1.物語のはじまり
ここはメディアの村。
多くの駆け出しの冒険者が訪れる、この世界では安全な村である。
私はこの村の薬屋の娘で名前は『アメリア』。
村の外の人達からは『村の少女1(仮)』なんて言われている。
うちは『薬屋』と言っても、扱っているものといえば、薬草と毒消し草くらい。
普段のお客さんは駆け出しの冒険者か村の人くらいしか来ない。
はっきり言って、生活できるレベルの収入は全く無い。
それでも人並みの生活できるのは、お父さんの「ひと狩り行ってくる」の一言で出掛けて帰ってきた時に持ってくる謎の金貨袋のおかげだ。これがうちのメインの収入源になっている。
以前、本人に直接聞くのが怖くて、お母さんにそれとなく訊ねた時があったのだが、
「子供は気にしちゃダメよ?」
とにこやかな笑顔でスルーされたことがある。
その時のお母さんは笑っていたけども、背筋に寒気を感じたのを覚えている。
ちょっとした――いや、かなりトラウマな体験だった。
以来、この話題にはずっとノータッチ。
いのちはだいじに。
とりあえず今のところは何とかなっているけど、ずっと『薬屋』としてやっていこうと思ったら、どうやっても生活が成り立たない。
そもそも薬草なんて二束三文にしかならないんだからたくさん売らなくちゃいけないのに、売る相手もいない。
「ああ、せめて薬草が高級品だったら良かったのに~」
いつもの愚痴をこぼしていると、カランコロンと店のドアが開く。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませーって、なんだミラか~」
「なんだーじゃないよー、お客さんだよー」
ミラは宿屋の娘で幼馴染だ。ぱっと見はゆるふわ系な感じなのだが、色々とすごい子であると認識している。
「そういえば今日、いつもの薬を取りに来るって言ってたっけ」
「うん、今日はママの調子が良くないから代わりに私が来たの」
「そっかー、ミラも大変だねぇ」
「いつものことだよー」
「この後はすぐ仕事に行くんだよね?」
「ゆっくりできなくてごめんねー」
「私も今日は一日店番しなくちゃだから、お互い頑張ろうね!」
「うん、じゃあまたねー」
ミラのお母さんは元々体が弱かったんだけど、ミラを生んでから更に弱くなったらしい。
使っている薬は特殊なもので、一般のお店でもなかなか手に入らないものらしい。
うちとしてはお得意さんではあるが、おばさんには昔から良くしてもらってるし、なんとかできないものかと考えてしまう。何にでも効く便利な薬草があればいいのになあ。