ニューヴィクトリアはいい街です。
「ふぁあ〜、ん?もうこんな時間か」
枕元に置かれた時計の針はちょうど12時をさしていた。
カーテンの隙間から日差しが俺に攻撃してくる。
布団のもふもふとお天道様のポカポカのダブルパンチはヘビー級王者のパンチと同等、いやそれ以上の威力を持っているかもしれない。
現に俺は完全にノックアウトされている。
ニューヴィクトリア奪還作戦についてだが結果から言うと潜入することには成功した。
それじゃあ今はどこにいるのかって?
今、俺は冒険者専用宿泊施設にいる。
冒険者としてニューヴィクトリアに潜入した俺はその後、冒険者専用宿泊施設で少し休むことにしたのだ。
おそらく潜入なのでこんな呑気に宿泊施設で寝るべきではないのだろうが眠かったんだから仕方ない。
犯罪にでも手を染めない限り3大欲求に逆らわず生きる、それが西宮、違うルーカスという人間なのだ。
「あいつ、俺の事ずっと君って呼んでるから名前が変わったこと忘れるところだった。俺はこの世界では西宮玲じゃない。ルーカスだ」
俺は自分に言い聞かせるように言った。
昨日はシャワーも浴びたし、ご飯も食べたし、こんな最高な寝床まで用意して貰えた。
異世界に来てから1番幸せだったかもしれない。
勇者側に寝返りそうだ。
「あとは服だな」
そう、服だ。
当たり前だが俺は異世界転生の際に服なんて持ってきていない。
今はまだ一日目だから何とかなるが正直早く着替えたい。
まぁそれについてもエラが魔族特性魔法服とか言うやつを用意してくれるらしいからそれまでの辛抱だ。
「さてと、行くか」
俺はそう言って布団から起き上がる。
本来の目的は情報収集だ。
こんなところでダラダラしている訳にも行かない。
とはいえ俺もなんにもせず、ずっとだらけていた訳では無く、いくつかわかったこともある。
まずこの街にいる人達はほぼ全員獣耳と尻尾が付いている。
獣耳も尻尾もないのは俺と昨日見た女の子の2人だ。
そして勇者が魔族に攻撃を仕掛けた理由だがそれについても宿泊施設にあった他国の冒険者向けのニューヴィクトリアの歴史を書いた本に書いてあった。
その本によると魔族が人口増加のため他の国を襲おうとしていてそれを防ぐために先制攻撃を仕掛けたということらしい。
まぁこれについては後でエラに話してみればいい。
それより、重要なのは昨日見た女の子だ。
おそらく彼女はここらへんの人間ではないだろう。
それに昨日彼女と目が合った時まるで見られてはいけない人に見られたかのように彼女は足早に逃げていった。
彼女なら何か有益な情報を知っているかもしれない。
とは言っても、昨日は夜遅くてよく見えなかったからこれといった情報がないんだよな。
「一人一人聞いてくしかないのか。はぁ…」
俺もあんまりこの街に長くはいられないからな。
結構急がないと。
「とりあえず人が多そうな所まで行くか。」
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