カトウリナとしての人生
私の名前は加藤里奈17歳の女子高校生。
エスカレーター式の女子高に通っている。所謂お嬢様学校というやつだ。叔母がバレエ教師なので従姉妹と16歳迄クラシックバレエをやっていたれけど、将来を決める登竜門である国際コンクールでボロ負けしてきっぱりすっきり踊るのは辞めて高等部進学と同時に剣道部に入部した。
だってアレじゃない?『乙女ゲームをプレイ途中で死んでしまった処女は乙女ゲームに転生できるという伝説がある』ってSNSに書いてあったしワンチャン生まれ変われるなら剣が振るえた方がいいかな〜って。まぁ私もバカじゃないからそんな伝説を本気になんてしてないけど。夢みるのは自由じゃない?
従姉妹が誕生日に今いちばん人気っていう乙女ゲームのソフトをくれたんだけど、いちばん人気って言うだけあってめちゃくちゃハマれる。いつもは俺様キャラやドSキャラにハマる私がこのゲーム『ロイヤルラメント』では正統派王太子アルブレヒトで、金髪碧眼の彼が物思いに耽る様やトラウマから衝動的になるところなどキュン死しそうになる。それだけで、ご飯三杯は戴けるって感じっ♡
アル様の美しいお顔が苦悩に歪むのをニヤニヤ想像しながら歩いていた私は、赤信号に気づかず横断歩道を渡ろうとして暴走してくるトラックに気づかなかった。
刹那、間近に迫ったトラックを見て
あぁっ!トラックに轢かれて死んだ処女は乙女ゲームに転生できるかもしれないのよね!神様どうか私をアル様のいる世界に転生させて下さいっ!モブの侍女でも構いません!
と祈ってしまった。
キキキーーーーーー
積載量オーバーのトラックはタイヤのゴム臭い匂いとともに私に突っ込んできた。
なんの冗談だろう……
クラシックバレエで鍛えたバネと剣道で身につきつつある瞬発力で私は暴走トラックを避けてしまった……
まぁ〜死んでもアル様に逢えるわけじゃないし?
ただ死ぬだけだったオチを避けられて良かったじゃない?夢から急激に覚めたようなボーっとした頭で歩道を歩いていたら高層マンションから植木鉢が落ちてきて私の頭にジャストミートした。
なんの冗談だろう……
トラックに轢かれなかった私は植木鉢に当たって死んだ。
おーまいがっ!
トラックに轢かれてもなければ病死でもない私が乙女ゲームに転生できる芽は摘まれたわけだ。
しかも植木鉢……無駄死確定だよこれ……
だって辺りは真っ暗だし、これから最後の審判が行われるに違いない
悪いことはしてないはず。かといって善い行いも特にはしてない私は天国へ行けるのだろうか……
闇に浮かぶ長い道の果てにある小さな宮殿のようなところに入ると、
「俗名、カトウリナ」
突然名前を呼ばれ振り返った先には若い男性の姿をした知らない人がいた。
うわぁ!めっちゃイケメン!
「私は人でもなければイケメンでもない」
その男性が私の考えに対して返事をしてきた。
「わぁ、考えていることがわかるんですね!かっこいい!」
どうせ考えを読まれているならば取り繕う事もない。私は思ったままを口にした。
「実は最近 神たちのご機嫌が麗しくなく戦争やら天災やらで閻魔様が大忙しなのだ。君はイレギュラーでこちらに来たようなので、ジュニアである私が担当する」
エンマジュニア!どうりで額に『j・・・』いや、もうこれ以上各方面に喧嘩うるのはやめよう。
「君はまだ死ぬ予定のない人間だったはずだ。このまま記憶を消して現世に戻りたいか?それとも君の望んだ世界にまた転生したいか?」
「エンマジュニアさま!『また……』というのはどういうことでしょう?」
「はぁ……記憶がないのか。では前世、というより中間層の……面倒だ!自分で思い出せ!」
エンマジュニアが私の頭に手をかざすと色々な記憶が蘇ってきた。
なんと私は里奈としてトラックに撥ねられて死に、乙女ゲーム「ロイヤルラメント」の世界に愛しのアルさまの侍女と転生して悪役令嬢にハメられて処刑されたらしい。
前回の死因はフツーにトラックだったんだね。そして侍女として生きた私が処刑されて死んだので里奈の死の少し前に回帰したワケアリ物件だったわけだ……
「エンマジュニアさま、私は侍女だった記憶を持って同じゲームの世界に転生できるでしょうか?」
「そうだなぁ。閻魔大王もお忙しいのでもう一度同じ世界に転生させてやろう。こんどは死ぬなよ?死んだらまたカトウリナに回帰するだろうからその時に閻魔大王が手すきだったら通常通り審判していただけ」
「わぁ、ありがとうございますっ!!!ところでエンマジュニアさま、中間層を通って転生するのですから何か一つだけアイテムとか能力とか授けて戴けるのがテンパンですよね?」
「はぁ?何をもってテンパンとか……お前はすでに侍女の時の記憶を残すという希望を叶えたではないか。まぁよい。お前は素直すぎて冤罪で処刑されたのだ。もう一つだけ何か叶えてやろう。何が良い?」
「あっ……どうしよう。自分でねだっておいて何も考えてませんでした。あぁぁぁ~私のばかぁ~~」
「7日やろう。今から168時間以内に私の名を呼んで願い事を申せ。叶えられる願い事に限り叶えてやろう」
「叶えられない願いとはなんですか?」
「公序良俗に違反することだ」
小説に書いて垢Banにならない程度……というわけですね。
「了解です。メタいお答え有り難うございました。ではいつでも大丈夫ですので」
「あぁ、もう一つだけ言っておくことがある。どうでもいいことだが、今の私の見た目を決めているのはお前のイメージだ。なので見る人によって見え方が違う。もしも何かあった時に私の見た目を説明してもその者には伝わらないであろう。ではもう行け!忘れるな、7日過ぎたらこの中間層とはコンタクトできなくなるからな」
再び暗い宇宙空間のような闇を漂った。
覚えていなかったけど、また再びアルブレヒト王太子殿下の侍女になれるのかしら私。
頑張って気に入られてお風呂のお世話とかしたいわ♡ キャーダメダメそんなことできるはずない。でも寝顔を見られたら拝んでしまいそう!
あ~ムリぃ~。こんどこそ浮かれるばかりじゃなく敵対する人が現れても冷静にのりこえなくては!
少しづつ明かりが強くなり軽かった身体に重力が加わった。
「カトリーナ?」
なんとそこには強火で推しすぎて溶かされてしまいそうな私のアル様がいて、重力に負けかけた私の身体を抑えてくれた。
「カトリーナ、どうした?」
「えっ?はい。私は加藤里奈です」
アル様が美しい碧眼を細めながら
「カトリーナ……」
と再び私に呼びかけた。
あ、あれっ?私はカトウリナ・・・まぁいいかどうでも。いきなりアル様と接触とか尊すぎる。
「殿下、お顔が近くて私溶けてしまいそうです。離してくださいませ」
「何を言っているんだカトリーヌ、君は愛する婚約者の顔も忘れてしまったのか?」
えっ?はぁ?私は貴方の侍女ではないの?
よく見ると私は豪華だけれど品のある高そうな生地のドレスや宝飾品を身にまとっていた。
あれ?今生は貴族令嬢なのかな?
っていうか婚約者って?
混乱する私にアル様はクスっと笑って抱きしめて顔を寄せてきた。
待って待って待って 状況整理する時間必要だからぁ~
転生するなり、私は推しの口づけとともに意識を手放した。
後で色々追加します。余裕があったらイラストも!