ニューヴィクトリアへ
「寝てからでもよくなかった?眠いんだけど」
今、俺達は真っ暗な空を飛んでいた。
正確に言えばエラが俺を乗せて飛んでいるだけで俺が自分自身の力で飛んでいる訳では無い。
こいつは見た目に反して意外と力持ちらしい。
なんたって人1人を乗せて平気で飛べてるくらいだからな。
『ダメだよ。今から行くところは勇者派の街だよ?明るい時間帯に行ってもバレて終わりだよ』
そうなんだけどさぁ〜。
眠いもんは眠いもん。
「そういや俺たちはニューヴィクトリアにいって何をすればいいんだ?」
『最終目標はニューヴィクトリアの奪還だよ。元々ここはボク達魔族の街だからね。今はそのために情報を集めに行くんだ。』
「作戦は?」
『まずボク達はニューヴィクトリアの近くに降りる。そこでボクは簡易拠点を作る。その間に君はニューヴィクトリアに潜入して情報収集をして欲しい。あそこは街ごと結界で守られて、警備もしっかりしてるからボク達魔族が潜入するのは困難だ。でも君は魔族じゃないから冒険者だとか何とか言えば通してくれるはずさ。それでしばらくしたら君は街を出て簡易拠点のところまで来て欲しい。』
なるほどね。
要するに俺は魔族側のスパイって訳か。
「分かった。じゃあしばらくはお別れだな」
『そうだね。おっ!見て。あれがニューヴィクトリアだ』
俺はエラが指を指した方向に目を向ける。
エラの言った通りそこには壁で囲われた小さな街があった。
今は真夜中だが壁と街のところどこには明かりも灯っている。
『ここら辺にしよう。ここなら街全体がしっかり見える』
そう言ってエラは街の近くの岡の上に降り立った。
『ボクはここに簡易拠点を作る。こっからの君の動きはさっき言った通り』
「ありがとな。ここまで連れてきてくれて。それじゃあ行ってくる」
『うん。行ってらっしゃい。期待してるよ』
俺の任務はあの街に潜入して情報を集めること。
もし失敗でもしたらリアム王の解放は遠のくだろう。
大丈夫。ただ潜入するだけだ。バレやしない。
俺はそう自分に言い聞かせた。
ニューヴィクトリア奪還作戦、開始だ。