眩い日差しの中で Α
赤い目の女は、紙にペンを走らせる。
それが彼女の今の生業であり、彼女の書いた空想は、意外と評判が良かった。
最初こそ「某国を滅ぼした大魔女の死を描くなんて、なんと恐ろしいことか!」と賛否が別れたものだが、魔女本人から直々にお許しが出たとの公表で、誰もが安心して本を読み、その内容を論じた。よもや、その魔女本人が、これを書いているとは、誰も思うまい。
彼女は、友人の死を受け入れ、そのことを決して忘れないと自戒すると共に、されど、友人にはこれから先も生きてほしかった。
だからペンを手に取り、紙の上で彼を生かした。その代わりというように、自らの死を添えてやった。
それらは全て彼女の考えた、ありもしない作り話で、妄想で、ひょっとすると描かれた彼は本人とは全く異なる価値観を抱いているかもしれないけれど、それでもそこに、ウィズが生きている。
彼女は自嘲と共に満足もしていた。
あの夜の闇の中、喪失を埋める夢を見て、彼女は空想にウィズを生かすことを閃いた。
彼女はウィズを生かす為に、これから先も幻想を書き続ける。
それは彼女が飽きるまで続き、ウィズに終わりは訪れないのだ。