47/69
幕間
そこはただただ黒が広がっていた。
上下さえも判別できない黒の空間で、黒とは対極の白い髪を靡かせている女が浮かんでいた。彼女が着ている豪華な黒色のドレスはその空間に溶け込むように漂っている。
「ドド――――ラを降ろ――――」
「女神――レノイア様――――――――導きたまえ」
「私は強――――試して――――――――」
「――――――――医――足りな――――対に助け――――」
「――――ええ――――お兄さ――――政策を――――」
彼女を中心に周りをいくつもの鏡が周回していた。その鏡には様々な人間が映し出されており、そこから微かに声が聞こえてきていた。
――――まだあいつは現れないか。
女は鏡を見ずに、静かに呟いた。やがて幾多の鏡の中からひとつ選び、顔に触れるぐらい近づけた。
そこには筋骨隆々の若い男が一心不乱に剣の素振りをしている光景が映し出されていた。
――――丁度いいのがいた。こちらからアクションを仕掛けてみましょう。
鏡を見るその白い瞳はどこまでも満たされていなかった。
明日は今までの挿絵を纏めたものを19時に更新します。