次への準備
「それで、葵はどうやってエラに会ったの?」
「今からちょっと前に暗黒郷に興味を持って近くまで行ってみたことがあるんだけど、その時にエラが偶然暗黒郷の外にいてそこで初めて会ったんだよね。あの時はビックリしたよ。まさか魔族に会えるなんて思ってなかったから」
そんな会話をしながら俺たちはエラがいる岡まで向かっていった。
話してみてわかったのだがどうやら葵はここからかなり離れたところで生まれたらしい。
そして年齢は17歳。
俺が15歳なので2歳年上だ。
と、まぁそんなこんなで俺たちはエラがいる岡までやってきた。
そこには地下へと続く階段があった。
そしてそれをくだり俺たちは簡易拠点と思われるところまでやってきたのだが、
「なにこれ?」
俺と葵は口を揃えて言った。
そこにあったのはどう見ても簡易の範囲では無いしっかりとした作りの拠点であった。
たった2日でここまでのものができるとは…
『お疲れ様!どう?葵って結構可愛いでしょ』
エラはそんなことを聞いてきた。
うん。可愛い。
ありがとうエラ。
でもそんなことよりも、
「どうやって作ったのこんな場所?」
それが1番気になった。
『魔法だよ。君たちが街でイチャイチャしてる間にボクが頑張って作ったんだ』
魔法って建築にも使えるのか。
奥が深いな。
あと俺はそんなイチャイチャしていない。
『そうだ!なんか情報は手に入った?』
「その事についてなんだが聞きたいことがある」
これがはっきりしないと話が進まないからな。
「どうして魔王が勇者に封印されたなんて嘘をついた?魔王は自分の力で自分を封印したんだろ?」
エラの顔つきが変わった。
今までとは違う、真剣な顔つきだ。
『嘘、か。ボクは別に嘘をついたつもりなんてないんだけどな。もし勇者が何もしなかったらリアム王は自分を封印する必要なんてなかった。あいつらがよく分からないデマに踊らされて攻撃してこなければきっとリアム王は自らを封印したりしていない。殺してやりたいんだ。魔族を無差別に殺し、リアム王をあんな状態にした勇者を。あいつらを。でもそう言ったら君たちは賛成してはくれないだろうから封印を解くために勇者を殺してくれと頼んだ。そうしたら賛成とまでは行かなくとも殺しに協力くらいはしてくれるんじゃないかって、そう思ったんだ。ごめん』
そうか。
まぁ気持ちは分からなくもない。
自分を育ててくれた人を急に奪われて、自分の仲間も急に奪われて、そしたら殺してやりくもなるのかも知れない。
「ニューヴィクトリアの件だが武力支配するつもりなら俺は賛成できない。ニューヴィクトリアを奪還するなら平和な方法でやるべきだ。ここで戦っても誰も得しない」
『ボクもそう思ってた。今ここで戦って運良く勝ってニューヴィクトリアは支配できたとしても長くは続かない。他の街から軍隊がやって来たらボク達は敵わない。もう、諦めるしかないのかもね』
エラはそう言った。
俺はそれを否定してやりたかった。
必ずどっかに勇者側も魔王側も納得できる道があるはずだって。
そう言ってやりたかった。
でも出来なかった。
ニューヴィクトリアを力で奪還するのも不可能。
かと言って和解して手に入れるというのも難しい。
俺にはどうすればいいかわからなかった。
「みんな。とりあえず今日はここで解散にしない?
明日また話し合おうよ」
そう言ったのは葵だった。
『そうだね。ボクも疲れたし。君と葵の部屋は向こう側に用意してあるからそっちを使って』
そう言ってエラはおそらく自分の部屋があるであろう方に帰っていった。
〜自室にて〜
エラが作ったと思われる部屋はかなり豪華だった。
シャワールームもあるしベットもあるし着替えの服もある。
そんな部屋で俺はずっと考えていた。
俺はどうするべきなんだろう。
「ルカ。入ってもいい?」
俺が悩んでいるとそんな声が聞こえてきた。
葵だ。
俺はドアの鍵を開けて葵を部屋に入れた。
「色々考えてみたけどさ、一つだけいい方法があるんだ」
いい方法?
「私が魔族のフリをするんだ。」