表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

らんらん

作者: 雨世界
掲載日:2020/04/06

 らんらん


 プロローグ


 私たちは、太陽の明るい光の中で笑い合う。


 本編


 まだ、間に合うのかな? 間に合うよ。十分、間に合うよ。と君は言った。


 小学生の垣根絹かきねきぬは、どうしても折り鶴をうまく折ることができなかった。(絹は、すごく手先が不器用な子だった)それが自分でもすごく悔しかった。

 そうやって、みんなが折り鶴を上手におって(折り紙をおることがうまい子は、鶴だけではなくて、うさぎさんとか、カエルとか、ぞうさんとかを、折り方の書いてある紙を見ながら、折ったりしていた。そんな風景を見て、絹はすごくびっくりした)


 みんなが折り鶴をおり終わったあとも、一羽も折り鶴が折れていない絹は、一人、教室の中に残って下校の時間、ぎりぎりまで折り鶴を折り続けていた。


「垣根さん。そろそろ家に帰りましょう」

 と、豊川先生に言われて、「はい。わかりました。先生」と言った絹は、折り紙とぼろぼろの折り鶴をランドセルの中にしまって、それから豊川先生と一緒に学校から下校した。(豊川先生に願いをして、絹は教室に残って折り鶴を必死に、黙々と、真剣な気持ちでおり続けていたのだった)


「先生。お仕事大変なのに、残ってもらってごめなさい」

 帰りの車の中で絹は言った。

「いいのよ、垣根さん。私は、全然、大変だとか、迷惑だとか、そんな風には思ってないから。本当だよ」とにっこりと笑って、豊川先生は絹に言った。


 それから絹は豊川先生と自分の家の前でお別れをした。

(豊川先生は、迎えに家の前まで出ていた絹のお母さんと少しだけお話をしてから、車で自分の家に向かって帰って行った)


 絹の手のひらの中には、ぼろぼろの折り鶴が一羽だけ、そっと、握られていた。


 そんな風にして、月日はすぎて、ようやく絹はなんとか折り鶴をそれなりに上手に折ることができるようになった。(みんなよりは全然下手だったけど……、前よりはずっとましになった。それでもやっぱり、みんなに比べれば、ぼろぼろだったけど……)

 その絹のぼろぼろの折り鶴はみんなの上手な折り鶴と一緒になって、病院にずっと入院している同じ教室の龍田良子たつたよしこちゃんのところに、届けられることになった。


 良子ちゃんと絹は、家がお隣さんで、幼いころからの友達同士だった。


 豊川先生と教室のみんなで良子ちゃんのお見舞いに行ったとき、そのみんなの思いを込めた折り鶴を良子ちゃんに手渡すと、良子ちゃんはうっすらと目に涙をためながら、「どうもありがとう」とみんなに言った。


「絹ちゃん。遠くに行っても私のこと忘れないでね」

 と、みんなといろんな会話をしている途中で、絹と二人で会話をしているときに、良子ちゃんは絹に行った。

「うん。もちろん。絶対に忘れないよ、私。良子ちゃんのこと」

 にっこりと笑って絹は言った。


 良子ちゃんは絹の折ったぼろぼろの折り鶴を、「ありがとう」と言って喜んで受け取ってくれた。


 絹はもうそろそろ、別の遠い町に引越しをすることが決まっていた。

 それは良子ちゃんの手術の日よりも早い予定で、だから絹は良子ちゃんの手術の日には、もうこの町にいることはできなかった。(良子ちゃんの近くにもいることができなかった)

 絹の引越しは、絹が小学校を卒業する三月のことで、良子ちゃんの手術の日は四月の予定だった。


 ……三月。小学校の卒業式の数日後。電車に乗って、新しい町に向かっている間、絹は故郷の町の思い出を、それから、ずっと、これから手術を受ける良子ちゃんのことを考えていた。

 良子ちゃんの手術の成功を。良子ちゃんの笑顔を。良子ちゃんとの、(それからもちろん、教室のみんなとの、優しい豊川先生との)思い出を。

 ……ずっと、ずっと、泣きながら考えていた。


 引越しのあと、少しして、絹が新しい町にある中学校に入学して数日がたったときに、良子ちゃんから手紙が届いた。

 その手紙によると、良子ちゃんの手術は無事に成功したようだった。

 手紙に同封されていた写真には、病院のベットの上で、良子ちゃんの家族と一緒に、元気に笑っている良子ちゃんの姿が写っていた。

 その傍らにあるテーブルの上には、みんなの折った上手な折り鶴があって、その中にはもちろん、絹の折ったぼろぼろの折り鶴も、あった。(その手紙には、絹ちゃん。ありがとう。今度絶対に絹ちゃんのところに遊びに行くね。と言う良子ちゃんの手書きの文字がうさぎのイラストと一緒に書かれていた)

 そのぼろぼろの折り鶴は、みんなと一緒に、なんだかにっこりと笑っているように絹の目にはそう見えた。(みんなの折った上手な折り鶴も笑っているように見えた)


 絹は自分の机の上に置いてある、捨てられずに記念いとっておいた、練習で折ったぼろぼろの折り鶴を見て、にっこりと笑った。

 絹はなんだか、新しい街と中学校がこのとき、すごく好きになった。

 それから絹は最近、自分がずっと、今みたいに上手に笑っていなかったことに気がついた。

 だから絹は(これからさっそく、笑顔の練習をして)明日はみんなの前で、もっと上手に笑えるようになろうと思った。


 らんらん 終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