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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第5節
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92.繋がる縁

「これ、全部壊しちゃったらまた崩れちゃうかも」


 目の前の岩壁は、大小いくつもの岩が積み重なっているみたいだ。

 あまり激しく壊すと、今度はその破片の片付けが大変になりそう。

 この欠片に乗っかっている岩は・・・これとこれかな。

 壊す場所をイメージして、掌に力を集める。

 威力は少し弱めに調整して・・・


大地の重圧(ジオ・プレッシャー)!」


 ピシッ!

 パラパラパラ・・・。


 牢屋にいた時とは違い、今度はかなりおとなしめの音がした。

 岩にヒビが入ったものの、形はほとんど崩れていない。


「あれ?ちょっと弱すぎたかなぁ」


 この魔法、思っていたよりも制御が難しい。

 今度はもう少し強めに・・・


大地の重圧(ジオ・プレッシャー)!」


 ガンッ!

 カラカラカラ。


 今度はバッチリ、綺麗に壊せた!

 さて、あれは何だったのかな?

 砕けた岩の破片をよけて、謎の欠片を掘り出してみる。


「これ・・・鱗?」


 それは緑色に光る綺麗な鱗だった。

 魚・・・にしては大きすぎるし、あんな重たそうな岩の下敷きになっていたのにほとんど傷も無い。

 一体何の鱗だろう?

 でもこれ、一箇所だけ穴が開いてるから、紐を通せばネックレスに出来そうだ。

 表は綺麗だけど、裏側はどうなってるのかな?

 鱗をひっくり返すと、中央に何かが彫られているのが見えた。


「何だろう、これは・・・文字、かな?えーと、”ベルゼ”、”ヴィ―ア”・・・”ジュ クリミナ”って彫られてる」


 ”ジュ”というのは、”最愛の”という意味があり、大抵は子供のことだ。

 えーと、こういうもののお決まり通りに読むと、”ベルゼ”って人がお父さん、”ヴィ―ア”って人がお母さん、二人の子供が”クリミナ”っていうことになる。

 ん・・・クリミナ?

