61.ゴブリナ村会議
「リア、おはよ~」
「んー・・・もう朝?」
今日もいい天気だけども、頭の中はモヤモヤだ。
というのも、昨日の夜は寝たり起きたりを繰り返していて、あまりしっかりと眠れていない。
いい案が思いついたと起き、それではダメだと横になり、またいい案が思いついたと起き・・・と、そんなことを朝までやっていたのだ。
おかげで今、自分が寝ているのか起きているのか曖昧な状態だ。
「なんか眠たそうだね~?昨日は遅くまでうんうん唸っていたけど、何かいい案出た~?」
「ううん、全然さっぱり」
「そっか~」
「でね、思ったんだよね」
「ん~?」
「私たちってさ、根荒らしのこと全然知らないんだよね」
「そーだね~。”小さそう”とか”いっぱいいる”とか、かなり曖昧にしか知らないよね~」
「でしょ?だからさ、会議でもしてみない?」
「ん~、話が飛び過ぎてて分からないよ~?」
「ほら、村で問題が起きた時はお父さんたちが集まって会議を行って決めていたでしょ?あれをやってみない?」
「それって、情報の収集をしながら対策をみんなで話し合って決めようってことだよね~?」
「うん。主軸になるのはこの村の事だし、私たちだけの意見で何でも決めちゃうのってどうなのかなーって」
「確かに~。事情を説明したらゴブリナさんも協力してくれそうだね~」
「じゃあ、早速ゴブリナさんの所に行って話をしてこないとね!」
私たちはゴブリナさんのところに行って、みんなを集めて会議をすることを提案した。
最初、ゴブリナさんにこのことを話した時はそれほど乗る気にはなっていなかったけど、事情を説明すると快諾してくれたのだった。
昨日の夜の事もあるので、まずは全部の畑の状況確認してから集まることにした。
確認が済んで全員が集合したのは、太陽がちょうど真上に上った頃だった。
「ミンナ、アツまってる。ショクジか?」
「カイギ?ナンだそれ?」
ゴブリたちがざわざわと話を始めた。
どうやら、この村では会議をしたことが無いらしい。
ということは、今回が初めての会議っていうことかな?
だったら、最初の挨拶はこれだよね!
「それでは、第1回ゴブリナ村会議を始めたいと思いまーす!」
「記録は私がやるよ~」
「みんな、この子たちは私たちの村の事を思ってやってくれているんだ。だから、しっかり協力するんだよ!」
『ワかった、ママ!』
「まずみんなに聞きたいことがあるんだけど、根荒らしについて知っていることを教えて欲しいの」
ゴブリたちはお互いの顔を見合わせた後、一斉に話を始めてしまい収拾がつかなくなってしまった。
これは無理!とても聞き分けれない!
「わーー、待って待ってーーっ!!そんなにいっぺんに話されても聞き取れないよーっ!」
しかし、相手は数十人もいて声も大きい。
私一人の声はあっさりとかき消されてしまい、みんなに届かない。
だめだ収拾がつかない、どうしよう?
すると横でゴブリナさんが両手を広げているのが見えた。
あ、もしかして・・・!
急いで耳を両手で塞ぐ。
次の瞬間、『パーーーンッ!!』という激しい音が辺りに響き渡った。
辛うじて耳は塞いでいたものの、まだ耳の中がジンジンしている。
ゴブリたちはみんな両手で耳を抑えて静かになった。
「それじゃ誰も聞き取れないよ!順番に話しな!」
「ジュンバン?どうする?」
「テキトウ?」
「あー、えーっと、私が議題・・・聞きたいことを言うから、知っている人は手を挙げてもらっていいかな?で、私が当てた人が話すっていうことで」
「ワかった」
方法はちょっと荒かったけど、なんとか流れは出来たかな。
これでうまく情報が引き出せればいいんだけど。
「じゃあまず、根荒らしの姿を見たことがある人」
私の質問に3人のゴブリが手を挙げた。
まずは最初の一人を指名する。
「オオきさ、このクライ。シッポ、アる!」
「うんうん」
手で表した大きさを見る限り、30センチ前後といったところだろうか。
小型の魔獣よりも一回り小さそうだ。
尻尾はそれほど長くないみたい。
引き続き別の一人を指名する。
「カラダにケ、ハえてる。このクライ。あとヒゲも、ビョーン!」
「なる、毛が生えているんだー。っていうことは獣っぽい見た目なのかな」
「ミたメ、ケモノケモノ!」
毛が生えているみたいだけど、それほど長くなさそう。
あと、口元に長いヒゲが生えているのかー。
最後の一人を指名する。
「ウゴき、ハヤい!ハとツメ、スルドい!」
「うわぁー、噛まれたり引っ掻かれたら痛そうだなー」
私たちが思っているよりも攻撃的なんだろうか?
