87.火山でサバイバル!
「うぁ・・・どうしよう」
今夜は雲が厚くかかっているのか、空の明かりが届いていない。
夕闇に紛れて山に入ったはいいけど、ここで一夜を明かさないといけないということに今気が付いた。
山登りはもちろん、魔獣がうろついている中で野宿なんて初めての経験だ。
色々と準備が不十分な上に、冷たい牢屋からここまで碌に休憩を取っていない。
疲労が限界に近いけど、このまま休憩するには危険が大きすぎる。
せめて洞窟のような場所があればいいのだけれど、辺りが暗いこともあって視界はかなり悪い。
運よく見つけられたとしても、中が魔獣の巣窟なんてことになっていたら、私一人では対処できない。
体力は出来るだけ温存したいけれど、今は少しでも安全を確保したい。
休憩できそうなところが無いか、探してみよう。
「足が痛い、眠い、お腹空いた・・・」
歩き始めてどのくらい経っただろうか。
慣れない山道は歩きづらく、登るほどに息をするのが苦しくなり、頭はガンガンと痛くなる。
それでも幸いというか、まだ魔獣には出くわしてはいない。
今は雲の切れ間に入ったおかげで、周囲がよく見える。
この周りはゴツゴツした岩場のようだ。
よく見ると、岩とフードの色が近いように思える。
「フードを深く被って岩の間に入れば、うまく隠れられるかな?」
匂いに敏感な魔獣が居たら――と一瞬考えたが、極限に到達した疲労がそれ以上の思考を遮断した。
ここは安全な町の中では無い、ある程度の危険を覚悟の上で休憩を取るしかない。
フードを目深に被って岩の間に入る。
「あ、ここ温かい」
岩肌はほんのりと温かで気持ちがよく、抗うことなくそのまま意識が途絶えた。
「うーん、眩しい・・・わ、わぁっ!!私、寝ちゃってた?!」
次に意識が戻ったのは、日が昇り始めた頃だった。
どうやら無事、夜を越したらしい。
さて、町に戻ることの出来ない状況で今するべきことは・・・。
ぐぅ~~っ。
今の状況を正直すぎるほど素直に語ったのは、自分のお腹から出た音だった。
『空腹は最大の敵だ』、って誰かが言っていた気がする。
つまり、今倒すべき敵は目の前の空腹だ。
「そういえば、昨日の夜から何も食べてなかったなぁ」
食料のほとんどは調理するミラの方に偏っているせいか、私のバッグの中には食料になりそうなものはあまり入っていない。
確かバッグの中に、町で買ったお菓子の残りといつも持ち歩いている水筒が入ってたはず。
ゴソゴソとバッグを漁ると、それらはしっかりと出てきた。
が、どう見ても解決しなさそうな大きな問題がある。
食事用のクッキーが10枚くらいと、チョコミン糖のクッキーが4枚、それにカリン糖のクッキーが3枚、という内訳だ。
しっかり食べれば今日1日分、少量に分けても2日分がギリギリだけど、どう考えても水が1日分しかない。
カリン糖に手を付けるのは嫌だけど、最悪、チョコミン糖のクッキーとセットで食べたほうがいいよね。
町に着いてから薬草の買い出しはしていなかったので、食べれそうな手持ちの薬草は実質ゼロだ。
ということは、今からしなくちゃいけないのは水と食料の確保かなぁ・・・。
クリミナさんから受けた依頼の探し物は、その片手間になりそうだけど仕方ない。
まずはこの環境の中で生き抜くことを優先して動こう。
よし、そうと決まれば早めに動いた方がいいよね!
私は食事用のクッキーを数枚と水筒の水で、軽めの朝食を取ることにした。
思って以上に喉が渇いていたようで、水筒の水は半分以下になってしまった。
これはちょっと痛い誤算だ。
急いで水場の確保をしておかなくちゃ。
「あ、そうだ!」
火山には珍しい薬草もあるとか言っていたっけ。
せっかくだから、見つけたらついでに採集しておこう。
もしかすると、食料になりそうなものもあるかもしれない。
バッグから図鑑を取り出して、水と食料を求めて山を徘徊し始めた。
徘徊すること暫し、いくつかの薬草と食料を確保することが出来た。
やはりというか、触るだけでも危険な毒草もあったので、図鑑を出しておいて正解だった。
見つけた時にメモしておいたので、あとで自分の図鑑に書き込んでおこう。
で、水の方はというと、ゴブリナさんの家の裏にあったような、お湯が沸く泉をいくつか発見できた。
問題は、綺麗に澄んではいるのに少し変な臭いがすることだ。
これって、火山特有の湧き水なのかな?
このまま飲んでいいのか少し不安だけど、干からびてしまうよりはマシだろうと思うことにした。
そして当然というか、クリミナさんの依頼の物は全く見つからなかった。
山の中腹くらいまでは冒険者の人も来ているみたいだったから、あるとしたら上の方かもしれない。
登るにつれて植物も少なくなっているみたいだから、補充をしっかりしてから登らないとダメかも。
「そういえば、思ってたよりも魔獣とかに会わなかったな?」
自分で遭遇したというよりも、冒険者が戦っているのを見た、程度だったんだよね。
それも蜂とか兎みたいのが多かったけど、植物のっていなかったなぁ。
カリンカリンって、この付近にはいないのかな?
蜂の魔獣は勘弁だけど、兎の魔獣は食料になりそうだったな。
うまく狩れれば、お肉が食べられるんだけど。
でも、捌くのはちょっとねぇ・・・。
そんなことを思っていると、近くで茂みがガサガサと動くのが聞こえた。
「ま、魔獣?!」
いや、これは食料ゲットのチャンスかもしれない。
もし兎なら狩る、蜂なら逃げる方向で!
お父さんから貰ったナイフをバックから出して、茂みの方に向かって構える。
・・・もちろんいつでも逃げられるように、逃げ腰で構えてるんだけど。
さあ来い、お肉さん!!




