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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第4節
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67.反動

「んん・・・眩しい~」


 私を叩き起こすような勢いの朝日が、家の隙間から射し込んできた。

 隣には気持ちよさそうに、スヤスヤと寝息を立てているミラがいる。

 体全体が少し(だる)けど、頭の中は思ってたよりもスッキリしていた。

 今日もやらなくちゃいけないことは沢山ある。

 少し早いけど、朝食を取ってからにしよう。


「ミラ、朝だよー」

「えへへ~、珍しい食材はっけ~ん!これでスペシャルメニューを、むにゃむにゃ・・・」


 夢の中のスペシャルメニューとやらは興味はあるけど、今はそんな場合じゃない。

 とりあえず起こそう。


「おーい、起きてよー!」

「んむ~~、つまみ食いはダメだよぉ~?」

「そうじゃなくてー!ほら、今日もやることいっぱいあるんだから起きないと!」

「んーー・・・もう朝?」

「うん、朝だよ」

「おはよう?」

「おはよう、だよ」

「・・・じゃあ、おやすみー」

「あ、ちょっ・・寝ないでー?!」


 再び寝ようとするミラの両肩を掴んで前後に揺さぶり、なんとか起こすことに成功した。

 一応宿屋の娘だけど、こんなに朝が弱くて大丈夫なんだろうか?

 毎朝、家族の人がどうやって起こしているのか、ちょっと気になるところではある。

 まだ目を閉じてうつらうつらしているミラを引きずって、ブレンダさんの所に向かう。


「おはようございます」

「おや、もう起きたのかい?」

「はい。今日もやることはいっぱいありますし、昨日掴まえた根荒らしもどうなっているか気になって」

「それならさっき見てきたけど、最初からそこにいるみたいに大人しくしていたよ。で、そっちの子は立ったまま寝てるみたいだけど大丈夫なのかい?」

「え?」


 横を見ると、口を半分開けたまま立って寝ているミラがいた。

 器用な子とは思っていたけど、立ったまま寝るなんて器用・・・って、ちっがーう!

 いくら朝が弱いと言っても、ここまで酷くなかったと思うんだけど。


「ねぇミラ、もしかして調子悪いの?」

「ん~んぁ?私?」

「うん、ちょっと様子がおかしいから大丈夫かなって」

「んー、普段よりちょっと体が重たく感じるだけかな~?それ以外は割と普通だよ~」


 もしかして熱があるのかな、と思ってミラの額に手を当ててみる。

 うん、熱は無いみたい。

 昨日って、何か変った事ってしたかな?

 んー、ちょっと思い浮かばないなぁ。


「ねぇ、いつ頃からそんな感じになったか分かる?」

「んーと・・・昨日の夜、捕獲作戦が終わった後くらいかな~?」


 捕獲作戦の後ということは、明かりの魔法が原因ってことかな?

 私たちはついこの間まで魔法は使えなかった、ただの村娘だ。

 自分たちが使える魔力の上限とか出力の加減とか、まだよく分かっていないことが多い。

 そういえば、魔法を使った時に『出力強め』とか言っていた気がする。

 もしかすると、今のミラは魔力を使いすぎた反動が出ているのかもしれない。

 幸い今日することは一人でもできるから、大事を取ってミラには休んでもらう方がいいかもしれない。


「ミラ、今日は休んだ方がいいかも」

「え、でも・・・」

「大丈夫、今日することは私一人でなんとかするから!」


 私は精いっぱいの笑顔で、”大丈夫だよっ!”とアピールをする。

 それを見てミラは少し悩んだようだったけど、すぐに返事が返ってきた。


「じゃあお願いしようかな~。あ、でも一人でどうにもならなさそうだったら、手伝うから叩き起こしてね~?」

「うん、その時はお願いね」

「話は終わったかい?朝食の用意が出来てるから冷めないうちにお食べ」

「あ、はい。いただきます」


 テーブルに向かいあった後、3人で朝食を取った。

 出された料理は相変わらず素朴な味わいだった。

 いつもの塩味と薬草の効いたミラのご飯が恋しい。

 食事が終わった後、私は着替えて畑に行くことにした。


「じゃあ、気を付けていってきてね~」

「うん、行ってきます」


 弱々しく手を振るミラの姿が一瞬、ミラのお母さんの姿と重なったように見えた。

 このままミラが倒れて旅が終わる、そんな悪い予感が頭を過る。

 しかしそれはきっと気のせいだと自分に言い聞かせた。何度も、何度も。

 だけども不安を完全には拭いきれなかった。

 そんな拭いきれない不安を胸に、私は畑へと向かう。


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