身分差
能力検査が始まった。
どうやら魔法使い、戦士または剣士、その他の3種類に分けられているらしく俺は魔法使い、ハリーはまたは剣士、ジョンはその他のグループに分けられた。
ジョンは魔法が使えるらしいが、どうやら攻撃魔法ではなく強力な結界魔法が使えるということでその他のグループに入れられたらしい。
そして、たった今俺の順番が回ってきた。
今までに何人かが魔法を披露しているが流石は一応街では一流の魔法使いの集まりといったところか、全員が上級魔法を披露している。
さて、俺は何を披露しようか。
ここ半年、アウベスさんからいくつかの上級魔法を教わり使える上級魔法は10個ほどになったのだが、やはりその中でも1番インパクトが強いやつをやった方がいいのだろう。
それならアウベスさんから教わった雷雹というやつがいいだろう。
アウベスさんが使う魔法はほかの魔法と違い、詠唱が必要だ。
詠唱をすることによって魔法を強くイメージし、より多くの魔力量を魔法に使えるようにするらしい。
それじゃ、やりますか。
俺は深呼吸し、そして唱えた。
「天を彷徨う雷光の精霊たちよ、北に潜む氷の悪魔と共に我の元に集え。聖なる力を怒りに変え、天空を破壊し、大地を殺せ。この世に生きる数多の生命に対し、その力を見せつけよ。轟け!雷雹!!」
その瞬間、空は黒雲で覆われ、その中心から大きな雷がひとつの矢となって地面に突き刺さった。
雷の矢は地面に突き刺さると同時に破裂し、大地はその矢が刺さったところを中心とし、かなりの範囲が凍りついた。
ーす、すげぇー
どこからかそんな声が聞こえてきた。
そうだろう。俺も我ながらすごいと思う。
やっぱこの魔法は名前といい、詠唱といい、威力といい、最高にかっこいいな。
モテるために練習してよかったぜ。
「君の魔法は素晴らしい。ぜひ我が軍の中心班に入ってくれ」
昨日、魔物について教えてくれた教官風の男がそう言った。
よっしゃ。これで多分最前線は避けられただろ。
〜その後〜
能力検査が一通り終わり、それぞれ班が決まり、次の攻撃に向けた作戦会議が行われた。
薄々気づいていたがこの世界では魔物との戦いは戦争のひとつらしい。
過去も2回ほどあり、今回は第3次魔物戦争ということらしい。
そして俺を含む中心班のことだが、5人の魔法使いでできていて、それぞれの魔法が打ちやすい場所に魔物を集め、そこに魔法を打ち込んで大量駆除するという作戦らしい。
俺はその中でも1番優秀な魔法使いなので魔物が最も集まってくる中央部を任された。
さらに、その中央部の前線部隊のリーダーとしてハリーが採用された。
ジョンは結界魔法で負傷した兵士達の治療場所の安全確保をすることになったようで俺たちとは離れたところにいる。
今は戦場(街中)で魔物が来るのを待機しているところだ。
街中とは言っても住民の避難はもう済んでいる。
どうやら少し前の方で戦っていた部隊は全滅してしまったらしい。
一体どんだけ強い魔物が来るのだろうか。
そんなことを思っていた時、
「よう!ルーカス。お前は凄いな、中心班に入るなんて。俺もお前が倒しやすいようにできるだけ頑張るよ」
ハリーだ。
「前線部隊はいいのか?一応お前もリーダーだろ?」
「まぁな。ただひとつ聞きたいことがあってな。お前は奴隷制度についてどう思う?」
「奴隷制度?なんのことだ?」
「知らないのか、ほら、前線部隊でも1番前にいる人達のことだよ。あそこら辺の人達はみんな奴隷だ。なんたって1番死にやすいからな」
ほぉ〜どうやらこの世界にはそういうのもあるらしい。
「俺は反対かな。そういうのはあんま好きじゃないんだ」
「そうか。オレと一緒だな。オレも反対だ。だいたいこの戦いに召集されているのは俺たちみたいな元々は魔族の領土だった土地に住んでいる奴らだけで勇者のと土地に住んでるやつは全然いない。あいつら神人系民族は俺らみたいな魔物系民族を利用してるだけだ。許せねぇ」
神人系民族?魔物系民族?よく分からないがまぁこの世界は差別がひどいってことらしい。
「悪い。話しすぎたな。オレはもう行くよ。頼んだぞ!」
そう言ってハリーは前線部隊の方に走っていった。
遠くには魔物の大軍らしき群れが見えた。
「よし!やるぞ」
ついに戦いの始まりだ。




