希望
「君達とは話がしたい。場所を変えよう」
突如として現れた老人は俺たちに着いてくるように言った。
「アウベスさんだ…」
そんなことを葵が呟いた。
「知ってるの、あの人?」
「知ってるも何もこの街のトップだよ。昔はかなり凄腕の魔法使いだったらしくて尊敬している人もかなり多い」
どうやら結構有名な爺さんらしい。
「ほら、早く来んかね。別に君達に攻撃したりはしない」
俺たちはあの爺さんについて行くことにした。
〜アウベス邸にて〜
そこはかなり豪華な場所だった。
周りの家と比べると明らかに広く、壁には絵がいくつか飾ってあった。
「済まないね。この街には魔族に詳しい人が少ないんだ。だからさっきも角も羽も生えてない嬢ちゃんを魔族だとすぐに信じた。角も羽もない魔族なんかおらんのにな」
「あの、なんで私達を助けたんですか?別にアウベスさんには得することなんてないのに」
葵が聞いた。
「いや、あるさ。君達には魔族の仲間がいるだろう。ワシはその仲間に用があるんじゃ」
なんでこの爺さんはエラのことまで分かったんだ?
「なんで魔族の仲間がいることを知ってるんですか?」
と、思ったら葵がその疑問を質問してくれた。
「そりゃあ外で魔族が待っておったからな。こんあところに魔族が1人で来るわけがあるまい。どこかに仲間がいるんだろうと思ったんじゃよ」
どうやらエラの存在はバレていたらしい。
あいつ結構普通に見つかってるの面白いな。
「それで君達の仲間であるその魔族を連れてきてくれんか?話したいことがあるんじゃ」
翌日、俺たちはエラを加えた3人でアウベスさんの家に行くことになった。
〜翌日〜
『信じられない。ボクがこうも普通にニューヴィクトリアの中に入れるなんて…』
俺たちは約束通りエラを連れて3人でニューヴィクトリアの中に入った。
アウベスさんは万が一に備え9人のボディーガードもつけてくれた。
ボディーガードと言っても前の世界みたいにスーツを着てる訳ではなく、槍を持った上半身裸の男たちだ。
この街の一般人の服装は教科書に載っているような古代ヨーロッパとかの人達の服装と似たような感じだ。
なので初めて葵にあった時のパーカーとショートパンツというのも服装はかなり異質だった。
まぁその時は俺も前の世界の服装のままだったから人のことは言えないんだけど。
と、まぁそんなボディーガード達を引き連れ俺たちはアウベス邸までたどり着いた。
『でっっかぁ…』
エラが呟いた。
あんたが作った簡易拠点ってやつも結構すごいと思うけどね。
「アウベス様は奥の部屋で待っております」
家に入るとお手伝いさん的な人が案内してくれた。
アウベスさんが待っている部屋に入って見るとそこもやっぱり広かった。
各国の首脳が会議とかする部屋だぞこれは…
「ようこそ。早速だがワシは魔族の魔法の力を借りたいのじゃ」
アウベスさんは俺たちが部屋の椅子に座り終えたらすぐに話し始めた。
「それをしたらなにかあるんですか。ボクは無償で協力はできないんですけど」
「この街を魔法の力で豊かにして欲しい。私たち獣族は魔法が使えんからな。もしそうしてくれたらこの街を自由に出入りしてくれても構わない。それにもし他の街に行くというのならここを拠点として使ってもいい。どうじゃ?」
どうやらこの街にいる獣耳と尻尾がついた人達は獣族って言うらしい。
アウベスさんにもしっかり獣耳と尻尾がついている。
「ここを拠点に…いいでしょう」
「よし。それじゃあ交渉成立じゃな」
エラとアウベスさんが硬い握手を交わした。
これによりニューヴィクトリアは魔族が出入りできる街となった。
奪還したと言っていいのかはさておきまずは1歩前進だ。




