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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第4節
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57.ちょっと木陰で休憩を

「ふぅ、そろそろ休憩にしない?」


 私たちがウッドストックを出てから、結構歩いたと思う。

 次の町はまだ見えていないけど、左手にブレンダさんが言っていた山が見え始めている。


「さんせ~い!あそこの木陰で休憩しようか~」

「うん、腰を掛けられそうな石もあるし涼しそうだし、いいね!」


 私たちは木陰に入り、バッグから長い包と水筒を取り出した。

 包の中身は、ミリーからもらった木の実がたっぷり入ったパンだ。

 自分の水筒の中身を出そうとすると、ミラから待ったが入った。


「これ、ちょっと試してみない~?」


 何かは分からないけど、ミラのお試しはだいたい新作料理の味見だったりする。

 ミラの持っていた瓶の中身が私のコップに注がれる。

 しかし注がれた液体は、無色透明だった。


「これ、ただの水じゃないの?」

「いーからいーから、飲んでみて~」

「うん、じゃあいただきます」


 コップに注がれた液体を少しだけ口の中に注ぎ入れる。

 ん、なんかちょっと味がある?

 ほんのりと優しい甘さがあって、木と薬草の香りもする。

 鼻からスーッと抜けるこの爽やかさは、いつもの薬草だ。


「これ、何かに薬草を漬けたものだと思うんだけど、何を使ったの?」

「んっふふ~。これ、ウッドストックのお店で買った飲用の樹液なんだよ~」


 ミラが自慢げにさっきの瓶を見せびらかす。


「へぇ~、樹液ってこんなに甘さがあるんだ。でも、ちょっと薬草だと爽やかすぎない?」

「あー、やっぱり気付いた?私もちょっとそこが気になっててね~。手持ちの薬草類で一番良さそうなの選んだんだけど、改良が必要そうだね~」

「でも、喉がスーッとして気持ちよくて私はいいと思うんだけど?」

「うーん、でもちょっと一般受けしなさそうなんだよね~。やっぱり新しい薬草を探さないと、ぶつぶつ・・・」


 あー、こうなっちゃうと納得するまで自分の世界に入っちゃうから、戻ってくるまで待つしかないなぁ。

 仕方が無いから、先に食べてよう。

 私は包から自分の分のパンを取り出して食べ始めた。

 確か、ミリーはナッツンスティックって言っていたっけ。

 先っぽの方から行儀悪くかぶりついた。

 ん・・・これ、おっいしい~~っ!

 少し柔らかめのパンに、色んな木の実が練り込まれているようだ。

 カリっとした数種類の種とほんのり甘いミルクの実が使われている。

 種に効かせた塩味と、甘く煮詰めたバルーンの実がいい具合に合っている。

 ナッツ類がいっぱいだから腹持ちも良さそうだし、次の町まで大丈夫そうだ。

 今度ウッドストックを通ったら、いくつか買って行こーっと!


「あ、ごめんごめん~」

「おかえり~。考えまとまった?」

「うん、もう大丈夫~」

「なかなか戻ってこないから、先に食べちゃったよ」

「じゃあ、私も食べるから少し待ってて~」

「うん。ちょっと行儀悪いけど、誰も見ていないし横になっちゃえ~!」


 石の上にごろんと横になる。石がひんやりしていて気持ちがいい。

 木の陰から流れる雲と青空が見えている。


「うーん、食べた後のゴロンは気持ちいいなぁー」


 そういえばこの木、どこかで見たことがあるような・・・。

 考えていると、葉っぱの陰に小さい緑色の丸い実が生っているのが見えた。


「あっ!」

「わっ!急に起き上がってどうしたの~?」

「ほら上、あれってクココの実じゃない?」

「ほんとだ~。村にいた時に、近くの森で採ったのをおやつによく食べたっけ~」

「うん、懐かしいねー。ちょっとだけ貰って食べようか?」

「もー、リアは食いしん坊さんだな~。本当にちょっとだけにしておきなよ~?」

「分かってる、分かってるって!」


 石の上に立てば、手が届きそうなのが何個かある。

 この実は食べ過ぎるとお腹が緩くなっちゃうから3個くらいでいいかな?

 ついでにミラの分も取っておこう。

 いっこ、にーこ、さんこ・・・ごーこっと!

 六個目はちょっと背伸びしないと届かなそう。


「もうちょっと・・・取れたっ!」


 最後の実は双子になって七個になっちゃったけど、まぁいいっか!


「はい、これミラの分」

「ありがとう~」

(ミたぞ、ミたぞ)


「ん?ミラ、何か言った?」

「んーん、何も言ってないよ~?」

(オレタチソダてたキのミ、いっぱいクった!)


「ほら、また!」

「だから、何も言ってないって~」


 木のすぐ後ろにある草むらがガサガサと揺れる。


「な、なんかいる?!」

「みたいだね!」


 私とミラは立ち上がり、襲撃を警戒する。


「ドロボウツカまえろ!」


 来る!と思って身構えていると、突然目の前が真っ暗になった。


「な、なになにーーっ?!」

「はわわ~、目の前が真っ暗だよ~~っ!リア、どこ~~~?!」


 すぐさま視界が横になって、体が宙に浮かんだ。


「・・・ぇ?」

「ドロボウカクホーー!」

『カクホ―!!』


 近くで声がしたと思うと、体の自由が効かないのに突然上下に揺れ始めた。


「あ、あわわわっ?!」

「ハコベやハコベ!おウチへハコベ!エッサ、ホイサ、エイサッサ―ッ!」



 あれ・・・もしかして、私たちどこかに運ばれてる?!

 ちょっと待って待ってーー!!

 私たちどうなちゃうのーーーっ?!


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