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学校一の美少女が日々キスを求めてくるんだが  作者: 早瀬 渚
寒さが深まっていく季節

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12/18

12/24の朝

 空気も人の感情も何だかフワフワしている今日この日。


 テレビのニュースからはイルミネーションやらクリスマスケーキやらの話をしており、お天気キャスターの人がどでかいクリスマスツリーの前で、天気予報を読み上げたりしていた。


 イエスキリストが生まれた日というだけで、現代の人にとって何でもないただの平日なはずなのに無条件に浮ついているこの空気が俺は少し苦手だった。


 クリスマスという理由だけで、恋人同士が集まって特別な日だと祝いたくなる気持ちがよく分からなかった。


 別にクリスマスなんて恋人同士だけでなく、老若男女全ての人が特別だと感じているのだから、別の二人独自の特別な日を作ればいいのにと思っていた。


 と、まあそんなことを言っても、もうどうでもいいと言えばどうでもいいが。


 ちなみに、俺の高校はクリスマス平日論に則り、今日から冬休みだというのに補習という謎の3時間がある。


 ……いくら、クリスマス平日論提論者の俺でもこれに関してはストレスがたまる。


 冬休みと銘打ったのなら休ませてくれよ……。だまし討ちみたいで精神的ダメージが倍である。


「泰輔!」


 と、ため息をつきながら自転車置き場に自転車を置いていると、背後から明朗快活な声が聞こえてきた。


 肩にくらいの長さの金色っぽい髪を揺らしながら、クラスメイトである長谷がこっちに近づいてきた。


 今日も元気で良いことですね。


「ああ、おはよう。」


「おはよう!もう、最悪だよね。クリスマスイブに学校があるなんてさ。」


 長谷は唇を尖らしながら文句を垂れる。多分、意味合いは違うけど気持ちはわかる。


「まあ、クリスマスに居場所がない人たちにとって、合理的に人が集まる場所に来れるのは悪くないけどな。」


 まあ、俺は大勢人がいる場所あまり好きじゃないから思わないけど、と思いながらそう言うと長谷にジトッとした目を向けられた。


「……それ、今の泰輔が言ったらかなりの嫌味に聞こえるよ。」


「……ああ、そういえば彼女いるのか、俺。」


「性格めっっっちゃ悪く映るよ!その言葉。多分私以外の人に言ったら、最悪学校に来れなくなると思うよ。」


「…………確かに。肝に銘じておきます。」


 そんなことは……言いかけたが、逆の立場で考えてみると同意せざるを得なかった。あんまり、他人のカップルを恨めしい気持ちで思わない俺でも何かの拍子に骨折でもしないかなと思うので、カップル敵対兵器の人に言ったら色んな意味で殺されるだろう。


 危ない危ない言った相手が長谷で良かったと思っていると、長谷の雰囲気が少しマイナスになっている感じがした。


「……それで、今日は雫川さんと会うの?」


 いつもより弱弱しい声で恐る恐る長谷はそう聞いてきた。


 ……まあ、ここでごまかすのも良くないだろう。


「ああ、まあ一応な。」


「……そうだよね。……ま、楽しんできてね。」


 言葉では祝福しているが、彼女の表情は悲しんでいるように見えた。


……こういうときの言葉って皆さんどうしてるんだろうな。こういう状況になったことない俺には分からない。


「ああ。ありがとう。」


 とりあえず、俺がそう返すと、少し間が空いた。


 長谷は顔を下に向けており、前髪で表情は全くうかがえなかった。


 なんて声をかけていいか分からず、立ち尽くしていると、急に長谷は勢いよく顔を上げた。


「……ま!私は友達とクリスマスパーティーするからね!泰輔より楽しんじゃうよ!」


 言って、元通りのキラキラした笑顔で長谷は歩いていく。その姿を見た俺は心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。友愛や尊敬、凄いといった感情とは少し違う気持ちがほんの少しだけ湧き上がってきていた。


 この感情の正しい答えは分からないが、困惑という言葉が一番正しい気がした。


 ……俺は果たしてどうするのが正解だったのだろうか。


……いやこれからもどうしていくのが正解なのだろうか。

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