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学校一の美少女が日々キスを求めてくるんだが  作者: 早瀬 渚
年明け

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16/18

ドキドキする一日

 年も明け、冬も深まってきた一月中旬の土曜日、俺は見慣れない道を歩いていた。

 よくある碁盤目の住宅街といったところだが、俺が住んでいる住宅街より少しだけアスファルトの車道が広く感じる。これなら、車社会であるところのこの県でありがたがる人がたくさんいることだろう。

 電信越しに見る空は淡く透き通っており、冬の空という感じがして好きだ。

 ……と、まあ風景は人の営みを感じて良いのだが、足取りのほうは激重だった。

 今日は瑠璃の親たちと会う日だからだ。

 はぁ……、覚悟はしていたものの憂鬱だ。瑠璃から提案された時は意を決して行くよ!と言ってみたものの昨日の夜から心臓バクバクだった。何なら少し寝不足である。

 足が重い。鉛どころか象さんでも引っ張ってるんじゃないかと思うくらい思い。行きたくない気持ちのほうが強い。……まあ、それでも行くしかないけど。

 と、何とか足を動かしていると、瑠璃から伝えられていた家の前についた。そこは他の家とは一線を画して大きな家だった。豪邸と言っても差し支えない気がする。車が2台分止めれそうなガレージがあり、玄関も腕いっぱい広げたくらいの大きさがある。正面から見て右側のほうには広い庭があり、大きな2階建ての家である。

 着いた時はチャイムを鳴らしてと瑠璃に言われていたので、チャイムに手を伸ばす。

いや、ここは心を落ち着かせてから押そう。一度深呼吸をして……いや、もう一度しよう……いや、もう一回……としていると玄関のどがガチャッとあいた。

「何してるの?」

 そこには不審そうな表情の瑠璃が顔をのぞかせていた。

 普段彼女は髪を下ろしているのだが、一つに縛ってポニーテールにしており、白の長袖シャツにデニムを履いていた。

 いつもと違う彼女の姿に少しドキッとしてしまう。ラフな姿でも可愛いな、この人。

「いや、ちょっと自問自答してるところだった。」

 俺がそう言うと、彼女はクスッと笑う。ポニーテールが揺れ、猫にとっての猫じゃらしのようにボーっと見てしまう。

「何それ。まあどうぞ、準備出来てるから。」

 言って、彼女は俺を家へと促す。

 家に入ると、広い玄関がお目見えする。さらに、天井が高く、部屋も視界に入るだけで一階に5個ほどある。外から見ても思ったが、なかなか豪華な家だな。

「それにしても広い家だね。」

「サキュバスは人よりバイタリティがあるから、お金を稼ぎらしいのよ。仕事を長時間できて成果を上げやすいし、他の人よりちょっと頭も良いらしいし。」

 まあ、たかが知れてるけどねと付け加えながら彼女は少し前を歩く。

 どこに連れて行ってくれるのだろうかと少し緊張しながら付いていっていると、急に勢いよく横のドアが開き、大きな声が聞こえてきた。

「あ!君が泰輔君!?瑠璃から話は聞いてるよ!優しい子なんだって!?」

 その声に俺は驚いてしまい、身体をビクッと震わせる。

 びっくりした……。瑠璃の家族だろうか。声の大きさは似ていないが、どことなく声音は似ている気がする。それに、顔も似てるな……。お姉さんだろうか?

「お!やっと連れてきたか!いつもいつもなかなか連れてこないから、待ち遠しかったぞ!」

 と推測していると、後ろから男の人が出てきた。この人も大きな声だったが、重厚感のある所謂イケメンボイスだった。そして、ガタイも良くとても若い人に見えた。……お兄さん?

「この人が瑠璃の彼氏?おお、しゃぶりつくしがいがありそうな子ね♪」

 と、もう一人女の人が最初の女性の横からひょっこり顔を出す。この人は瑠璃と見た目も声もあまり変わらず、身長が少し大きいといったところくらいだ。……年子のお姉さん?もしくは妹?

「あ、初めまして……」

「ちょっと!もう今日は私の部屋で勉強する日なんだから、あっち行ってて!」

 俺が3人に対して挨拶しようとしていると、瑠璃が割り込んできた。

 そして、瑠璃は俺の腕を持ってズカズカ進んでいく。後ろからは引き止める声が聞こえてくるが、瑠璃はお構いなしにどんどん進む。そして、階段に足をかけ上がっていく。

 ……なかなか癖が強そうな家族だな。 

「ごめんね。うるさい人ばかりで。」

「いや、賑やかで良いと思うが。」

「そんなことないよ。いつも私のやることに口出してきてさ。もっと放っといて欲しいんだけどね。」

 瑠璃は唇を尖らせながら、文句を垂れる。まあ、気持ちは分からないでもないが。

「でも、本当にほっとかれるのもそれはそれできついぞ。」

「……まあ、そういうもんかな。何も話しかけられないよりは良いかもね。……でも、まああの人たちサキュバスだから。……私もだけど」

 瑠璃は何かを呟く。後半部分は聞き取れず、ただ諦観している様子だけ感じ取れた。

 そして、2階にあがって少し歩いたところにある部屋の前で立ち止まった。

「どうぞ。ここが私の部屋だから。」

 言って、瑠璃はドアを開ける。そこはきちんと整頓されており、とてもきれいな部屋だった。白を基調としたベットも掃除されており、勉強机と部屋の中央にある丸机の上も整理されていて、部屋の端にある本棚も綺麗に並べられており、彼女の几帳面さが窺える。

「これが瑠璃の部屋か……。」

「そんなマジマジ見ないでよ。恥ずかしいでしょ。ちょっと掃除できてないところとかあるし。」

「……え?どこが?」

「本棚のほこりとか壁の汚れとか床のほこりたちとか……泰輔君が来るまでに終わらなかったんだよね。」

 言いながら瑠璃は明後日の方向を向く。

 ……終わってないの?これで?

「いや、俺の部屋の100万倍綺麗だから気にしなくていいぞ。」

「100万倍って、それゴミ屋敷通り越してるんじゃない?」

「まあ、瑠璃基準で言えばゴミ屋敷かも。」

 全然、お菓子の包装の袋とか落ちてるし。恐らく見せたら引かれるだろう。

「……瑠璃って呼ばれるの、まだ慣れないのよね。」

「……安心しろ。多分、俺のほうが恥ずかしがってる。」

「堂々と言うことじゃないでしょ、それ。」

 言いながら瑠璃はクスッと笑う。なんかどう転んでも可愛いなこの子。

「まあまあ、座りなよ。お客様。」

 言って、瑠璃は机の下に置いてあった座布団を引っ張り出す。俺はお言葉に甘えて、そこに腰を下ろした。

「ところで、さっきのお三方って兄弟?」

 俺がそう聞くと、瑠璃は一瞬フリーズした。

「え!?いや、違うよ!最初に声をかけた二人がお母さんとお父さんで、最後が姉!

「え!そうなの!?……うわ、思ったより大きな声が出ちゃった。」

「そんな大きな声を出してる泰輔君初めて見たかも。……可愛い。」

 瑠璃はニヒルな笑みを浮かべる。……サキュバスの本性が出てません?雫川瑠璃さん?

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