63.本当の問題
「は~い、それでは会議を再開しま~す」
「じゃあ、まずは根荒らし対策からだね」
今回の被害があるまでは、根荒らしは畑を荒らすだけじゃなくて肥料を置いて行ってくれる、言わば共存の関係にあることは分かった。
だったら全てを駆除する必要は無いと思う。
その点を踏まえれば、何かいい対策が立てられそうなんだけど・・・。
「対策を立てる前に確認したいことがあるんだけどいいかな?」
「何だい?」
「もしなんですけど、前と同じぐらいの数にすることが出来たら、この村の生活ってどうなりますか?」
「そうさね・・・以前と同じ生活に戻れる、とはいかないねぇ」
「それって、何か問題があるっていることですよね?」
「ああ、畑を作り直すにしても収穫までにはそれなりに時間が必要になる。それまでに食料が尽きるのが先だろうね」
「え?!そんなに深刻な状況なんですか!」
「少し節約しながらでも、ギリギリ10日持つか持たないかってところだね」
「なんでそんな状態なのに、何も対策しないんですか?!」
「アタシたちは大地と共に生きることを選んだ『森の人』だ。アタシたちが大地に還るのを望んでいるのなら、それを受け入れるだけさ。抵抗せず、最後までいつもと同じ生活をするまでだよ」
「そんな・・・」
他のゴブリたちも覚悟を決めているのか、ゴブリナさんの意見に反対する意思は見受けられない。
私はそれを見て気付いてしまった、この村の本当の問題を。
この村にとって、根荒らしや畑のことはさほど大きな問題ではない。
問題なのは、何が何でも生き延びようとする”生き物らしさ”が欠けていることだ。
しかもこの生き方は初代からずっと、もしかするとアルラの時代からずっと変わらないのだろう。
だとすると、これを解決するには10日じゃ全然足りない、完全にお手上げ状態だ。
でも、会議をするって言ったときに興味を持ったのも事実だ。
なら、それに賭けるしかない。
それに、今回の問題は思っているほど時間も無い。
ゴブリナさんたちの生き方云々言う前に、根荒らしと畑それに村の食糧事情も解決する必要がある。
言葉にすれば短いかもだけど、実際やるとなるとそれなりに時間が掛かるものばかりだ。
最初に収穫の早い植物を植えるにしても、収穫には最低6日前後かかる計算だ。
荒らされた畑も整えながら、根荒らしの対策も並行してやるとなると2・3日?
いや、道具を作ったりするともっと掛かるかも?
あーーーもーーー!全然いろんなものが足りな――――い!!
頭を抱えながら煙が噴き出しかけている私に、ミラが優しく声を掛けてくる。
「リア、だいじょうぶ~?」
「ぜんっっぜん、ダメ!ミラ助けてぇ~」
「とりあえず、今リアが考えていることを教えて?」
「うん、実は・・・」
私はさっきまで考えていたことをミラに話した。
と言っても、考えがまとまっているわけでも無いので、うまく伝えられたのか怪しい。
しかし、長い付き合いで察しの良いミラは何となく理解してくれたようだった。
「んー、問題がいっぱいだね~?」
「そーなんだよねー。順番にやるにしても一度にやるにしても、時間も人手も足りないんだよね」
「んー・・・じゃあ、ちょっとづつやってみたらどうかな~?」
「ちょっとづつ?」
「そう、リアは全部いっぺんにやろうとしてるんだよね~?」
「だって、一度にやらないと時間の掛かるものが多いから間に合わなくなっちゃうし」
「それって、村の備蓄のこととか収穫に掛かる時間のことだよね~?」
「うん、10日分の備蓄が尽きる前に手を打たないとみんな飢えちゃうことになるから」
「まあ、リアの計算ならそうなっちゃうよね~」
「ミラは違うの?」
「うん、逆に1・2日の余裕があると思うよ~」
「え?!そんなに?!」
「まあ、あくまでも根荒らし対策がバッチリっていう前提なんだけどね~」
「それでもどんな方法か教えてっ!お願いします、ミラ先生!」
「あれ~、今度は誤魔化さないんだ~?」
そう言うと、ミラは少し意地悪そうな笑顔をこちらに向ける。
ちょっと悔しいけど、ここで割り切ってしまった方が後々楽な気がする。
「だって実際教え方は上手だと思うし、いい案出してくれるでしょ?だから先生でいいと思うんだ」
「じゃあ、これからは”ミラ先生☆ミ”って呼んでもらおうかな~?」
「えーっと、後ろのキラキラ必要?」
「んー、気分で~?」
「じゃあ、気が向いた時に」
「もー、つれないなぁ~」
「おーい、会議が終わったんならもういいかい?」
「ほら、みんなの時間を貰っているから早めにね?そして私が分かりやすいように簡単にして!」
「仕方ないなぁ~。簡単に言うと、畑を一つづつ順番に対策しようって話だよ~」
「畑を一つづつ?」
「そう、全部いっぺんにやるから時間が掛かるんでしょ~?だったら、一つづつやったらいいんじゃないかな~って」
「確かに一気にやるよりは早そう」
「それに、最初の畑で様子を見れるから失敗しても後戻りの被害は少ないよ~」
「じゃあその方法でいこうかな。ゴブリナさん、どうかな?」
「いいんじゃないかい?」
「なら決定だね」
「じゃあ次は実際にどうするかだね~?」
「んー、とりあえず畑を柵で固めるのはどうかな?」
「それだと、ある程度の高さは必要そうだね~」
「相手は小さいから、隙間が多いと抜けられちまうよ」
「とすると、堀も作って高さを出してみるとか?」
「だったら、柵は真っ直ぐ立てないで少し斜めにしてみたらどうかな~?」
「斜め?」
「そう、反り返った崖みたいにして登りづらくしたらどうかなーって」
「それいいかも、やってみよう!」
「方法が決まったなら、何人か作業に行かせるかい?」
「そうですね、決まった事から先に作業を始めてもらった方がいいかも」
「じゃあ必要なのは、堀を作る係と柵を作る係くらいかい?」
「んー、ついでに柵を作る畑の整備も並行してもらえると助かります」
「そうかい、ならアタシは他の者たちに指示を出してくるよ」
「お願いします」
「他の事も決まったら、後で教えておくれ」
「分かりました」
そのままゴブリナさんは、他のゴブリたちに指示を出しに行ってしまった。
さて、会議室(仮)は私とミラだけになってしまったけどまだ議論することはある。
「みんな行ったみたいだし、そろそろ本題でも始める~?」
「うん、そうだね」
私たちは今回の事件の大元を、ウッドストックでの魔獣騒ぎであると考えている。
しかし、その問題になった魔獣はもういない。私たちが退治したからだ。
だとしたら元々そこにいた根荒らしたちは、そこに帰ってもらうのが一番いいと思う。
だけど、人の顔を見分けるみたいに根荒らしを見分けるのは不可能だ。
ならどうするか?
そして今、二人で話し合った結論は一つだった。
それは根荒らしを何とかしつつ、ゴブリナさんたちが納得する答えに一番近いはずだ。
当然というか、自信があるわけでは無い。
でも他の方法が思いつくでもない。
なら、私たちはこの答えを信じて行動する他は無い。
頭で考えても分からないことは、体で考えるのみっ!




