第16話 佐々倉みやび
佐々倉みやび17歳、名前は平仮名で書く。
O型で身長155cm体重41kg。スリーサイズはまた今度ね。あ……ヒップは知られてるんだった。
幸福な家庭に産まれ、すくすくと成長したらしい私に現在父親は居ない。
私が小学校に上がる前に離婚したみたいで、ほとんど父の記憶はない。
一度だけ、母に父の事を聞いた事がある。
──どんな人だったのか。
その問いに母はあまり多くを語ってはくれなかった。
ただ短く、"父親としては0点、だけどミュージシャンとしては100点の人だった"と教えてくれた。
今もテレビに出れるくらいには活躍してるらしく、母は音楽番組を毛嫌いしている。
私は父がなんて名前で活躍しているかも知らない。
だけど、不意に映った音楽番組の男性に母が凄く複雑そうな顔をしているのを見て、もしやと思った人はいる。
別に私自身父に興味はないし、それ以上知りたいとも思わなかった。
母と二人、幸せに暮らしていければそれで良かったから。
でも中学2年生のある日、私の人生に転機が訪れる。
動画サイトにアップされた一本の歌動画。
バズりにバズって一躍時の人となったその人の歌が、私の中にある音楽への扉を開いた。
自分の歌でこれほどの衝撃を与えられるんだ……!
稲妻が落ちるような衝撃を、きっと父も受けたんだろうとこの時に知った。
この先、私にあるかも知れない幸福で普通な人生、その全てを失ってでもこの人のようになりたい。
そこからは早かった。
中学3年生になる頃には"歌ってみた"動画をアップしそれなりに様々な人に聴いて貰えるようにはなった。
最初は数字が一つでも上がる度に心が踊った。
それでも段々伸びは頭打ちになっていく。
当然だけど、あの人のようになる為の壁は分厚かった。
けれどそこでまたあの人が新しい道を示してくれた。
今までは顔を出さず歌動画だけを出していたのに、突然Vtuberとしてデビューしたんだ。
配信で話す彼女は等身大の女の子で、これなら私にでも出来るんじゃないか。
自分の中にあるもう一人の自分を解放させれるんだ……!と。
気付けば高校に入学する頃には私はVtuberになっていた。
私の高校は一応は進学校なので1年生から進路相談がある。
先生に私の夢を話したら当然止められた。
高校で出来た友達にも「え、さすがにきつくない?」と、引かれたっけ。
皆の言う通り現実は厳しくて、最初は今まで私の動画を見てくれてた人が少し覗いてくれる程度だった。
けどあの人と同じように、ゲーム配信や雑談、色々な人とのコラボなどで次第に"MiyaBi"の知名度は上がっていった。
問題はそんな時に起こってしまう。
母に私の活動がバレてしまった。
母は地方公務員として働く真面目な人だ。
少々厳しい面があり、私はあまり親からの愛情というものを知らずに育った。
それでも母親はきちんと私の目を見て、話を聞いてから叱る人だった。
決して理不尽には怒らない、理屈が通ってないものを正す、そんな人。
そんな母が初めて私を頭ごなしに叱った。
『そんな何の人生の得にならないもの、真剣に取り組んで……父親のようになりたいの!?今すぐ辞めなさいっ……あなたはもっと普通に生きなさいっ……!!!』
と。
私は激しく抵抗したよ。
『母親なら娘の夢を応援してよ!大学だって行かなくてもこれで私は生きていく!!』
そう言って私は家を出た。
そこからは……ふふ、なんて言えば良いんだろう。
まだ1か月も経っていないのに、私はあそこで多くを貰った。
一番の贈り物はそう、きっとこのドキドキする気持ちそのものだと思う。
私はこの気持ちにまだ名前を付けてない。
早く確定させたい、そう思い始めてるんですよ。
だから……諒太さん、もう一つ私にくれませんか?
母と戦う勇気を──
「ただいま、母さん」
「お帰りなさい、みやび」
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