目覚め
ギャォォォォォォォォォォォォォォォォンン!
広大な平原に怒りの声が木霊する。
今は昼の三時。俺が前までいた世界じゃ子供達がお菓子でも食べている頃だろう。
そんな時間帯、俺は今めっちゃ走っていた。
「おい!やべぇよ。このドラゴン結構強いじゃねえか。しかも足も速いぞ」
『おかしいな。ボクが知ってるライトドラゴンはもうちょと弱かったはずなんだけど…』
「おかしいのはお前の頭だ!もう追いつかれるぞ、どうすんだよ!」
ドラゴンの足音がどんどんでかくなる。
ドスドスという足音の大きさに比例して俺の心音も大きくなって行く。
『前に森が見えるでしょ、そこに行こう。ドラゴンは体が大きいから森には入れないはずだよ』
くそ、こんなやつについてきたのが間違いだった。
魔法適性が高いとかなんとか言ってたけど全然魔法なんて使えないんだが。
『もうすぐで森に入るよ』
「おーけー。うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は森まで全力で走った。
多分数分くらい走り続けたんじゃないだろうか
「はぁ、はぁ、もう…大丈夫?」
『安心して。もう追ってこないよ』
頭の後ろの方からそんな声が聞こえてきた。
『ごめんね。まずは魔法の使い方から教えるべきだったよ』
当たり前だろ!
そうツッコもうとしたがそんな元気はなかった。
さっきから普通に喋ってるこいつは疲れないのか?
そういう体質だったり?
思えば俺はこいつがどんなやつかも何も知らない。
どうやって俺の世界まで来たんだ?
気になることは他にもあるんだが、
『はい!起きて。まずは初級魔法を使えるようにしよう』
「はいはい。わかりましたよ」
まぁいいか。こいつがどんなやつでも。
少なくとも悪いやつじゃなさそうだ。
『初級魔法ってのは少し生活に役立つくらいで戦闘にはあんま使えないんだけど初級魔法を覚えちゃえばあとは力の加減の問題だからね』
「で、どうやるの?」
『まずは火をイメージしてみて』
火をイメージ…
「はい。できた」
『それじゃあ、その火を指先から出す!』
その時、僕の右の人差し指でボッっと音がなった。
恐る恐る目を開く。
「ほんとについた…」
指先で小さな炎がゆらゆらと揺れる。
『言ったでしょ。君は魔法適性が高いって。あとは力の加減で上級魔法も使えるようになる。ただ上級魔法は魔力20以上必要だから乱発しないようにね。君の魔力は一般人より高くて200くらいあるから大丈夫だろうけど』
何となくわかったぞ。
どうやら俺は結構優秀らしい。
「よし。ドラゴン倒しに行くぞ」
なんとなくだが今はドラゴンも倒せる、そんな気がした。