素早いなら、動きを止めないとダメだなぁ。
「うん、でーきた~!」
「ミラ、何やって・・・」
どうやら、さっきのゴブリたちからの話をそのまま絵に描いてみたらしい。
その絵はどう見ても、ネズミっぽい容姿をしている。
しかも絵の横に『|チュー/』とか変な吹き出し付いているし!
さらに、ミラ画伯はそれをゴブリたちに見せる。
「こんな感じかな~?」
「二てる!」
「ナきゴエ、そんなカンじ!」
「わーい、褒められた~。えへへ~」
ええっ?!それ、ホントなのぉっ?!
恐るべきミラ画伯!!
「と、とりあえず姿は分かったし次の議題に移ります!」
「んー」
「あ、もしかしてミラも何か気になることとかある?」
「うん、私たちが来るよりも前から根荒らしが出てたみたいだけど、今までどうしてたのかな~って思って」
「確かに。今まで根荒らしが出た時ってどうしていたんですか?」
「それはアタシから言うよ」
ゴブリナさんの話が思ったより長くて要点が抑えきれなかったので、ミラにいつものをお願いする。
私の頭の中で『お・し・え・て!ミラ先生!』の講義が始まった。
(以下、リアの脳内講義)
「はーい、みんな元気してた~?久しぶりの人はおひさ~、初めての方は初めまして~。楽しいミラ先生の講義がはっじまっるよ~!」
「せんせー!ゴブリナさんの話が長くてよくわかりませんでした!」
「はーいリアさん、人の話はしっかり聞きましょうね~?とりあえず、そんなリアさんのためにざっくり説明しますので黒板を見て下さ~い」
≪根荒らしへの対処について≫
根荒らしには手を出さないで放置!
理由1:一度に2・3匹程度しか現れない。(被害小)
理由2:狙われている畑が決まっている。(範囲狭)
理由3:糞が肥料になる。(重要?!)
「ということで、実質大きな被害が無かったこととプラスになる点があったので放置されてました~」
「今回は、理由の1・2が大きくなったからマイナスになったってことかな?」
「ぴんぽんぴんぽ~ん!はい、よくできました~。それでは引き続き会議がんばってくださ~い」
(講義終了!)
「リア、分かった~?」
「あ、うん、バッチリ大丈夫!」
「ほんと~?」
「ささ、次の議題にいこ!えーと、何だっけー?」
「もー、村としての対応をどうするか決めるんでしょ~?」
「ごめんごめん。これは村の長として、ゴブリナさんに聞いた方がいいかな?」
「そうだね~」
「ゴブリナさん、今回の件はどう対処するか決まっているんですか?」
私の問いに対してゴブリナさんは沈黙する。
少しの間の後、重い口をゆっくりと開いた。
「・・・村としては今まで通り、何もしないよ」
「え?だって、自分たちの食料がなくなっちゃうんだよ?!」
「それならそれで仕方が無いさ。そういう運命だったって諦めるよ」
「・・・やっぱり、根荒らしを殺したりするのに抵抗があるっていうこと?」
「それもあるけど、アタシたちは生きている間は自然から命を貰って、死ぬ時にそれを自然に返す、そうやって生きてきたんだ。自分たちが貰わない命は奪わない。生き方は変えられないよ」
「そんな!だったら別の場所に移ってまた新しく始めたらいいでしょ?」
「アタシたちは代々この土地に住んでいるんだ。そう簡単に他所には移れないよ」
「何で・・・何でそんなに簡単に諦めちゃうの?!死んだら何も残らないじゃない!」
「いいや、アタシたちは死んだら大地に帰るだけさ。そのあとにまた命が生まれる」
「でも、みんな今を生きているんでしょ?!だったら少しでもみんなと一緒にいたいって思わないの?!」
私の言葉にゴブリナさんは少し悲しい顔をした。
「リア、アタシたちがなぜ”森の人”って言われているか知っているかい?」
「ううん」
「まあ人間で理由を知っているのはごく一部だろうさ。もしかすると、みんな忘れちまっているかもしれないけどね」
「ゴブリナさん・・・?」
「もしかすると、アンタらなら受け入れてくれるかもしれないね。話してあげよう、アタシたち”森の人”のことを」
私たちはゴブリナさんたちのことをよく知らない。
もちろん”森の人”というのも。
私たちが知っているのは、私たちと同じ姿をして、私たちに似た生活をするということだけ。
これからゴブリナさんの口から語られる話は、ここに留まる一番大切な理由なんだろう。
私は覚悟を決め、ゴブリナさんの話を聞くことにした。




