パパ活はないようだが
早速俺は美咲にパパ活のことを伝えた。
「パパ活、なんのこと?」
「だって最近ブランドバッグを買ったり旅行に行ったりしているじゃないか」
この俺の発言を聞いて美咲は一瞬よくわからない表情をした。
「あのさ、あのバッグは私が前から欲しいと思ってお金を貯めて買ったものなの。あなたは旅行って言うけど会社の出張だから、仕事だから」
そう言われて、そうだったかも?と思ってしまった。よく覚えていない。でも苦し紛れに返答する。
「でも、ここ最近なんかおかしいし」
「うん、具体的には?」
「晩御飯を用意してくれなかったり、弁当も前は作ってくれていたのに今は作ってくれないし」
「うん、晩御飯はあなたの度重なる残業と接待で用意しなくていいってあなたが言ったよね?」
その通りだった。建前上は残業、接待というなのもので帰りが遅くなっていた。
「弁当も近くでランチを食べるからいらないって、あなたが言ったわよね」
確かに、全て俺が以前言った通りの行動だ。でも、美咲は俺が何て言おうとも自分の行動を変えることなんてしなかったのに。
「あなた言っていたよね、自分で考えて行動しないヤツは嫌いだって」
「それは、そう、言ったかもしれないけど」
「だから私は自分で考えて行動している、それだけ」
そう言って美咲は部屋に戻った。
おかしいと思うのに、それらの行動は違うという。
これはどう考えてもおかしい。
俺は不安になったこの心境を真紀に相談した。
「別れちゃえば」
「え?」
「前から言っていたじゃない、美咲は気が利かないし鈍臭いって」
「それは、そうだけど」
でも別れたい、離婚したいと思っていた訳じゃないんだ。ただ、美咲を、気が利かない、鈍臭いのを見ていると安心するというか。
「いい機会なんじゃない?」
何が、いい機会なんだろう。
「離婚するのに」
そうだろうか、そうなんだろうか。
思考がぐるぐる回ってよくわからない。
ただこの時、離婚という言葉がどこか酷く魅力的なものに聞こえた。