異世界転生はお早めに。
『君、明日死ぬよ』
急にそんなことを言われた。
太陽はまるで何にも見えていないかのように容赦なく人々を照りつける。
そんな真夏の真昼間、少女は俺に向けてそう言った。
平均的な小学3年生くらいの体をしていて、背中にはコウモリの羽のようなものが、頭には角が2本ついている。
まるで漫画に出てくる悪魔のような赤髪の女の子だ。
だから俺はこの状況を理解するのにしばらくかかった。
「何言ってんの?」
しばらく経って初めに出た言葉はこれだった。
『な、何って、君は明日死ぬの!し・ぬ・の!』
かなり大きな声で少女は言った。
正直いきなり叫ばないで欲しい。耳が痛い。
「うん。それで、俺はどうすればいいの?」
『ど、どうすればいいって、え?死ぬんだよ。驚かないの?』
どうやら驚いて欲しかったらしい。悪い事をした。
「う、うわー」
『棒読みすぎ!』
怒られた。なんでだろう。
「で、死ぬって言うけど死因は?痛いのは嫌なんだけど」
『大丈夫。死ぬと言ってもボクが君をボクの世界に連れていくってだけで別に痛くはないし、君がいなくなったあとのこの世界は最初から君がいなかったってことで何もなくそのまま進んでいくからその心配もいらない』
なるほど。
うん。
文句なし。
「よし。じゃあ早くそっちの世界に行くぞ!」
『なんでそんなに乗り気なの!いや、悲しいとか、別れの言葉とかはないの?あるでしょ?』
別れの言葉…か。
う〜ん
「ないかな」
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
すっっっっっっごいうるさい。
『待って。悲しくないの?君今まで何してきたの?』
今まで、何を?
確かに何してきたんだろう。
まぁ今となってはそんなことどうでもいい。
今から異世界に行くんだからな。
『ちょっとなんかもう君準備できてない?』
「うん。俺はいつでも行けるけど…」
『マジか…ボクもこんなに早く行けるとは思ってなかったよ』
ところで俺はなんでこいつの世界に行かなきゃ行けないんだ?
もし奴隷として働けとかだったら嫌なんだが。
「俺ってなんのために行くの?」
『ボクと一緒に世界を救って欲しいんだ』
え?
なんだって?
世界を救う?
そんなこと…
「超かっこいいじゃん!やるぞ!!」
『おぉ!乗り気だね』
当たり前だろ。
こんなかっこいいこと誰が断るんだ。
『それじゃあ行くよ』
少女がそういうと俺の下に魔法陣のようなものが現れた。
そして、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜」
いきなり目の前が真っ暗になって体が下に落ちていく。
異世界まで行く時ってこんな感じなのか。
すっごい内蔵が浮いてる感じがする。
ジェットコースターみたいだな。
『よし。着いた!』
彼女がそう言うと同時に目の前が明るくなった。
「どこだここ?」
俺が呟くと彼女はすぐにこう言った。
『ここはボクの故郷。暗黒郷』
アンコクキョウ…
へ〜
てかここ、
「魔王の住処みたいじゃね?」
どうやらついて行く人を間違えたみたいだ。
多分こいつは本当に悪魔だ。