表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第5節
95/159

90.調査再開!

「さて、俺達はそろそろ狩りに戻るか」

「そうね。えーと・・・そういえば、まだ名前聞いてなかったわね」

「私は」


 本当の名前を告げようと思ったけど、少し思い留まった。

 私がここにいることを町の人、特にバイゼンさんとその関係者には知られるわけにはいかない。

 けど、恩のある人に嘘を付くのも気が引ける。

 少し考えた後、伝えるべき言葉を決めた。


「私は、”メリー”って言います」

「そう、”メリー”って言うのね。いい名前ね」

「ありがとうございます」


 今、”メリー”と名乗ったけど、これは決して偽名じゃない。

 というのも、私の”アメリア”という名前には、愛称が多く存在する。

 私が知っているだけでも、”アメリ”、”メリー”、”メリア”、”リア”と、なぜか4つもある。

 しかし、私にとって”リア”以外の愛称は馴染みが無い。

 他は村の外から来た人、つまり冒険者が勝手に呼んでいる名前である。


「で、メリーは一人で下山できそうか?」

「いえ、まだ私はすることがあるので」

「そうか。じゃあ、ここでお別れだな」

「大丈夫?あまり無理をしちゃダメよ」

「はい。もう少し休んだら行きます」

「じゃあまたね、メリー」

「ありがとうございました。二人もお元気で」


 二人が外に出て行ったのを確認してから、ぷはぁと大きく息を吐き出した。

 こういうやり取りは、やっぱり慣れない。

 嘘はついていないんだけど、正直に全部話せないので、気持ちがどこかモヤモヤしている。

 今は隠さなきゃいけないことが多いから仕方が無いのだけど、どうにもうまく割り切れない。


「はぁ・・・慣れないことしたら、お腹が空いた~」


 今は潤沢に食料がある状態では無いけど、お腹が空いて動けないという事態は避けたい。

 そういえば、岩芋の肉芽って生で食べられるって書いてあったけど、ちょっと食べてみよう。

 試しに一個だけ口の中に放り込んでみた。


 シャリッ、シャリッ。

 ・・・・・・!


「う・・・、うぇぇっ!!ぺっぺっ!」


 嫌悪感を感じ、思わず口の中に入れたものを吐き出してしまった。

 苦いというかエグいというか、何とも言えない味が口の中に残っている。

 しかも、皮がゴリゴリして固いし、噛むほどにエグさが滲み出てくる。

 この食べ方じゃ、お腹が膨れる前に口の中が変になってしまう!

 皮が悪さをしているんなら、むいて食べてみよう。

 同じように、二個目に挑戦する。

 皮を破くとヌルッと中身が飛び出してきたので、上を向いて口の中に落とし込んだ。


 シャリッ、シャリッ。


 ・・・うん、さっきほどじゃないけど、やっぱりちょっとエグい。

 でも食べられないほどじゃない。

 美味しくも無いんだけど。

 これを食料にするには、もう一工夫しないとダメかなぁ。

 こういう時、ミラがいたら美味しく調理してくれるんだろうなぁ。

 と、ここに居ない人のことをあてにしても仕方ない。

 調理・・か。


「これ、温泉で煮たらどうなるかな?」


 直入れすると、芋が取り出せないから布袋に入れよう。

 あとは、袋の紐をコップの取っ手に括りつけて、温泉に入れて待つだけ!

 待っている間に、図鑑の書き込みやバッグの整理でもしておこう。


「・・・さてと、そろそろ出来上がってるハズだけど」


 温泉に付けた布袋を引き上げてみる。

 袋からボタボタとお湯が落ち、白い湯気が立ち上っている。

 このままだと熱いから、少し冷ましてからにしよう。


「さてさて、どうなってるかなー?」


 触れるくらいの温度になったのを確認してから、中身を取り出す。

 岩芋を摘まんでみると、中身がかなり柔らかくなっているようだった。

 よし、皮をむいて中身を食べてみよう。

 お、ツルっとむけた?!

 これ、ちょっと気持ちいいかも!

 中は・・・あ、ちゃんとホクホクとした感じになってる。

 あとは味の問題だけどどうかなー・・・うん、生の時のようなエグみはほとんどない。

 どうやら、これは茹でるのが正解っぽい。


「キュー?」

「あ、ゴメンゴメン!ユリも食べてみる?」

「キュッ!」


 皮をむいて中身だけを食べさせる。

 良かった、ユリも美味しそうに食べてる。

 さて、残りの芋も同じように茹でてしまおうかな。

 魔物のいる中で、調理なんてやってられないもんね。

 同じくらい茹でるとなると、ちょっと時間があるけどどうしようかなー。 

 ・・・そういえば、この休憩所の中ってちゃんと調べてなかったなぁ。

 よし、待っている間にここの調査もしてしまおう!

 まあ調べるっていっても、ここにはテーブルとイス、それに壁と天井くらいしかないんだけど。


 それから調べること僅か、調査はあっという間に終わってしまった。

 分かったことと言えば、ここは綺麗に使われている、ということくらいだ。

 多分この休憩所は、人の出入りが多いのだろう。

 手掛かりになりそうなものがあったら、真っ先に処分されていると思って間違いない。

 ということは、人がほとんど使った形跡の無い休憩所ならあるいは・・・?


 よし、次の目標は決まった。

 安全の確保も含めて、休憩所を探して回ってみよう。

 前ギルド長がこの山に何かをしに来ていたのなら、きっと何か残っているかもしれない。

 さあ行こう、山が私を待っている!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