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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第4節
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68.魔法の手

「むぅ~、やっぱり専用の服が欲しいなぁ」


 畑に向かいながら、少ししっとりの濡れている服の裾を掴んで考え事をしていた。

 今着ている服は昨日の夜に干していたものだけど、当然と言うか半乾きの状態である。

 一応予備の普段着はあるけど、外出用の服だからあまり汚したくない。

 女の子としても商人としても、泥まみれの恰好で街中を歩くのはかなり気が引ける、というか絶対嫌だ。

 ということで、今着ている服は冒険用のものを使っている。

 一般的に冒険用の服って動きやすさ重視に作られているんだけど、長時間しゃがみこんで作業するにはあまり向かないんだよねー。

 家に行けば畑仕事専用の服はあるんだけど、それだけの為に時間を費やすのも違う気がする。


「はぁ・・・こんなことなら、畑仕事用の服持ってくるんだったかなぁ。ね、ユリ?」

「キュイ?」


 ユリはちょっと困った感じの表情・・・なのかは分からないけど、不思議そうにこちらを見ている。

 まぁ、旅先で畑仕事するかどうかなんて分からない、っていうか普通無いよねー。

 うーん、それでも箱の種のこともあるし、今度どこかで買っておいた方がいいかなぁ?

 そうこうしているうちに、今日の目的地に到着していた。

 

「あ、もう始めてる!みんな早いなぁ」


 畑の中では数人のゴブリたちが畑仕事を始めていた。


「おはようー」

「オハヨウ。キョウは、ナニする?」


 挨拶の言葉をかけると、一番近くにいたゴブリから今日の予定を聞かれた。


「えーと、とりあえず普段の畑仕事をどうしているのか見てみたいなーって」

「じゃあ、このままツヅけててイいのか?」

「うん」


 初日の手伝いの時に気になっていたことがある。

 その一つが、かなりの数を間引いたことだ。

 間引くこと自体はよくあることなんだけど、問題はその数だ。

 数が多すぎるということは、種を一か所に蒔き過ぎている可能性がある。

 ちょうど目の前の一人が畝の上にすじをつけて、種を蒔こうとしているところだった。

 私はその様子を見守ることにした。

 種を手に持って、一か所にバラバラバラ・・・って、蒔き過ぎ!

 あー、しかもすじからはみ出し過ぎてるしー!!


「ちょっとちょっと、ストップすとーっぷ!!」

「ナンだ?」


 ゴブリナさんが『見様見真似で』とは言っていたけど、かなりザックリ過ぎない?!


「いつもこんな種の蒔き方をするの?」

「ホカにアるのか?」


 ・・・ダメだ、これは一度全員集めて指導しないと手間も増えるし種も勿体ないよ!

 私自身は農家というわけじゃないけど、お母さんから教えて貰った範囲でなら教えることは出来る。

 私は村中のゴブリたちを集めて、畑の勉強会を始めることになった。



「これで全員かな?」

「イマ、コれるヤツ、ゼンイン!」

「そう。なら後で来ていない人たちに教えてあげて」

「ワかった!」

「じゃあ、これからみんなに種蒔きの方法を教えるよ。分からなかったら聞いてね」


 場にいるゴブリたちは軽く頷いた。

 私は畑の中に入り、畝をまたぐように立つ。

 そして畝の真ん中にすじをつける。

 ここまでは、みんな出来ている範囲だ。

 当然質問も出てこない。 

 すじの真ん中に、人差し指1本分くらいの間隔を開けて1粒ずつ種を蒔いていく。


「タネ、スクない。どうしてだ?」


 案の定、『ああ、やっぱり』という答えが返ってきた。

 ここの畑は、”すじまき”という方法でやる作りになっている。

 だから、それに合った種の蒔き方をしなくてはいけないのに”ばらまき”という方法で蒔いていた。

 ”ばらまき”は、平らにならした土の上に種をばらまいて、必要に応じて土をかぶせる方法だ。

 しかも、ばらまき方がいい加減で種が偏り過ぎている。

 これだと間引く数が多くなるし、無駄に土地の栄養を使ってしまって、残ったものも立派に育たなくなる。


「こうするとたくさん間引かなくてもいいし、残ったものも大きく育ちやすくなるんだよ」

「そうなのか?」


 蒔き終わった種の上にふんわりと土をかぶせていく。


「ツチ、ガサーっとカけない?」

「うん。やさしく、隙間が出来るように土をかけるとね、芽が出やすくなるんだよ。土をかけすぎたりバンバン叩いて固くしちゃうと、芽が出にくくなるから注意してね」

「へー。で、そのテ、ヒカるのどうする?」

「え?手なんて光ってないよ?」

「ヒカってる!ミドリのヒカリ!」

「そんなわけ・・・」


 質問をするゴブリたちから畑をいじっている自分の手に視線を移す。

 確かに手が緑色の光に包まれている。


「わっ、ほんとだ!」


 驚いた反面、少し安心感もあった。

 私はこれと同じ光を知っている。

 魔法を使う時に集まってくるアレと同じだ。

 もしかして、これが精霊王が言っていた”豊穣の手”というスキルなのだろうか?

 あー・・・でも、どんな効果があるかちゃんと教えてもらってないなー。

 変な影響・・・は無いと思う、多分、いやそうであって欲しい。

 頼むから、変なことが起きませんよーに!


「あー、えーっと、これは真似しなくていいからねー?」

「そうか、マネ、しない!」

「で、あとは毎日しっかりお水をあげれば、3・4日くらいで芽が出るはずだよ。分からないことは無かった?」

『ナーし!』

「じゃあ、みんなお願いねー!」


 勉強会を解散すると、みんなはそれぞれの持ち場に戻っていった。

 さて、私も畑を手伝いに行こうかな。


「キュイッ!」

「あ、もしかしてユリも手伝ってくれるの?ありがとー」


 はぁ、今日も土まみれになるんだろうなぁ。

 あとでまたブレンダさんからお湯を借りよう。

 そうそう、今日はユリもキレイキレイしないとね!


 こうしていつもとは違う、ゴブリナ村での一日が始まった。


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