 あの町で私が知る限りでは、クリミナという名前は一人しかいない。

 偶々同名の別人でしたって可能性もあるけど、あとで渡してあげよう。

 一応、事故で亡くなってるかもしれないから、お祈りはしておこうかな。

 敬虔(けいけん)な教徒じゃ無いから、あくまで形式的なものだけど。

 胸の前で手を合わせて、遺体が埋まってるであろう方に向かってお祈りを捧げる。


「どうか安らかに」


 よし、これで持っていっても罰は当たらないだろう。


「あ、やっと見つけたよ~~!」

「えっ?!」


 後ろから聞き慣れた声がして振り返る。

 そこには見知った声、見知った姿、それといつもの間延びした口調の人物がいた。


「ミラ!何でこんなところに?!」

「それはこっちのセリフだよ~、ぷんぷん!」

「でも、こんな広い山でよくここが分かったね」

「ふっふ~ん!それはね~・・・」


 突然ミラの口調が変わり、変なポーズをとる。


「ユーとミーは心で繋がってるんだヨ!」

「えっ?」

「うーん、ウケがイマイチか~」


 何だかよく分からなかったけど、ミラの新手の冗談だったらしい。


「で、本当のところどうなの?」

「んー、近くを歩いていたら大きな音が聞こえたから、何事かと思って見に来たんだけ~」


 つまり偶然ってことかー。

 でも、偶然通りかかるような場所じゃないのは確かだ。


「で、ミラは何でここに?」

「たぶん、リアと同じじゃないかな~?」

「同じって・・・ミラも捕まっちゃったの?!」

「そんなことないよ~」

「え、同じって言ったからてっきり・・・」

「私はギルドに行ってクリミナさんに聞いたら、リアが山に向かったって教えてくれたからだよ~」

「ということは、ミラもクリミナさんから依頼を?」

「うん。でも、内容が曖昧過ぎて何を探せばいいのかさっぱりだよ~」

「そっかぁ」

「ところで、さっきから持ってるそのキラキラのな~に?」

「あ、うん。そこの瓦礫の下にあったの」

「瓦礫の下?そんなのどうやって取り出したの~?」

「こう、手をあててドカン!と」

「な、なんとっ、私が知らないうちにリアさんが素手で岩をっ?!なんて恐ろしい子!」

「ちっがーーう!魔法だよ、ま・ほ・う!」

「魔法?リア、そんな魔法使えたっけ~?」

「あー、うん。ちょっと色々あってね」

「そっか~。じゃあ、あとでゆっくり見せてもらおうかな~」

「うん、また今度ね」

「で、やっぱり山頂に向かうのかな~?」

「そのつもりなんだけど、食料も水もギリギリというか、足りなくなりそうなんだよねー」

「そうなの~?ちょっと多めに持ってきて正解だったかな~」

「おーっ、さっすがミラ!」

「えっへん!」

「じゃあ、予定通り山頂を目指そう」

「うん。でも、お腹空いてない~?」

「実はちょっと空いてる」

「ホントに?」

「・・・ゴメン、本当はペコペコ」

「正直でよろしい!じゃあ、ちょっと何か作ろうか~」

「あ、そうだ。これ、美味しく調理できないかな?」

「この丸いのなに~?」

「えーと、岩芋っていうちょっとネバネバしたお芋だよ。あ、皮は美味しくないから取り除いた方がいいかも。まとめて茹でてあるのがあるから、そのまま使えるよー」


 温泉でまとめて茹でた芋の塊をミラに渡した。

 ミラは1個だけ味見をしている。


「ほむほむ。これならアレが作れるかも~」

「どう?何とか使えそう?」

「うん。まあ、出来てからのお楽しみで~」

「じゃあ、火をおこしておいた方がいいかな?」

「よろしく~」


 ミラが下準備をしている間に、岩で簡易の竈を(しつら)える。

 しかし、肝心の火がなかなか付かない。

 モタモタしている間に、下準備が終わってしまったようだ。


「おかしいなー、前の休憩所ではちゃんと出来たのに」

「ダメそう~?」

「うん」

「じゃあ、これを使ってみよう~」


 ミラがバッグから取り出したのは、手のひらサイズの二つの黒い石だった。


「何これ?」

「これは着火石って言って、カチカチ叩き合わせると火を付けられるんだよ~」

「へ~、便利だねー」

「早速やってみるね~」


 カッチ、カッチ!

 石がぶつかり合った場所から火花が飛び散り、小枝に火が付いた。

 この音、テイルさんが使ってたのと同じだ。


「点火よ~し!じゃあ、調理するよ~」


 熱したフライパンに油を少し入れ、黒いツブツブの入った白い液状の何かを流し込んだ。

 液体はフライパンの形に添って、綺麗に円形に広がっていく。

 少しするとパチパチと油の弾ける音が聞こえ、香ばしい香りが辺りに漂い始めた。


「あ~、なんかいい香り」

「もう少しで出来るよ~」


 ひっくり返して反対側もこんがりと焼く。

 フライパンの中で食べやすいように切り分けると、パリパリといい音がして涎が溢れ出てきた。

 うぅ~、早く食べたい!


「はいっ、かんせ~い!」

「待ってました!」

「熱いから気を付けて食べてね~」

「うん。いただきます」


 フライパンから一切れ取り出し、あーんと端っこを少しかじる。

 はふっはふっ。

 んっ?!


「あつっ!み、水!」

「はい、お水」

「ありがと」

「んぐっんぐっ、ぷは~~!」

「ほら、急いで食べるから~」

「ごめんごめん。美味しかったから、がっついちゃった」

「ふふ」

「どうしたの、嬉しそうな顔して?あ、もしかして顔になんかついてる?!」

「ううん。なんか、リアが美味しそうに食べるの見たら安心しちゃって~」

「そう?」

「うん。いつもの、って感じがする~」

「そうだね。いつも通りだね」

「さ、残りも食べちゃおう~」

「うん」


 今度はふーふーして、少し冷ましてから一口頬張る。

 カリッ、モッチモッチモッチ。

 うん、外はカリッ、中はふわふわモチモチだ。

 色んな食感が一度に楽しめて面白い!

 味付けは、塩とペッパーだけだと思うけど、ほんのり甘い?

 それに、そのままだとエグかった芋も、ペッパーがいい感じに効いていて気にならない。

 これ、シンプルで飽きがこないから、いくらでもいけそう!

 しかもモチモチしてるから、腹持ちも良さそうだ。


「どうかな~?」

「うん、美味しい!」

「リアはそればっかりだね~」

「だって、本当に美味しんだもん」

「まぁ、満足そうな顔してるからいっか~」

「これ、どうやって作ったの?」

「んー、芋の中を潰して~、ソルト&ペッパーのクッキーを砕いて混ぜて焼いただけだよ~」

「あれ?砂糖とかは入って無いんだ」

「うん。塩が入ったから、お芋の甘さが強くなっただけだと思うよ~」

「へぇ~、この甘さは芋の甘さなんだ」


 そのまま食べると気付かなかったけど、組み合わせで味ってこんなに変わるんだ。

 いや、元々持っていたものが引き出されたって言ったほうがいいのかも。

 薬の調合も料理も、組み合わせ次第で良くも悪くもなるってお母さんが言っていたけど、こういうことなんだろうな。


「どう、元気出た?」

「うん、これなら山頂まで持ちそう!」

「じゃあ、片付けしたら出発しようか~」

「うん!」

 

 今、前ギルド長の足取りの手掛かりはもちろん、精霊王が言っていたようなものは見つかっていない。

 ここから山頂までは、あとわずかだ。

 何かがあるとしたら、きっとこの先にあるのだろう。

 私たちは山頂を目指す、何かがあると信じて。


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