できておらず、もう夕方だというのに全く持って汗が止まらない。身体中の水分全部持ってかれるのでは、これ……。もうちょっと手加減してくれませんかね……、太陽さん。
「お待たせ!」
太陽に向かって恨めしい目線を送っていると、後ろからそんな声が聞こえてきた。そこにはいつもと雰囲気の違う雫川がいた。
いつも流している黒髪はお団子頭にまとめられており、赤地に白の花柄模様の浴衣の装いだ。帯は白色で、全体的に派手な色合いな感じだが、それが雫川の綺麗さに磨きをかけている。
白い肌に良く映えてるな。……本当、外見綺麗だよな、こいつ。
「ああ、そんなに待ってないけどな。」
「……微妙。そこは今来たとこって言うところよ。」
「悪いな。俺は嘘をつけないたちで。」
「そう。……じゃあ、今日の私可愛い?」
……なんだその質問は。嘘をつかないとさっき言った手前、本当のことしか言えないじゃないか。……はめられた。
「まあ、可愛いんじゃないか。」
実際、俺の正面で佇んでいるこいつをチラチラ見ている人はいる。そういう人たちは十中八九目を引かれているのだろう。
が、雫川はこの答えが気に食わなかったらしい。
「……なんで、客観的視点。泰輔君はどう思うの?」
「……可愛いとは、思います。」
俺が覚悟を決めてボソッとそういうと、雫川は満面の笑みになった。
「それを聞けて満足♪じゃあ、行こっか。」
……クソッ。完全に雫川の術中にはまってしまったな。




